S&P500月例レポート(24年2月配信)<後編>

<前編>の続き

米国経済

 ○12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は47.9となり、11月の48.2から低下しました。

 ○12月のISM製造業景気指数は47.4となり、11月の46.7から上昇しました。

 ○12月のサービス業PMIは51.4となり、11月の51.3からわずかに上昇しました。

 ○12月のISM非製造業景気指数は50.6となりました。市場では11月の52.7から横ばいが予想されていました。

 ○1月の総合PMI速報値は予想を上回り、製造業PMIが前月の47.9から上昇して50.3(市場予想は47.7)、サービス業PMIが同51.4から上昇して52.9(同51.0)となりました。

 ○2023年第4四半期のGDP成長率速報値は事前予想の前期比年率2.0%を上回る同3.3%となりました。第3四半期は同4.9%でした。個人消費の伸び率は予想の同2.5%を上回る同2.8%でした。第3四半期は同3.1%でした。

 ○12月の個人所得は予想通り前月比0.3%増となりました(11月は同0.4%増)。12月の個人消費は市場予想が前月比0.4%増だったのに対し、同0.7%増となりました(11月は同0.4%増)。

  ⇒12月のPCE価格指数は(予想通り)前月比0.2%上昇しました。11月は当初の同0.1%低下から同0.2%上昇に上方修正されました。12月の前年同月比は2.6%上昇でした(11月は同2.6%上昇)。コアPCEは前年同月比2.9%上昇しました(11月は同3.0%上昇)。

 ○2023年第4四半期の雇用コスト指数は市場予想の前期比1.0%上昇に対し、同0.9%上昇となりました(2023年第3四半期は同1.1%上昇)。前年同期比では4.2%上昇と、第3四半期の同4.3%上昇から伸びが鈍化しました。

 ○11月の建設支出は前月比0.4%増となりました。市場予想は同0.6%増でした。また、10月は当初発表の0.6%増から1.2%増に上方修正されました。前年同月比では11.2%増でした(10月は11.6%増)。

 ○12月の鉱工業生産指数は予想の前月比0.1%低下に対し、同0.1%上昇となりました。11月は当初発表の同0.2%上昇から同横ばいに下方修正されました。

  ⇒12月の設備稼働率は78.6%となり、前月比横ばいでした。

 ○11月の製造業受注は前月比2.6%増となり、予想の同2.0%増を上回りました。10月は当初発表の同3.6%減から同3.4%減に上方修正されました。

 ○12月の耐久財受注は市場予想の前月比1.0%増に対し、同横ばいとなりました。11月は同5.5%増でした。

 ○12月の小売売上高は前月比0.6%増となり、市場予想の同0.4%増を上回りました。11月は同0.3%増でした。前年同月比では5.6%増となり、2022年12月の同5.8%増からやや伸びが鈍化しました。

 ○11月の企業在庫は予想通り、前月比0.1%減となりました。10月も同0.1%減でした。

 ○12月の小売在庫は前月比0.8%増となりました。11月は同0.1%減でした。

 ○12月の卸売在庫は前月比0.4%増となりました。11月は同0.2%減でした。

 ○12月の輸入物価指数は、前月比0.6%低下の予想に対し、同横ばいとなりました。前年同月比では1.6%低下でした(11月は同1.4%低下)。輸出物価指数は前月比0.9%低下(予想は同0.6%低下)となり、前年同月比では3.2%低下しました(11月は5.2%低下)。

 ○12月の景気先行指数は前月比0.1%低下となり、市場予想の同0.3%低下と比べて低下幅は小幅にとどまりました。11月は当初発表の同0.5%低下から同0.3%低下に上方修正されました。

 ○民間調査機関コンファレンスボードが発表した1月の消費者信頼感指数は市場予想の114.0に対して114.8となり、12月の108.0(当初発表の110.7から下方修正)から上昇しました。

雇用関係

 ○ADP全米雇用統計によると、12月の民間部門雇用者数は16万4000人増となり、予想の13万人増を上回りました。11月は当初発表の10万3000人増から10万1000人増に小幅に下方修正されました。2023年の年間給与は5.4%増加しました。

  ⇒ADP全米雇用統計による1月の民間部門雇用者数は10万7000人増となり、予想の14万5000人増を下回りました。12月は当初発表の16万4000人増から15万8000人増に下方修正されました。

 ○12月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比21万6000人増となり(市場予想は16万4000人増)、11月の17万3000人増(当初発表の19万9000人増から下方修正)から増加しました。

