シーボン、新規顧客増加も既存顧客数と単価の減少により減収減益 新中計で新たな顧客との接点拡大を目指す
目次
崎山一弘氏(以下、崎山):本日はお忙しい中、2023年3月期決算説明会にお越しいただきありがとうございます。
本日は、まず管理本部責任者の瀧より、2023年3月期決算についてご報告します。その後、私より5月11日に当社ホームページのコーポレートサイトにて開示した新中期経営計画についてご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
2023年3月期連結決算のポイント
瀧礼江氏:それでは、私、瀧より2023年3月期決算についてご報告します。まず、連結決算のポイントです。新規の来店数が123.4パーセントと前年を上回ったものの、いまだ既存顧客の減少に対し新規顧客の流入が追いついておらず、継続数が98.5パーセントと前年を下回りました。 また、若年層の流入が増えたことによる顧客単価の減少もあり、売上高は前年比6.9パーセント減の85億2,500万円と厳しい結果となりました。
利益においては、計画値以上の販管費の合理化が進んだものの、売上高の減少が大きく影響したことにより、営業利益はマイナス1億4,500万円、経常利益はマイナス1億2,700万円、当期純利益はマイナス4億2,100万円となりました。
2023年3月期連結PL
2023年3月期における連結PLはご覧のとおりです。連結売上高が減少した一方、売上原価が1億3,700万円増加していますが、これは高原価の製品の割合が増えたこと、原料資材の物価高騰などが原因です。今後は販売戦略において原価率の構成を見つつ、安定した原価率の維持を図っていきます。
経常損失と当期純損失との差に開きがありますが、この差は特別損失として六本木本店ビルの建替えに伴う退店などの支払補償費や解体撤去費用などが2億8,200万円が計上されていることによるものです。
営業利益差異分析(前期比)
前年との営業利益差異分析です。人件費の減少や、地代家賃、その他経費の効率化を進めたものの、原価や広告宣伝費の増加、六本木本店ビル建替えに伴う減価償却費の増加など、一部費用の増加がありました。それに加え、先ほどお話ししたとおり、売上高の減少が大きく影響し、赤字での着地となりました。
貸借対照表
バランスシートです。大きな変化としては、固定資産が大幅に減少し、流動資産が増加しています。これは、メインオフィス及び研修施設だった川崎市の「シーボン.パビリオン」を他法人に譲渡したことによるものです。
2023年3月期は赤字での着地となりましたが、自己資本比率は前年末64.8パーセントであったのに対し、64.6パーセントとほぼ横ばいに推移しています。
販売チャネル別 売上高
販売チャネル別の売上高についてご説明します。主要チャネルである直営店舗の売上高は78億1,800万円、構成比91.7パーセントとなりました。
通信販売は3億1,600万円、国内代理店は1億3,000万円、海外代理店は7,700万円、子会社を含むその他は1億8,200万円となっています。主力事業である直営店舗の売上高は前年比92.9パーセントと厳しい結果となりました。
海外代理店では、中国で会員制自社ECプラットフォームを展開するACCESSグループのCHANCE社とパートナーシップを締結しました。今後、緊密に連携を取り、中国での認知や販売の拡大を進めていきます。
新規来店数・既存顧客継続数の状況 - 直営店舗 -
直営店における新規来店数と既存顧客継続数の状況です。新型コロナウイルス感染拡大の慢性化に対して人々が徐々に順応してきており、人流が増加傾向になった影響を受け、コロナ禍以来低調であったイベントでの集客活動が復調しつつあります。そのため、新規来店者数に関しては、前年と比べ123.4パーセントと大きく増加しています。
一方、継続数に関しては、既存顧客の減少に対して新規顧客の流入がいまだ追いついておらず、コロナ禍前の状況にはまだ届いていない状況です。
月次売上高の推移 - 直営店舗(役務収益を除く) -
直営店舗の月別の売上高推移です。期初より12月まで前年を下回る実績で推移していました。
