*16:18JST サイバネット Research Memo(8):無借金経営で金融資産は150億円超と潤沢
■業績動向
2. 財務状況
サイバネットシステム<4312>の2022年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比884百万円増加の24,155百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では、親会社である富士ソフト向けの貸付金(キャッシュ・マネジメント・システムによる取引)回収により短期貸付金が3,579百万円減少した一方で、現金及び預金が918百万円、有価証券が2,000百万円それぞれ増加し、金融資産としては前期末比661百万円減少の15,348百万円となった。また、収益認識会計基準等の適用に伴う影響で、受取手形、売掛金及び契約資産が967百万円減少した一方で、前渡金が1,951百万円増加した。固定資産は、新基幹業務システムの導入に伴い無形固定資産が201百万円増加した。なお、新基幹業務システムの稼働開始時期は2023年12月期の下期を予定している。
負債合計は前期末比1,867百万円増加の9,405百万円となった。流動負債では買掛金が116百万円、未払法人税等が570百万円、賞与引当金が272百万円それぞれ減少した一方で、収益認識会計基準等の適用に伴い前受金が3,171百万円増加した。また、固定負債では退職給付に係る負債が56百万円減少した。純資産合計は前期末比982百万円減少の14,749百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益を999百万円計上した一方で、収益認識会計基準等の適用に伴い期首の利益剰余金を911百万円減算調整したことや、配当金支出966百万円、自己株式取得209百万円などが減少要因となった。
経営指標を見ると、自己資本比率が60.3%と前期末から6.0ポイント低下したものの、無借金経営で金融資産が150億円超と潤沢にあることなどから、財務の健全性は高いと判断される。収益性については既述のとおり売上高の減少が響いて売上高営業利益率、ROE、ROAともに前期の12%台から1ケタ台に低下した。なお、同社は手元の豊富なキャッシュについて、今後はM&A等の成長投資や株主還元に充当する方針だ。
2023年12月期は成長投資を行いつつ、増収増益を見込む
3. 2023年12月期業績見通し
2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比10.4%増の22,000百万円、営業利益で同5.2%増の1,850百万円、経常利益で同9.2%増の1,850百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同5.0%増の1,050百万円と増収増益に転じる見通し。売上高は中期経営計画に掲げる「自社開発製品の強化」と「アジア事業の拡大」などを推進することで2ケタ増収を目指す。営業利益率が前期比0.4ポイント低下する見込みとなっているが、これは人材投資の積極化により人件費だけでなく採用費や教育費の増加を見込んでいることに加え、下期に新基幹業務システムが稼働することによる減価償却費の増加75百万円程度を織り込んでいるためだ。なお、2023年4月の新卒入社は15名で、キャリア採用も引き続き積極的に採用を進めていく。
国内では引き続きAR/VRソリューションやAIシステム構築サービスなどのDX事業の高成長が見込まれるほか、MBSE等のエンジニアリングサービスも自動車業界向けを中心に成長が見込まれる。2023年2月にはMBSEで必要となるシステムモデリングから品質・リスク分析、プロジェクト計画の立案までを可視化できるソフトウェア「iQUAVIS(アイクアビス)」の販売代理店契約を開発元のISIDと締結し、販売を開始した。自動運転技術やIoTの普及などにより検討すべき領域が広がったことから、自動車や精密機器では開発業務が大規模・複雑化しており、同ソフトウェアによって「開発の見える化」を行うことで、MBSEによる業務効率化並びに品質のさらなる向上が期待でき、売上増に貢献するものと予想される。
なお、同社はSynopsys製品に代わる光学系ソリューションとして、2021年10月2日よりAnsysと販売代理店契約を締結し、「Ansys Speos(R)」(3次元光学解析ソフトウェア)、「Ansys VRXPERIENCETM」(VRソリューション)、「Ansys Lumerical」(フォトニクス解析ソフトウェア)の販売を開始したほか、2022年2月にはAnsysのグループ会社である米Zemax, LLCの「OpticStudio(R)」(光学設計ソフトウェア)の販売も開始している。
