■RS Technologies<3445>の今後の見通し
(2) プライムウェーハ事業
プライムウェーハ事業では、山東GRITEK※の徳州工場におけるプライムウェーハ月産能力が8インチで13万枚、6インチで15万枚、5インチで5万枚となっている。8インチについては2022年12月期中にすべての顧客に対する製品認定を完了し、生産効率を高めながらフル稼働を目指す。また、GRITEKの株式上場で調達する資金を今後の生産能力増強投資に充当する計画となっている。中国における8インチ等のプライムウェーハ需要の拡大に対応するだけでなく、将来的にはコスト競争力を生かして中国以外の市場へ展開することも視野に入れている。実際、欧米メーカーからコスト面で高く評価されており、生産能力さえあれば販売できる状況にある。このため、8インチ以下のプライムウェーハ事業についても、中期的に拡大することが予想される。
※GRITEKが80%、徳州市政府が20%を出資している。
一方、12インチプライムウェーハを手掛けるSGRSでは北京の研究開発棟で月産1万枚規模のテストラインを設置し、品質の向上に取り組んでいるほか、徳州市で新工場の建設に着手している。早ければ2024年にも量産ラインを稼働し、顧客から製品認定を取得する計画となっている。当初の生産能力についてはまだ確定していないものの、月産5万枚規模からスタートする可能性が高い。5万枚の生産能力を構築する場合には約250億円の資金が必要となるが、出資比率に応じて約2割をGRITEKが負担するものと見られる。
販売戦略として、中国市場のボリュームゾーンである回路線幅28~40nm品のプライムウェーハの品質基準を確保して、中国半導体メーカー向けから販売を開始する予定となっている。生産能力の拡大施策としては、新規投資だけでなくM&A等により低コストで製造設備を取得することも選択肢として検討しており、低価格戦略によりまずは中国市場でのトップシェアを目指す。また、次のステップとしてグローバル市場でのボリュームゾーンである14~20nm品の品質基準をクリアし、中国生産による価格競争力を生かして、大手半導体メーカー向けに販売する戦略だ。同社はウェーハ再生事業で大半の大手半導体企業と取引があるため、品質基準の確保と安定供給体制さえ構築できれば、価格面での優位性から採用がスムーズに進むものと考えられる。同社は将来的に12インチプライムウェーハで30%の市場シェア獲得を目標に掲げている。
中国向けの12インチプライムウェーハは海外大手企業が販売しており、中国ローカル企業は多額の設備投資を実施してきたものの、品質基準を依然クリアできず量産化に至っていないのが現状だ。インゴットを均質な純度・品質(酸素濃度や抵抗値等)で引き上げ、高い歩留まりを達成するのに苦戦しているようだ。同社は大手シリコンウェーハメーカー出身のエンジニアを招聘して現地スタッフにノウハウを伝授しており、品質面ではほかの中国ローカル企業に対して同等以上の水準になっていると見ている。製造の後工程となる研磨・洗浄工程については再生ウェーハの技術を活用できるため問題なく、2024年に量産を開始できる可能性は十分あるだろう。また、目標とする月産30万枚の能力を構築するためには1千億円規模の多額な投資が必要となる。その手段として中国競合他社のM&A等も選択肢の1つとなるが、投資資金については合弁先のGRINMや徳州市政府系ファンドと共同で負担していくもの思われる。
(3) 第3の収益柱として半導体製造装置用消耗部材を育成
同社は、ウェーハ再生事業、プライムウェーハ事業に続く第3の収益柱を育成するため、子会社のDG Technologiesで展開している半導体製造装置用消耗部材に注力する方針だ。具体的には、ドライエッチング装置でシリコンウェーハを固定するための石英リングやシリコン電極などの消耗部材の売上拡大を目指す。
同消耗部材の年間市場規模は約1,500億円と同社では推計しており、当面の売上目標としてシェア10%(約150億円)を目指す。売上高は新工場稼働によって、2021年12月期の30億円台から2022年12月期は40億円台に拡大する見込みとなっている。営業利益率は2021年12月期で1ケタ台前半の水準にとどまっているが、新工場稼働による量産効果により将来的にはウェーハ再生事業と同水準となる30%台まで引き上げることを目標にしている。