しかし、マスクの着用が個人の判断に委ねられるというニュースや、5月に新型コロナウイルス感染症が5類へ移行されたことなどを追い風に、既存顧客の来店が増えてきたこと、新規顧客の増加施策が徐々によい影響を及ぼしたことで、1月以降は前年を上回る実績で推移しています。
以上が、決算のご報告となります。
前中期経営計画の連結数値目標
新中期経営計画の前に、2021年3月期から2023年3月期の中期経営計画を振り返ります。前中期経営計画は、まさにコロナ禍真っただ中での計画実行となりました。
前中期経営計画は、「顧客数拡大とお客さま第一のサービス提供」「高機能製品の創出」「コスト合理化による財務基盤の強化」の3つの重点課題に取り組み、収益性・生産性の向上に努めました。
当初は最終年度において売上高110億円、営業利益率4パーセントの水準を目指していました。本業で利益を効率よく出すこと、そして直営店以外の売上比率を10パーセント以上とし、直営店以外の事業の柱を構築していくことを目指して取り組みましたが、3ヶ年目において、売上および利益は計画を大きく下回る着地となりました。
前中期経営計画の重点項目
数値としては厳しい結果となりましたが、前中期経営計画の重点項目に対する実績はスライドのとおりです。
「顧客数拡大とお客さま第一のサービス提供」に関しては、実績として新規売上は増加傾向にあること、バラエティショップ等の一般小売市場への商品投入ができたこと、海外での販売展開の足がかりができたことが挙げられます。
今後の課題として、引き続き当社主力事業である直営事業の新規売上の向上、アフター来店頻度の増加、直営店舗以外の販路拡大に取り組んでいきます。
「高機能製品の創出」に関しては、学会発表や特許の出願などの実績を積んできました。今後の展開として、これらをいかにサービスや製品に落とし込み、それをしっかり外部に発信し、マーケットに認知させるかが重要となってきますので、こちらに尽力していきます。
「コスト合理化による財務基盤の強化」に関しては、資産の整理が進んだことは非常に大きいと考えます。引き続き、効率化・合理化を推進し、合わせてKPIを主とした数値管理の徹底と必要人材の確保・定着に取り組んでいきます。
以上が、前中期経営計画の振り返りとなります。続いて、崎山より新中期経営計画についてご説明します。
2024.3期‐2026.3期 中期経営計画
崎山:2024年3月期から2026年3月期の新たな中期経営計画についてご報告します。事業戦略として、3つの柱を進めていきます。1つ目に「製品価値向上」、2つ目に「サロン価値向上」、3つ目に「新しい価値の創造」です。
製品価値向上は製品戦略、サロン価値向上は顧客戦略、新しい価値の創造は販売チャネル戦略と捉え、新たな顧客との接点を構築し、この戦略をもとにお客さまへ、そして市場へ、私たちの価値をお伝えしていくために取り組んでいきます。
製品価値向上
事業戦略について個々にご説明します。まず、製品価値向上です。研究開発の10ヶ年計画を掲げました。サロン発信のメーカーとしてのアイデンティティを確立していきます。
第1フェーズとして、技術の盤石化と拡散を図ります。ストレスの緩和と肌の関係に注力し、学会発表を継続して行っていきます。また、各大学とのオープンイノベーションもすでに実施していますが、継続実施することにより、知財部門、知財戦略人材の獲得・育成に努めていきます。
第2フェーズとして、市場への認知を高めるため、シーボンブランドのリブランディングや、他社とのアライアンス強化によるメディア露出を進めていきたいと思います。同時に、後ほどご説明するシーボンメソッド(美容理論)の構築に取り組みます。
これらを踏まえ、第3フェーズでは確立したシーボンメソッドの拡散に努めます。その後、グローバル薬事体制を確立し、グローバルで展開する企業を目指して製品開発を進めていきたいと思います。
製品価値向上
「Purpose driven R&D」についてです。心と肌を科学し、ストレス緩和のための接客サービスから得られる美肌を提供することをPurposeとして捉えています。