一般的に開発ツールを他社製品からリプレースするのは、性能や機能面で明確な差がない限り難しいが、CAE製品を効果的に使用するためには一定以上の知識や経験が必要であり、同社のように豊富なノウハウや最新技術に関する情報を持つ代理店からの技術サポートが必要となる。同社は顧客満足度の高いサポート力を強みに、Ansys製品のシェアを拡大する戦略を立てている。具体的には、顧客企業でSynopsys製品を10ライセンス契約している場合、1~2ライセンスを試験的にAnsys製品に置き換えてもらい、技術サポートを強化することでライセンス数を徐々に増やしていく戦略だ。また、機能面ではSynopsys製品とほぼ遜色は無いものの、他のAnsysのCAE製品との連携機能については同一ベンダーの製品であるだけに優れており、訴求ポイントとなる。販売開始から1年余りが過ぎたが、導入顧客数、ライセンス数ともに徐々に増えているようで、今後光学系ソリューション分野においてAnsys製品のシェアが拡大する可能性はあると弊社では見ている。また、中国子会社でもAnsysの光学系CAE製品の取り扱いを開始しており、導入実績も順調に伸びているようだ。中国については前期にロックダウンの影響を受けたものの、中国政府のゼロ・コロナ政策転換によって2023年12月期は高成長が期待される。
自社開発製品については、欧米子会社における各種ソフトウェア製品の販売増を見込んでいる。Sigmetrixについては前期の流れを引き継ぎ順調に推移する見通しだ。一方、Maplesoftは教育機関の投資動向、並びに注力中のエンタープライズ向けでどの程度売上を伸ばせるかがポイントとなる。Noesisについても前期は低迷した欧州自動車メーカーの投資マインドの回復がポイントとなる。また、同社の開発製品であるビッグデータ可視化ツール「BIGDAT@Analysis(ビッグデータアナリシス)」は、工場での生産設備や生産ラインの稼働状況をIoTセンサで監視し、設備不良等の予兆保全を可視化するIoTソリューションとして、国内だけでなく日系企業の製造工場が集積するアジアでの拡販も進める考えだ。
ITソリューションサービス事業では、企業へのサイバー攻撃が巧妙化するなか、次世代型エンドポイントセキュリティ製品を中心に売上成長が見込まれる。また、前期は円安進行で減益となったが、価格転嫁を徐々に進めており2023年12月期は増収増益を見込んでいる。為替前提レートについては前期並みの水準で計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 財務状況
サイバネットシステム<4312>の2022年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比884百万円増加の24,155百万円となった。主な増減要因を見ると、流動資産では、親会社である富士ソフト向けの貸付金(キャッシュ・マネジメント・システムによる取引)回収により短期貸付金が3,579百万円減少した一方で、現金及び預金が918百万円、有価証券が2,000百万円それぞれ増加し、金融資産としては前期末比661百万円減少の15,348百万円となった。また、収益認識会計基準等の適用に伴う影響で、受取手形、売掛金及び契約資産が967百万円減少した一方で、前渡金が1,951百万円増加した。固定資産は、新基幹業務システムの導入に伴い無形固定資産が201百万円増加した。なお、新基幹業務システムの稼働開始時期は2023年12月期の下期を予定している。
負債合計は前期末比1,867百万円増加の9,405百万円となった。流動負債では買掛金が116百万円、未払法人税等が570百万円、賞与引当金が272百万円それぞれ減少した一方で、収益認識会計基準等の適用に伴い前受金が3,171百万円増加した。また、固定負債では退職給付に係る負債が56百万円減少した。純資産合計は前期末比982百万円減少の14,749百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益を999百万円計上した一方で、収益認識会計基準等の適用に伴い期首の利益剰余金を911百万円減算調整したことや、配当金支出966百万円、自己株式取得209百万円などが減少要因となった。
経営指標を見ると、自己資本比率が60.3%と前期末から6.0ポイント低下したものの、無借金経営で金融資産が150億円超と潤沢にあることなどから、財務の健全性は高いと判断される。収益性については既述のとおり売上高の減少が響いて売上高営業利益率、ROE、ROAともに前期の12%台から1ケタ台に低下した。なお、同社は手元の豊富なキャッシュについて、今後はM&A等の成長投資や株主還元に充当する方針だ。
2023年12月期は成長投資を行いつつ、増収増益を見込む
3. 2023年12月期業績見通し