競合は国内、台湾、韓国、米国などに複数社あるが、品質や技術力では同社が同等以上の水準にあると見られる。多品種少量生産となるため、従来は生産効率の低い点が課題であったが、自動化設備の導入や人員配置の最適化等によって生産効率の向上を図ると同時に、材料となるシリコンをグループ会社のGRITEKやそのほか販売ネットワークを通じて安く調達することでコスト低減を図り、コスト競争力を強化している。また、営業面ではウェーハ再生事業の顧客に対してクロスセルを実施していくことで販売シェアを拡大する戦略だ。新工場の拠点となる宮城県内には大手半導体メーカーやドライエッチング装置メーカーの生産工場もあり、営業強化により納入シェア拡大を図ると考えられる。長期的な目標としては世界シェアで約3割、売上高450億円を目指している。石英ガラスの競合であるテクノクオーツ<5217>の事業規模は、2022年3月期の売上高で158億円、営業利益率で20%の水準となっており、DG Technologiesも売上規模の拡大により営業利益率で20%前後の水準まで引き上げることは可能と弊社では見ている。
(4) 長期的な成長戦略
長期的な成長戦略としては、既存事業における販売地域拡大と事業領域の拡大を進めることで、半導体産業を上回る成長を目指す。販売地域の拡大については、中国で生産している8インチプライムウェーハの中国以外の地域への販売が挙げられる。当面は中国向けの需要だけで手一杯としているが、GRITEKの株式上場で調達する資金を使って生産能力を拡大し、中国以外の市場開拓も進める考えだ。また、商社機能として日本、アジア、中国で販売している半導体・電子部品、消耗材についても欧米向けに販売する予定だ。一方、事業領域の拡大についてはM&Aにより進めることになる。対象としては半導体ウェーハ周辺領域でシナジーが見込める企業となり半導体事業も対象となる。手順としては社長が保有する投資会社にて出資を行い、改善を進めながら収益化の道筋が見えてきた段階で同社がM&Aを行うケースが想定される。
同社は12インチ再生ウェーハで世界シェア約33%(同社推計)とトップの地位を確立し、世界の大手半導体メーカーを顧客として既に持っていることから、クロスセルによるシナジーを創出しやすい立ち位置にある。また、半導体産業は好不況の波が大きいものの、同社の基盤事業となるウェーハ再生事業は不況抵抗力が強いため比較的安定した業績推移が見込まれる。高シェアを持つウェーハ再生事業を安定収益基盤とし、プライムウェーハ事業の規模拡大や半導体製造装置用消耗部材を育成することで、半導体業界全体を上回る成長スピードで収益が拡大する可能性は十分あると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(2) プライムウェーハ事業
プライムウェーハ事業では、山東GRITEK※の徳州工場におけるプライムウェーハ月産能力が8インチで13万枚、6インチで15万枚、5インチで5万枚となっている。8インチについては2022年12月期中にすべての顧客に対する製品認定を完了し、生産効率を高めながらフル稼働を目指す。また、GRITEKの株式上場で調達する資金を今後の生産能力増強投資に充当する計画となっている。中国における8インチ等のプライムウェーハ需要の拡大に対応するだけでなく、将来的にはコスト競争力を生かして中国以外の市場へ展開することも視野に入れている。実際、欧米メーカーからコスト面で高く評価されており、生産能力さえあれば販売できる状況にある。このため、8インチ以下のプライムウェーハ事業についても、中期的に拡大することが予想される。
※GRITEKが80%、徳州市政府が20%を出資している。
一方、12インチプライムウェーハを手掛けるSGRSでは北京の研究開発棟で月産1万枚規模のテストラインを設置し、品質の向上に取り組んでいるほか、徳州市で新工場の建設に着手している。早ければ2024年にも量産ラインを稼働し、顧客から製品認定を取得する計画となっている。当初の生産能力についてはまだ確定していないものの、月産5万枚規模からスタートする可能性が高い。5万枚の生産能力を構築する場合には約250億円の資金が必要となるが、出資比率に応じて約2割をGRITEKが負担するものと見られる。
販売戦略として、中国市場のボリュームゾーンである回路線幅28~40nm品のプライムウェーハの品質基準を確保して、中国半導体メーカー向けから販売を開始する予定となっている。生産能力の拡大施策としては、新規投資だけでなくM&A等により低コストで製造設備を取得することも選択肢として検討しており、低価格戦略によりまずは中国市場でのトップシェアを目指す。また、次のステップとしてグローバル市場でのボリュームゾーンである14~20nm品の品質基準をクリアし、中国生産による価格競争力を生かして、大手半導体メーカー向けに販売する戦略だ。同社はウェーハ再生事業で大半の大手半導体企業と取引があるため、品質基準の確保と安定供給体制さえ構築できれば、価格面での優位性から採用がスムーズに進むものと考えられる。同社は将来的に12インチプライムウェーハで30%の市場シェア獲得を目標に掲げている。