これまで、大学研究機関との共創連携により、脳科学的・皮膚科学的アプローチから、精神的な状態と肌の関係を解明してきました。「シーボン.」のお手入れによって美肌が生み出されることを解明し、その効果を化粧品に搭載する新たな技術開発に成功しています。
脳科学的・皮膚科学的アプローチ、細胞間コミュニケーション、新たな施術開発への挑戦という3つのオリジナリティあふれる研究領域を掲げ、製品・サービスの価値向上に注力していきます。
製品価値向上
高付加価値への転化についてです。当社のマッサージによるストレス改善やその効果を科学的に分析しました。同時に、ストレスが肌トラブルを誘発する主な要因となっていることを究明し、アドレナリンによる皮膚細胞からのNGF産生促進がトラブルの誘因となっていることを学会で発表しています。
これらを踏まえ、当社のマッサージから得られる技術の価値を、当社の製品に転化するため、ストレス・神経因子を制御する独自原料を開発しました。カラー花酵母による独自原料でNGF産生抑制の機能を活かし、これを商品に転化することで、より付加価値の高い製品化を目指していきたいと思っています。
製品価値向上
当社は、スターブランド・スターアイテムの育成を目指していきます。まず製品ポートフォリオを見直し、改訂します。当社の主力製品であるクレンジングクリームを再定義し、クレンジングまでもスキンケアと考えます。
「落とすスキンケアが美肌への扉を開ける一歩である」という考えのもと、サロン発想のスキンケア製品と技術をサロン以外でも展開していきます。「製品からサロンへ」という新しい潮流を作ることを目指し、新しい事業展開にも結びつけていきたいと考えています。
先ほど瀧からお話ししたとおり、市場への認知拡大を進め、その他の製品やバラエティショップ市場向けの新ブランドの展開にも取り組んでいきたいと思っています。
サロン価値向上
サロン価値向上についてです。まず、シーボン美容理論を再構築したいと考えています。ホームケアとサロンケアというシステム主体のコミュニケーションから、「なぜこのシステムで美しくなるのか」という理由を主体とするコミュニケーションへと掘り下げていきたいと思っています。
ホームケアとサロンケアの科学的価値や機能的価値を分析し、「シーボン.」の価値を再構築するための戦略として、シーボン.ビューティーメソッドを構築します。
ホームケアとサロンケアでお客さまに最高の美しさを提供することが私たちのビジネスモデルです。しかし、この価値は会員やご愛用者の方の体の中に蓄えられるだけで、外に出ていない情報と考えています。
このような情報をシーボン美容理論とし、ロジックを説明できる体制作りを行っていきます。このロジックを多くのお客さまに実感していただき、その実績を具体的に見える化し、事業の骨格として見直していきたいと考えています。
サロン価値向上
サロン価値向上の1つとして、商圏に合ったサロン展開を行っていきます。出退店基準に則った店舗開発計画を迅速化し、都市型・郊外型に分けて考えることで店舗の差別化を図ります。お客さま視点での考え方やマーケットに合わせた販売戦略を、店舗ごとに行っていきます。
都市型店舗に関しては、集客数の拡大はもちろん、現状のサロンスタイルと新たに美容機器を併用した販売戦略を担う店舗へと改革していきます。
郊外型店舗に関しては、都市型店舗とは差別化したオペレーションを行うことにより、オペレーションの改善を行います。同時に、都市型店舗との規模やレイアウトの差別化も行うことで、地方は地方の戦略でさらにFC展開ができるよう進めていきたいと考えています。
新しい価値の創造
新しい価値の創造についてです。「美を創造し演出する」という企業理念のもと、お客さまの肌に最後まで責任を持つという思いで事業を進めてきました。
2024年に六本木に新社屋が竣工し、2026年には60周年を迎えます。それに向けて、世の中に企業、製品、サロンのブランディングをさらに伝えていくため、ブランディングプロジェクトをスタートしました。