2023年12月期の連結業績は、売上高で前期比10.4%増の22,000百万円、営業利益で同5.2%増の1,850百万円、経常利益で同9.2%増の1,850百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同5.0%増の1,050百万円と増収増益に転じる見通し。売上高は中期経営計画に掲げる「自社開発製品の強化」と「アジア事業の拡大」などを推進することで2ケタ増収を目指す。営業利益率が前期比0.4ポイント低下する見込みとなっているが、これは人材投資の積極化により人件費だけでなく採用費や教育費の増加を見込んでいることに加え、下期に新基幹業務システムが稼働することによる減価償却費の増加75百万円程度を織り込んでいるためだ。なお、2023年4月の新卒入社は15名で、キャリア採用も引き続き積極的に採用を進めていく。
国内では引き続きAR/VRソリューションやAIシステム構築サービスなどのDX事業の高成長が見込まれるほか、MBSE等のエンジニアリングサービスも自動車業界向けを中心に成長が見込まれる。2023年2月にはMBSEで必要となるシステムモデリングから品質・リスク分析、プロジェクト計画の立案までを可視化できるソフトウェア「iQUAVIS(アイクアビス)」の販売代理店契約を開発元のISIDと締結し、販売を開始した。自動運転技術やIoTの普及などにより検討すべき領域が広がったことから、自動車や精密機器では開発業務が大規模・複雑化しており、同ソフトウェアによって「開発の見える化」を行うことで、MBSEによる業務効率化並びに品質のさらなる向上が期待でき、売上増に貢献するものと予想される。
なお、同社はSynopsys製品に代わる光学系ソリューションとして、2021年10月2日よりAnsysと販売代理店契約を締結し、「Ansys Speos(R)」(3次元光学解析ソフトウェア)、「Ansys VRXPERIENCETM」(VRソリューション)、「Ansys Lumerical」(フォトニクス解析ソフトウェア)の販売を開始したほか、2022年2月にはAnsysのグループ会社である米Zemax, LLCの「OpticStudio(R)」(光学設計ソフトウェア)の販売も開始している。
一般的に開発ツールを他社製品からリプレースするのは、性能や機能面で明確な差がない限り難しいが、CAE製品を効果的に使用するためには一定以上の知識や経験が必要であり、同社のように豊富なノウハウや最新技術に関する情報を持つ代理店からの技術サポートが必要となる。同社は顧客満足度の高いサポート力を強みに、Ansys製品のシェアを拡大する戦略を立てている。具体的には、顧客企業でSynopsys製品を10ライセンス契約している場合、1~2ライセンスを試験的にAnsys製品に置き換えてもらい、技術サポートを強化することでライセンス数を徐々に増やしていく戦略だ。また、機能面ではSynopsys製品とほぼ遜色は無いものの、他のAnsysのCAE製品との連携機能については同一ベンダーの製品であるだけに優れており、訴求ポイントとなる。販売開始から1年余りが過ぎたが、導入顧客数、ライセンス数ともに徐々に増えているようで、今後光学系ソリューション分野においてAnsys製品のシェアが拡大する可能性はあると弊社では見ている。また、中国子会社でもAnsysの光学系CAE製品の取り扱いを開始しており、導入実績も順調に伸びているようだ。中国については前期にロックダウンの影響を受けたものの、中国政府のゼロ・コロナ政策転換によって2023年12月期は高成長が期待される。
自社開発製品については、欧米子会社における各種ソフトウェア製品の販売増を見込んでいる。Sigmetrixについては前期の流れを引き継ぎ順調に推移する見通しだ。一方、Maplesoftは教育機関の投資動向、並びに注力中のエンタープライズ向けでどの程度売上を伸ばせるかがポイントとなる。Noesisについても前期は低迷した欧州自動車メーカーの投資マインドの回復がポイントとなる。また、同社の開発製品であるビッグデータ可視化ツール「BIGDAT@Analysis(ビッグデータアナリシス)」は、工場での生産設備や生産ラインの稼働状況をIoTセンサで監視し、設備不良等の予兆保全を可視化するIoTソリューションとして、国内だけでなく日系企業の製造工場が集積するアジアでの拡販も進める考えだ。
ITソリューションサービス事業では、企業へのサイバー攻撃が巧妙化するなか、次世代型エンドポイントセキュリティ製品を中心に売上成長が見込まれる。また、前期は円安進行で減益となったが、価格転嫁を徐々に進めており2023年12月期は増収増益を見込んでいる。為替前提レートについては前期並みの水準で計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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