スカラ Research Memo(10):2024年6月期以降は成長スピードが加速する見通し

配信元:フィスコ
投稿:2023/03/24 16:10
*16:10JST スカラ Research Memo(10):2024年6月期以降は成長スピードが加速する見通し ■今後の見通し

1. 2023年6月期の業績見通し
スカラ<4845>の2023年6月期連結業績は売上収益で前期比29.8%増の13,000百万円、営業利益で1,000百万円(前期は393百万円の損失)、税引前利益で970百万円(同411百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益で650百万円(同523百万円の損失)とする期初計画を据え置いた。第2四半期までの進捗率は、売上収益は50.0%と計画どおりに推移しているものの、新規案件に係る人件費や新サービスの開発費用、保険事業の事業構造改革費用の増加等により、営業利益は14.0%となっており、下期に大型案件の貢献がなければ下振れする可能性があると弊社では見ている。ただ、これらの費用は今後の収益拡大に向けた先行投資費用と位置付けられるため、投資の効果が顕在化する2024年6月期以降は利益成長も加速すると期待される。

(1) IT/AI/IoT/DX事業
IT/AI/IoT/DX事業は売上収益で前期比25.1%増の6,100百万円、営業利益で同281.1%増の900百万円を見込む。第2四半期までの進捗率は売上収益で54.4%、営業利益で25.3%となっている。売上収益はエッグの業績が通年で寄与することに加えて、ヘルスケア領域や社会課題解決型の共創案件の複数計上、「i-シリーズ」等のASPサービスの着実な成長により、計画どおり推移している。一方、利益面ではややハードルが高い。

トピックスとしては、エッグが(株)ネクスウェイ及び(株)TACTと共同で、音声自動応答サービス(AIコール)を活用した自治体向け24時間365日の電話対応システムの実証実験を3つの自治体(新潟県三条市、群馬県草津市及び昭和村)と実施した。ふるさと納税の「ワンストップ特例制度※」申請時における寄附者と自治体のコミュニケーション改善を図り、自治体職員の業務負担軽減及びふるさと納税利用者のサービス満足度向上を推進する。実証実験では、エッグのふるさと納税システムに、ネクスウェイが提供するワンストップ郵送DMサービスやSMS配信サービス、TACTが提供する自治体向けAIコールを組み合わせて、利用者の問い合わせに24時間対応する。今後は住民対応等の事務作業の自動化にも横展開し、自治体DXを推進していく。

※確定申告不要な給与所得者等がふるさと納税を行う際、確定申告なしでふるさと納税の寄付金控除を受けることができる制度。


ヘルスケア領域では、「スマートヘルスケアプラットフォーム」に加えて、エッグが展開しているフレイル※早期発見システムがある。パソコンやタブレット端末を使って簡単な設問に回答することでフレイルを早期発見するクラウドサービスで、超高齢化社会が進むなかで介護予防による「健康寿命の延伸」と自治体の「社会保障費の削減」の実現を支えている。2022年5月に沖縄県西原町で運用が開始されたほか、同年7月より福島県本宮市で実証実験が行われるなど、自治体での引き合いも増えている。契約者は自治体となるため予算次第ではあるものの、サービス導入効果が明確になれば高齢者の多い自治体で普及する可能性は十分にある。

※人間の健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。


(2) カスタマーサポート事業
カスタマーサポート事業は売上収益で前期比6.8%増の1,450百万円、営業利益で0百万円の利益(前期は31百万円の損失)を見込み、第2四半期までの売上収益の進捗率は40.8%となっている。営業人員を増やし新規案件獲得を目指すほか、東京でも営業活動を行う。また、沖縄でのコールセンター席数を増やして内製化率を高めるだけでなく、RPAツールの導入による業務効率の向上に取り組むことで、2024年6月期以降の黒字化を目指している。

(3) 人材・教育事業
人材・教育事業は売上収益で前期比12.4%増の1,650百万円、営業利益で同191.7%増の180百万円を見込む。第2四半期までの進捗率は売上収益で49.2%、営業利益で58.7%と順調に推移している。採用支援サービスでは、新卒向け採用関連イベント回数が増加しているほか、中途人材紹介の領域を強化すべく新規事業の立ち上げ検討を進めている。保育・教育サービスでは、2023年4月に新規開園予定の保育園の集客に注力する。

トピックスとしては、Web3領域でのNFT新規事業開始に向けて、2022年11月に、スカラパートナーズが(株)UPBOND※1に出資した。第一弾として、「さいたまブロンコス」のファンクラブ会員向けに、スポーツチームの運営に参加できるNFTサービス(NFTを購入することで様々な特典を受けられるサービス)や、NFTを活用したファンタジースポーツ※2の開発・運営を予定している。2023年6月期にトライアルを行い、Bリーグが開幕する2023年秋をターゲットに開始を目指す。なお、スポーツ領域で蓄積したNFTサービスの運用ノウハウについては、将来的に社会解決型事業等の他の領域への横展開を視野に入れている。

※1 Web3技術の社会実装をテーマに、Walletサービス「UPBOND」の開発及び販売、Web3を活用した事業創出支援を展開している。
※2 現実世界に実在する選手からドリームチームを編成して各試合、シーズンを通してポイントを競い合うシュミレーションゲーム。


(4) EC事業
EC事業の売上収益は前期比14.8%増の1,900百万円、営業利益は同12.9%増の270百万円と2ケタ増収増益が続く見通し。第2四半期までの進捗率は売上収益で54.5%、営業利益で50.6%と順調に進んでいる。新たな取り組みとして、強固なセキュリティを完備したパスワードレスログインソリューションや、Android端末向けアプリの開発を進めており、2023年6月期中のリリースを予定している。これらの取り組みによって、会員数は2022年6月期末の188千人から2023年6月期末に250千人、2025年6月期末には400千人を目指している。

事業規模の拡大に向けては、リアル店舗の開設を検討しているようだ。リアル店舗ではメーカーから直接トレーディングカードを仕入れることができ、品揃えの充実によってECサイトの流通額増加が見込めるためだ。また、将来的には、同社グループの教育コンテンツに関連したカードゲームの制作についても視野に入れている。

(5) 保険事業
保険事業の売上収益は前期比198.4%増の1,350百万円、営業損失は140百万円(前期は28百万円の損失)を見込んでいる。販売代理店の整理が影響し、第2四半期までの進捗率は売上収益で46.9%となっている。既述のとおり、2023年6月期は立て直し期間と位置付け、収益力の強化に向けた各種施策を実行しており、2024年6月期中に単月ベースでの黒字化を目指している。

(6) 投資・インキュベーション事業
投資・インキュベーション事業の売上収益は前期比166.1%増の550百万円、営業損失は210百万円(前期は866百万円の損失)を見込む。第2四半期までの進捗率は売上収益で20.9%だが、新サービスの展開により達成を目指す。「逆プロポ」及び新たに立ち上げた「逆プロポ」派生サービス(コンシェルジュ、ツアー、Learning)が売上貢献するほか、M&A関連サービス、ワーケーションサービスなどの売上拡大が期待される。利益面では損失が続くものの、先行費用が減少し一時費用もなくなることから、損失額は縮小する見込みだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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