サロン製品の認知拡大に努め、理解と信頼を獲得し、新市場への進出やFC交流を含めた新たな展開を行っていくためのプロジェクトです。具体的には企業ロゴの視認性を高めることや、店舗体系の新たなプラットフォームを作ることなど、中期経営計画と並行して進めていきたいと考えています。
新しい価値の創造
海外EC市場への参入とバラエティ市場への製品投入についてご報告します。海外EC市場に関しては、中国の顧客を獲得するために、パートナー企業とパートナーシップを結ぶことによって製品を展開していきたいと考えています。
対象となるパートナーは会員専用サイトを持っているため、会員向けに製品をECで販売していきます。当社の製品は、サロンでのスタッフによるカウンセリングや施術の紹介など、どちらかというとカウンセリングを要します。そのため、いきなり中国のEC市場に出しても製品の認知度が足りません。
そのような時に、会員向けの製品発表会などの場をお借りして製品の紹介を行っていきます。会員の方に当社の製品を理解していただき、それを自ら販売して経営を行いながら発信していただく手法です。当社が中国に進出する第一歩としてはそのような展開が望ましいと考え、今後も協力しながら進めていきたいと思っています。
また、4月から国内に110店舗ある一部のバラエティショップに製品を投入しています。6月には150店舗まで店舗数を増やす計画です。サロン発信のメーカーとしてのアイデンティティを十分に確立した上で、サロンやイベントで得たお客さまの声を元にすることで他社との差別化を図りながら、バラエティショップへの展開を進めていきたいと考えています。
新しい価値の創造
新形態店舗の出店展開についてです。新たな顧客との接点を作り、イベント集客では得られない新たな顧客層へリーチするための展開を考えています。
まず、新しい顧客を育成する戦略として、既存サロンへの誘導やサロン体験を進めていきます。トライアル体験でサロンに来ていただき製品を購入するという流れから、製品からサロンへという新たな潮流を作ることも目的としています。
具体的には、住宅街にある店舗というイメージです。予約を取ってサロンに来店するのではなく、通常のショップに行くようなイメージ作りを考えています。それにより、新たなお客さまの開拓はもちろん、過去に会員であったお客さまへの製品提供もできると考えています。
サロンという閉鎖されたイメージの強い空間から、よりカジュアルなイメージと接点作りを目指していきます。
サステナビリティ/ SDGs
サステナビリティ経営に関しては、経営戦略と位置づけています。当社の強みでもある現場力の強さを活かしながら、事業活動の一環として組織全体で推進していきます。次ページで、女性活躍推進、社会との共生、環境との共生について、これまでの主な取り組みをご紹介します。
サステナビリティ/ SDGs
当社の女性活躍が評価され、2022年8月に「女性の活躍推進に関する取組企業」として厚生労働大臣から認定を受け、「プラチナえるぼし」を取得しました。
また、当社はヘアサロンを2店舗展開しており、2015年よりヘアドネーションを実施しています。この活動により、年間で約20名のお客さまの髪の毛を寄付することができました。
さらに、サロンで使用する製品は環境に配慮したものに順次切り替えを行っています。
全社的なエネルギー使用量を削減することで、CO2の排出量は年々減少傾向にあります。今後も事業活動の一環として社内で取り組みを共有しながら、全社で推進していきたいと考えています。
3ヵ年 計数目標
3ヶ年の計数目標です。59期の売上高は89億円、営業利益は2億円、60期の売上高は94億円、営業利益は4億円、61期の売上高は100億円、営業利益は8億円を目指していきます。
2024年3月期 配当予想について
最後に株主還元についてです。2023年3月期の期末配当は、期末の結果を踏まえ、無配としました。2024年3月期の配当予想は、新中期経営計画を実行のもと、掲げた計数目標を鑑みて、中間配当5円、期末配当10円としています。
ステークホルダーに対する新中期経営計画のコミットに向けて、全力で取り組んでいきたいと思います。
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