*11:26JST ステップ Research Memo(6):2024年9月期は生徒数の着実な増加により1ケタ台の増収増益となる見通し
■今後の見通し
1. 2024年9月期の業績見通し
2024年9月期は、売上高が前期比3.1%増の14,892百万円、営業利益が同4.6%増の3,338百万円、経常利益が同5.4%増の3,398百万円、当期純利益が同0.2%増の2,409百万円となる見通し。売上高は生徒数の増加による増収を見込んでいる。物価上昇を背景に授業料を値上げする競合塾もあるが、ステップ<9795>では需要動向などを鑑みて料金改定を実施するのは得策ではないと判断し、現在の料金体系を据え置くこととした。人件費の増加は続くものの、前期に約2億円増加した備品費が例年並みの水準に戻ることから増益となる見込みだ。当期純利益については賃上げ促進税制による税額控除分が前期の150百万円から80百万円に減少する想定としているため、経常利益の伸び率よりも低い増益率となる。
なお、第2四半期累計業績が、売上高で前年同期比1.4%増の7,626百万円、営業利益で同13.7%減の1,973百万円と弱く見えるが、売上高については春期講習(3月下旬~4月上旬)の日程が例年より4月に偏重することが影響しており、同影響を除けば2%台前半の増収見込みである。また、利益面では前下期に処遇アップを実施した人件費の負担増分の影響が第2四半期まで続くことが減益要因となる。人件費の対売上比率については、通期で前期並みの水準を見込んでいる。
(1) 生徒数の動向と校舎の新設計画
生徒数は2023年10月末で前年同期比2.5%増の33,516人となった。このうち小中学生部門は同2.0%増の27,467人で、なかでも中学2年生が0.2%増、3年生が1.5%増と停滞している。横浜・川崎エリアのスクールは順調に伸びているが、県西部エリアのスクールが低調のようで、前期からの流れが続いていると考えられる。ただ、9月以降は募集状況も活性化し始めているようで、2024年春に向けては伸び率も回復する見通しだ。
高校生部門の生徒数は前年同期比4.9%増の6,049人と順調に増加している。学年別で見れば1年生が同0.5%増、2年生が同12.4%増、3年生が同2.6%増となった。1年生については15校舎中3校舎で全教科満席となっているほか、他の校舎も定員近くまで埋まっており、既存校舎の増床や新校舎の開設ができればさらに伸ばせる状況にある。高校3年生についてもほぼ同様の状況だ。全学年全教科満席となっている横浜校については2022年9月期下期に続いて2023年9月期も5月にフロアを増床したがすぐに満席となる人気ぶりで、近隣に増床が可能な物件を探している状況にある。公立高校生主体の現役生向け学習塾のなかでは神奈川県内でトップブランドになっていると思われる。小中学生スクールと比較して、校舎の規模が大きくなるため条件に適う物件が見つかりにくいのが難点だが、ここ最近は競合塾の撤退や金融機関の拠点統合が進むなど、従前と比べて対象エリア内で物件を確保できる可能性が高まっており、移転増床などの機会も今後増えてくると予想される。
2024年9月期の新規開校計画として、高校受験スクールを川崎市に2スクール(鹿島田スクール、Hi-STEP新百合ヶ丘スクール)、横浜市に2スクール(日吉本町スクール、東戸塚平戸スクール)を開設する予定だ。このうち、Hi-STEP新百合ヶ丘スクール(川崎市麻生区)は既に説明会も開催され、申込状況も好調だったようだ。数年前に開校したSTEP新百合ヶ丘スクールが小中学生とも満席状態で人気スクールとなっているだけに、Hi-STEPも好調な立ち上がりが予想される。また、移転増床については現時点で高校受験スクール1校(中山スクール)を予定している。設備投資額は400百万円弱と前期実績(484百万円)から若干減少する見通しだ。
(2) 学童保育の展開について
2020年から開始した学童保育部門については、まだ業績に与える影響は軽微なものの着実に成長し利益貢献し始めている。安心・安全で有意義な放課後ライフの実現、知的な成長の場になることをコンセプトに、知的好奇心を育む各種教育プログラム※を提供していることが特徴となっており、生徒や保護者からも高い評価を受けている。口コミ効果もあって、生徒数は2023年10月末時点で前年同期比25.6%増の422名と順調に増加している。学年別構成比で見ると、小学1年生が32.9%、2年生が26.1%と両学年で全体の6割近くを占めるが、2024年以降3~4年生に繰り上がるため、今後も生徒数の増加が見込める。湘南教室についてはほぼ定員に近い水準であるが、その他教室の生徒数が増加することで、2024年9月期も2ケタ成長が続くと予想される。