  ⇒12月の失業率は3.8%への上昇が予想されていましたが、前月と変わらずの3.7%でした(10月は3.9%、9月は3.8%、8月は3.8%、7月は3.5%。なお、2020年2月は3.5%でしたが、同年5月は13.3%となりました)。

  ⇒労働参加率は11月から横ばいの62.8%の予想に対して、62.5%に低下しました(10月は62.7%、9月は62.8%)。

  ⇒週平均労働時間は11月から横ばいの34.4時間の予想に対して、34.3時間となりました(10月は34.3時間、9月は34.4時間)。

  ⇒平均時給は前月比0.3%増の予想に対して同0.4%増となり(前月の34.10ドルから34.27ドル)、11月と同じ伸び率となりました(10月は同0.2%増、9月は同0.3%増、8月は同0.2%増、7月は同0.4%増)。前年同月比では4.1%増となり、11月の同4.0%増を上回る伸びとなりました(10月は同4.0%増、9月は同4.2%増、8月は同4.3%増)。

 ○11月のJOLTS(求人労働異動調査)によると、求人件数は10月の885万2000件(当初発表の873万3000件から上方修正)から減少して879万件となりました。

  ⇒12月のJOLTSによると、求人件数は11月の892万5000件(当初発表の879万件から上方修正)から増加して902万6000件となり、予想の870万件を上回りました。

 ○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の187万5000件から183万3000件に減少しました。

  ⇒2024年1月4日発表の週間新規失業保険申請件数:20万2000件(当初の発表通り)
  ⇒2024年1月11日発表の週間新規失業保険申請件数:20万2000件
  ⇒2024年1月18日発表の週間新規失業保険申請件数:18万7000件
  ⇒2024年1月25日発表の週間新規失業保険申請件数:21万4000件

企業業績

 ○185銘柄が2024年第4四半期の決算発表を終え、そのうちの140銘柄(75.7%)で営業利益が予想を上回り、182銘柄中124銘柄(68.1%)で売上高が予想を上回りました。前期比で0.7%の増益、前年同期比で4.5%の増益が見込まれています。

  ⇒売上高は好調で、前期比3.0%増、前年同期比4.6%増となっており、2023年通年(15兆6000万ドル)で過去最高を更新するだけでなく、2023年第4四半期(初めて4兆ドルを超える見込み)も四半期ベースでの過去最高を更新する見通しです。

  ⇒2023年第4四半期の営業利益率は、第3四半期の11.15%から低下して10.91%になると予想されます(1993年以降の平均は8.39%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

  ⇒現時点で、2023年第4四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は15.5%となっています。この割合は、2023年第3四半期は13.8%、2022年第4四半期は19.4%でした。

 ○2023年通年の利益は前年比7.8%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は22.8倍となっています。

 ○2024年通年の利益は前年比12.6%増が見込まれており、2024年の予想PERは20.3倍となっています。

個別銘柄

 ○ヘルスケア企業のイーライ・リリーは、インターネットによる遠隔診療を通じて同社の肥満症治療薬「Zepbound(ゼップバウンド)」の処方と宅配を提供する新たなサービスを開始しました。

 ○エネルギー大手のシェブロンは、2023年第4四半期に、上流部門の資産(主にカリフォルニア州)に関して35億?40億ドルの引当金を計上することを明らかにしました。

 ○穀物大手のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランドは、同社の会計慣行の調査を行うにあたり、最高財務責任者(CFO)に休職を命じました。

 ○宅配サービス大手のユナイテッド・パーセル・サービスは、全従業員49万5000人のうち12万人の人員削減と、従業員に週5日のオフィス勤務を求める方針を発表しました。

注目点

 ○フロリダ州は米連邦政府機関から、州として初めて、カナダから医薬品を輸入する許可を得ました。米国議会は20年前にカナダからの処方薬輸入を認める法律を成立させましたが、政府機関が許可してきませんでした(許可を命じる裁判所命令の最終日に許可が下りました)。

 ○2024年の新たな規則を受けてバッテリー部品(中国製)に対する規制が強化されたことから、購入による米国での7500ドルの税額控除の対象となる電気自動車の車種が13種に減少しました。対象車リストから外れた自動車メーカーは、控除の対象となるよう、代替部品の調達を急いでいます。