中国向けの12インチプライムウェーハは海外大手企業が販売しており、中国ローカル企業は多額の設備投資を実施してきたものの、品質基準を依然クリアできず量産化に至っていないのが現状だ。インゴットを均質な純度・品質(酸素濃度や抵抗値等)で引き上げ、高い歩留まりを達成するのに苦戦しているようだ。同社は大手シリコンウェーハメーカー出身のエンジニアを招聘して現地スタッフにノウハウを伝授しており、品質面ではほかの中国ローカル企業に対して同等以上の水準になっていると見ている。製造の後工程となる研磨・洗浄工程については再生ウェーハの技術を活用できるため問題なく、2024年に量産を開始できる可能性は十分あるだろう。また、目標とする月産30万枚の能力を構築するためには1千億円規模の多額な投資が必要となる。その手段として中国競合他社のM&A等も選択肢の1つとなるが、投資資金については合弁先のGRINMや徳州市政府系ファンドと共同で負担していくもの思われる。
(3) 第3の収益柱として半導体製造装置用消耗部材を育成
同社は、ウェーハ再生事業、プライムウェーハ事業に続く第3の収益柱を育成するため、子会社のDG Technologiesで展開している半導体製造装置用消耗部材に注力する方針だ。具体的には、ドライエッチング装置でシリコンウェーハを固定するための石英リングやシリコン電極などの消耗部材の売上拡大を目指す。
同消耗部材の年間市場規模は約1,500億円と同社では推計しており、当面の売上目標としてシェア10%(約150億円)を目指す。売上高は新工場稼働によって、2021年12月期の30億円台から2022年12月期は40億円台に拡大する見込みとなっている。営業利益率は2021年12月期で1ケタ台前半の水準にとどまっているが、新工場稼働による量産効果により将来的にはウェーハ再生事業と同水準となる30%台まで引き上げることを目標にしている。
競合は国内、台湾、韓国、米国などに複数社あるが、品質や技術力では同社が同等以上の水準にあると見られる。多品種少量生産となるため、従来は生産効率の低い点が課題であったが、自動化設備の導入や人員配置の最適化等によって生産効率の向上を図ると同時に、材料となるシリコンをグループ会社のGRITEKやそのほか販売ネットワークを通じて安く調達することでコスト低減を図り、コスト競争力を強化している。また、営業面ではウェーハ再生事業の顧客に対してクロスセルを実施していくことで販売シェアを拡大する戦略だ。新工場の拠点となる宮城県内には大手半導体メーカーやドライエッチング装置メーカーの生産工場もあり、営業強化により納入シェア拡大を図ると考えられる。長期的な目標としては世界シェアで約3割、売上高450億円を目指している。石英ガラスの競合であるテクノクオーツ<5217>の事業規模は、2022年3月期の売上高で158億円、営業利益率で20%の水準となっており、DG Technologiesも売上規模の拡大により営業利益率で20%前後の水準まで引き上げることは可能と弊社では見ている。
(4) 長期的な成長戦略
長期的な成長戦略としては、既存事業における販売地域拡大と事業領域の拡大を進めることで、半導体産業を上回る成長を目指す。販売地域の拡大については、中国で生産している8インチプライムウェーハの中国以外の地域への販売が挙げられる。当面は中国向けの需要だけで手一杯としているが、GRITEKの株式上場で調達する資金を使って生産能力を拡大し、中国以外の市場開拓も進める考えだ。また、商社機能として日本、アジア、中国で販売している半導体・電子部品、消耗材についても欧米向けに販売する予定だ。一方、事業領域の拡大についてはM&Aにより進めることになる。対象としては半導体ウェーハ周辺領域でシナジーが見込める企業となり半導体事業も対象となる。手順としては社長が保有する投資会社にて出資を行い、改善を進めながら収益化の道筋が見えてきた段階で同社がM&Aを行うケースが想定される。
同社は12インチ再生ウェーハで世界シェア約33%(同社推計)とトップの地位を確立し、世界の大手半導体メーカーを顧客として既に持っていることから、クロスセルによるシナジーを創出しやすい立ち位置にある。また、半導体産業は好不況の波が大きいものの、同社の基盤事業となるウェーハ再生事業は不況抵抗力が強いため比較的安定した業績推移が見込まれる。高シェアを持つウェーハ再生事業を安定収益基盤とし、プライムウェーハ事業の規模拡大や半導体製造装置用消耗部材を育成することで、半導体業界全体を上回る成長スピードで収益が拡大する可能性は十分あると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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