※楽しく学ぶ「探求プログラム」として、サイエンス、プログラミング、はば広教養、ことば、英語、英検講座、英会話、算数、算数(思考)の9種類があり、「エンジョイプログラム(スポーツや趣味の習い事)」として手話、将棋、百人一首、音楽、ダンス、体育の6種類を用意している。
収益面では、2016年に開校した「湘南教室」が既に黒字化し、「辻堂教室」も開校3年目となる2022年9月期に黒字化を達成した。2023年9月期には営業利益率で20%を超える水準となり、学童保育部門においても小中学生部門、高校生部門と同水準の収益性を確保できる目途がたったと言える。「辻堂教室」と同時期に開校した「茅ヶ崎教室」はコロナ禍の影響で生徒数がやや伸び悩んだため、2023年9月期は黒字化には若干届かなかったものの、2024年9月期には黒字化する見通しだ。
同社はこれら教室で得られた経験を基に、開校からおよそ3年で黒字化する収益モデルを確立し、2023年3月に横浜市に初進出した。横浜市では各小学校で学童保育サービスが提供されているが、同社は各種教育プログラムも提供する高付加価値型のサービスとして一定のニーズがあると考えており、横浜エリアでも収益化が可能と見ている。開校3~4年目の黒字化を目標としており、実現の目途が経てば「STEP」のスクールが近隣にあるそのほかのエリアでも開校していく。「STEPキッズ」の生徒はそのまま「STEP」に入塾する可能性が高いため、「STEPキッズ」のネットワークを広げることで「STEP」全体の生徒数増加につながる可能性がある。政府が2024年度から子育て支援策の拡充(第3子以降の児童手当増額、所得制限撤廃等)を図る方針を打ち出していることも、追い風になると考えられる。
(3) 採用計画
成長の源泉となる人材の採用について、2024年春の新卒採用は40名程度と2023年から若干減少する見込みだが、中途採用がほぼ同水準か若干の増加を予定しており、全体では50名程度の採用となる見通し。同社では採用力強化に向けて採用イベントへの出展や、Youtubeの公式チャンネルにインターンシップや教師研修の様子、教師の一日の流れといった動画をアップするなど仕事内容をアピールすることで認知度の向上に取り組んでいる。また、リファラル採用についても継続しており、優秀な人材の確保に努めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2024年9月期の業績見通し
2024年9月期は、売上高が前期比3.1%増の14,892百万円、営業利益が同4.6%増の3,338百万円、経常利益が同5.4%増の3,398百万円、当期純利益が同0.2%増の2,409百万円となる見通し。売上高は生徒数の増加による増収を見込んでいる。物価上昇を背景に授業料を値上げする競合塾もあるが、ステップ<9795>では需要動向などを鑑みて料金改定を実施するのは得策ではないと判断し、現在の料金体系を据え置くこととした。人件費の増加は続くものの、前期に約2億円増加した備品費が例年並みの水準に戻ることから増益となる見込みだ。当期純利益については賃上げ促進税制による税額控除分が前期の150百万円から80百万円に減少する想定としているため、経常利益の伸び率よりも低い増益率となる。
なお、第2四半期累計業績が、売上高で前年同期比1.4%増の7,626百万円、営業利益で同13.7%減の1,973百万円と弱く見えるが、売上高については春期講習(3月下旬~4月上旬)の日程が例年より4月に偏重することが影響しており、同影響を除けば2%台前半の増収見込みである。また、利益面では前下期に処遇アップを実施した人件費の負担増分の影響が第2四半期まで続くことが減益要因となる。人件費の対売上比率については、通期で前期並みの水準を見込んでいる。
(1) 生徒数の動向と校舎の新設計画
生徒数は2023年10月末で前年同期比2.5%増の33,516人となった。このうち小中学生部門は同2.0%増の27,467人で、なかでも中学2年生が0.2%増、3年生が1.5%増と停滞している。横浜・川崎エリアのスクールは順調に伸びているが、県西部エリアのスクールが低調のようで、前期からの流れが続いていると考えられる。ただ、9月以降は募集状況も活性化し始めているようで、2024年春に向けては伸び率も回復する見通しだ。