 ○通信大手のベライゾン・コミュニケーションズは、主にのれんの減損として58億ドルの減損損失を計上することを明らかにしました。第4四半期は同社の年度末であり、評価額の引き下げが行われることで知られていますが、今年は簿価(2023年第3四半期には過去最高を記録)の引き下げを行う事態となりました。

 ○破綻したシグネチャーバンクの資産を昨年取得した地方銀行のニューヨーク・コミュニティ・バンコープは赤字を計上し、将来の損失に備えて引当金を積み増しました。

配当金

 ○2024年1月の配当支払い額は前年同月比7.4%増加しました(2023年12月は同4.8%減少)。

  ⇒1月の配当支払額は前年同月の1株当たり3.99ドルから4.28ドルに増加しました。支払総額も前年同月の334億ドルから360億ドルに増加しました。

 ○2024年1月は、増配が35件、配当開始が0件、減配が1件で、配当停止はありませんでした。2023年1月は、増配が32件、配当開始が1件で、減配と配当停止はありませんでした。

  ⇒2023年通年では、増配が348件、配当開始が11件、減配が26件、配当停止が4件ありました。2022年は、増配が377件、配当開始が7件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。

 ○増配率の中央値は12月の5.88%から1月は6.90%に上昇しました(11月は7.69%)。1月の平均増配率は12月の7.48%から8.59%に上昇しました(11月は9.41%。いずれも2倍以上になった銘柄を除く)。2023年の年間の増配率の中央値は7.01%(2022年と2021年はともに8.33%)、平均値は8.68%(同11.80%、同11.76%)でした。

 ○2024年の配当に関して、当初予想は増加となっており、年間の増配率は1936年以降の平均である5.79%前後となる見通しです。この予想ではFRBによる2024年第2四半期末までの利下げ開始に加えて、景気の大幅な減速は回避され、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)ことを織り込んでおり、2024年の実際の現金支払額は、2023年の5880億ドルから約5.5%増加して、6200億ドルになると予想しています(2023年は5.05%増、2022年は0.80%増)。これにより2024年の現金配当は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。

インデックス・レビュー

◇S&P 500指数

 S&P500指数は1月に1.59%上昇して4845.65で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス1.68%)。昨年12月は4769.83で終え、4.42%上昇(同プラス4.54%)、11月は4567.80で終え、8.92%の上昇(同プラス9.13%)でした。過去3ヵ月間では15.54%上昇(同プラス16.01%)しました。2023年は24.23%の上昇(同プラス26.29%)で、2022年の19.44%の下落を相殺しました。S&P500指数は4800を上回る水準で月を終え、一時4900を上回りました。また、1月に過去最高値を6回更新しました。1月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は11月と12月の0.75%から0.79%に上昇しました。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。1月の出来高は、12月の前月比6%増加の後に、同5%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では4%減少しました。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年は同6%増でした。

 昨年12月の10セクターに対して、1月は11セクター中5セクターが上昇しました。1月のパフォーマンスが最も良かったのは、4.84%上昇したコミュニケーション・サービスです(2021年末比では3.58%下落)。騰落率最下位となったのは不動産で、1月は4.79%下落(同26.24%下落)しました。

 1月は1%以上変動した日数は21営業日中3日(上昇が1日、下落が2日)でした。12月は1%以上変動した日数は20営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。1月は21営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動はありませんでした。12月は1%以上の変動が20営業日中2日で、2%以上の変動はありませんでした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。

 1月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。1月の値上がり銘柄数は224銘柄(平均上昇率は4.75%)と、12月の416銘柄(同8.91%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数は24銘柄(同13.29%)と、12月の149銘柄(同15.74%)から減少し、25%以上上昇した銘柄も1銘柄と、12月の8銘柄から減少しました。一方、1月の値下がり銘柄数は279銘柄(平均下落率は5.28%)と、12月の86銘柄(同2.97%)から増加しました。1月は10%以上下落した銘柄数は39銘柄(同14.50%)で、12月の3銘柄(同12.18%)から増加し、25%以上下落した銘柄は12月と同様にありませんでした。2023年通年では、12月に値上がり銘柄数が増加し、値上がり銘柄数は322銘柄(11月末時点の年初来は277銘柄)で、値下がり銘柄数は179銘柄(同224銘柄)でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄(同190銘柄)、10%以上下落した銘柄数は85銘柄(同135銘柄)でした。143銘柄(同104銘柄)が25%以上上昇し、20銘柄(同39銘柄)が25%以上下落しました。
 

 

 

 

 

 

 
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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配信元: みんかぶ株式コラム