高校生部門の生徒数は前年同期比4.9%増の6,049人と順調に増加している。学年別で見れば1年生が同0.5%増、2年生が同12.4%増、3年生が同2.6%増となった。1年生については15校舎中3校舎で全教科満席となっているほか、他の校舎も定員近くまで埋まっており、既存校舎の増床や新校舎の開設ができればさらに伸ばせる状況にある。高校3年生についてもほぼ同様の状況だ。全学年全教科満席となっている横浜校については2022年9月期下期に続いて2023年9月期も5月にフロアを増床したがすぐに満席となる人気ぶりで、近隣に増床が可能な物件を探している状況にある。公立高校生主体の現役生向け学習塾のなかでは神奈川県内でトップブランドになっていると思われる。小中学生スクールと比較して、校舎の規模が大きくなるため条件に適う物件が見つかりにくいのが難点だが、ここ最近は競合塾の撤退や金融機関の拠点統合が進むなど、従前と比べて対象エリア内で物件を確保できる可能性が高まっており、移転増床などの機会も今後増えてくると予想される。
2024年9月期の新規開校計画として、高校受験スクールを川崎市に2スクール(鹿島田スクール、Hi-STEP新百合ヶ丘スクール)、横浜市に2スクール(日吉本町スクール、東戸塚平戸スクール)を開設する予定だ。このうち、Hi-STEP新百合ヶ丘スクール(川崎市麻生区)は既に説明会も開催され、申込状況も好調だったようだ。数年前に開校したSTEP新百合ヶ丘スクールが小中学生とも満席状態で人気スクールとなっているだけに、Hi-STEPも好調な立ち上がりが予想される。また、移転増床については現時点で高校受験スクール1校(中山スクール)を予定している。設備投資額は400百万円弱と前期実績(484百万円)から若干減少する見通しだ。
(2) 学童保育の展開について
2020年から開始した学童保育部門については、まだ業績に与える影響は軽微なものの着実に成長し利益貢献し始めている。安心・安全で有意義な放課後ライフの実現、知的な成長の場になることをコンセプトに、知的好奇心を育む各種教育プログラム※を提供していることが特徴となっており、生徒や保護者からも高い評価を受けている。口コミ効果もあって、生徒数は2023年10月末時点で前年同期比25.6%増の422名と順調に増加している。学年別構成比で見ると、小学1年生が32.9%、2年生が26.1%と両学年で全体の6割近くを占めるが、2024年以降3~4年生に繰り上がるため、今後も生徒数の増加が見込める。湘南教室についてはほぼ定員に近い水準であるが、その他教室の生徒数が増加することで、2024年9月期も2ケタ成長が続くと予想される。
※楽しく学ぶ「探求プログラム」として、サイエンス、プログラミング、はば広教養、ことば、英語、英検講座、英会話、算数、算数(思考)の9種類があり、「エンジョイプログラム(スポーツや趣味の習い事)」として手話、将棋、百人一首、音楽、ダンス、体育の6種類を用意している。
収益面では、2016年に開校した「湘南教室」が既に黒字化し、「辻堂教室」も開校3年目となる2022年9月期に黒字化を達成した。2023年9月期には営業利益率で20%を超える水準となり、学童保育部門においても小中学生部門、高校生部門と同水準の収益性を確保できる目途がたったと言える。「辻堂教室」と同時期に開校した「茅ヶ崎教室」はコロナ禍の影響で生徒数がやや伸び悩んだため、2023年9月期は黒字化には若干届かなかったものの、2024年9月期には黒字化する見通しだ。
同社はこれら教室で得られた経験を基に、開校からおよそ3年で黒字化する収益モデルを確立し、2023年3月に横浜市に初進出した。横浜市では各小学校で学童保育サービスが提供されているが、同社は各種教育プログラムも提供する高付加価値型のサービスとして一定のニーズがあると考えており、横浜エリアでも収益化が可能と見ている。開校3~4年目の黒字化を目標としており、実現の目途が経てば「STEP」のスクールが近隣にあるそのほかのエリアでも開校していく。「STEPキッズ」の生徒はそのまま「STEP」に入塾する可能性が高いため、「STEPキッズ」のネットワークを広げることで「STEP」全体の生徒数増加につながる可能性がある。政府が2024年度から子育て支援策の拡充(第3子以降の児童手当増額、所得制限撤廃等)を図る方針を打ち出していることも、追い風になると考えられる。
(3) 採用計画
成長の源泉となる人材の採用について、2024年春の新卒採用は40名程度と2023年から若干減少する見込みだが、中途採用がほぼ同水準か若干の増加を予定しており、全体では50名程度の採用となる見通し。同社では採用力強化に向けて採用イベントへの出展や、Youtubeの公式チャンネルにインターンシップや教師研修の様子、教師の一日の流れといった動画をアップするなど仕事内容をアピールすることで認知度の向上に取り組んでいる。また、リファラル採用についても継続しており、優秀な人材の確保に努めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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