■業績動向
1. 2021年12月期連結業績の概要
サカタインクス<4633>の2021年12月期の連結業績は、売上高が前期比12.4%増の181,487百万円、営業利益が同2.8%増の7,414百万円、経常利益が同9.2%増の8,506百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.5%減の4,933百万円となった。なお特別損失に固定資産除却損425百万円、連結子会社(阪田産業)において発生した不適切取引に伴う貸倒引当金繰入額565百万円を計上したため、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となった。
期中平均為替レートは1米ドル=109.80円(2020年12月期は1米ドル=106.82円)で、為替換算影響排除後ベースでは売上高が前期比9.8%増収、営業利益が同1.6%増益、経常利益が同8.8%増益、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.1%減益となった。前回予想(2021年11月12日に売上高を上方修正、各利益を下方修正して、売上高181,000百万円、営業利益7,500百万円、経常利益8,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,000百万円)との比較で見れば、売上高、営業利益、経常利益はおおむね前回予想の水準で着地した。
売上面はインキ販売数量が順調に増加し、機能性材料の需要も回復して2ケタ増収となった。利益面は、第2四半期以降に原材料・物流コストの高騰が顕著になったが、通期ベースでは数量増、製品ミックス改善、販売価格改定、グループ全体におけるコスト削減などで原材料・物流コストの高騰を吸収した。売上総利益は6.3%増加した。売上総利益率は20.8%で1.2ポイント低下した。販管費は7.2%増加したが、販管費比率は16.7%で0.8ポイント低下した。営業外収益では持分法投資利益が678百万円増加(2020年12月期は314百万円、2021年12月期は992百万円)した。
営業利益の要因別増減額は以下のとおりである。営業利益の増益要因は、印刷インキの単価上昇(製品ミックス改善、価格改定)43.5億円、印刷インキの数量増40.3億円、機能性材料13.3億円、機材1.6億円、その他1.9億円、為替影響0.8億円、減益要因は、印刷インキのコスト上昇(原材料・物流コスト上昇、その他のコスト要因)99.3億円、調整額0.1億円となった。
なお半期別に見ると、上期は売上高が88,676百万円で営業利益が5,045百万円、下期は売上高が92,811百万円で営業利益が2,369百万円となった。拡販による数量増などで売上面は順調だが、下期の営業利益は原材料・物流コストの想定以上の高騰の影響を受け、数量増、販売価格改定、諸経費抑制でカバーできなかった。
印刷インキ(米州)がコスト高騰の影響で大幅減益
2. セグメント別の動向
(1) 印刷インキ・機材(日本)
印刷インキ・機材(日本)は売上高が前期比4.9%増の50,444百万円、営業利益が9.1%増の1,366百万円となった。売上面はコロナ禍による影響やデジタル化進展などで新聞用インキが減少したが、内食需要やEC購買の増加などでパッケージ印刷用インキ(軟包材用グラビアインキ、ダンボール用フレキソインキなど)が増加し、機械販売の増加も寄与して増収となった。利益面では、パッケージ印刷用インキの好調、環境対応の機能性ニスの拡販などによる製品ミックス改善、コスト削減(出張費などの販管費抑制)なども寄与して増益となった。なお日本においては原材料価格上昇がほかの地域に比べて半年程度遅れる傾向があるため、原材料コスト上昇の影響は他の地域に比べて比較的小さかった。
(2) 印刷インキ(アジア)
印刷インキ(アジア)は売上高が前期比18.3%増の38,574百万円、営業利益が同8.4%減の2,244百万円となった。コロナ禍からの需要回復や拡販効果で軟包材グラビアインキを中心に数量が増加し、販売価格改定も寄与して大幅増収だが、原材料・物流コスト高騰の影響により減益となった。なお地域別の需要動向を見ると、インドネシアやタイではグラビアインキの拡販が進展して好調となった。インドはコロナ禍の影響で落ち込んでいた新聞用インキの需要が徐々に回復しており、パッケージ印刷用インキは順調な推移となっている。中国は第3四半期に一時的に伸び悩む局面があったが、通期ベースでは拡販が進展した。
(3) 印刷インキ(米州)
印刷インキ(米州)は売上高が前期比10.9%増の54,930百万円、営業利益が同50.4%減の1,464百万円となった。売上面は、環境配慮型製品を中心とするパッケージ関連(軟包材用フレキソ・グラビアインキ、紙器用途UVオフセットインキ)の拡販で数量が増加した。環境負荷軽減を背景とするアルミ缶需要の高まりで缶用メタルインキも好調に推移した。全体として2ケタ増収となったが、利益面では、数量増加、製品ミックス改善、販売価格改定などがプラス要因となったものの、第3四半期以降に原材料価格高騰が急激に進行し、港湾物流混乱に伴う物流コスト高騰や人件費の上昇なども影響して大幅減益となった。
(4) 印刷インキ(欧州)
印刷インキ(欧州)は売上高が前期比56.7%増の15,929百万円、営業利益が188百万円の損失(2020年12月期は432百万円の損失)となった。売上面は、環境配慮型製品を中心とするパッケージ関連(軟包材用フレキソ・グラビアインキ、紙器用途UVオフセットインキ、缶用メタルインキ)の拡販効果に加えて、ドイツのRUCOの新規連結も寄与して大幅増収となった。利益面では、原材料価格高騰の影響を受けたものの、数量増効果に加えて、構造改革効果(生産体制再構築による生産能力増強、コスト削減)で営業損失が縮小した。
(5) 機能性材料
機能性材料は売上高が前期比21.0%増の14,328百万円、営業利益が同245.9%増の1,901百万円となった。2020年12月期はコロナ禍の影響により大きく落ち込んだが、経済活動再開に伴って海外を中心に需要が回復基調となり、売上高、営業損益とも回復基調となった。インクジェットインキ、カラーフィルター用顔料分散液、トナーの販売数量が増加し、利益面では数量増効果に加えて、欧米事業におけるコスト体質改善(高付加価値製品拡販など)や在庫評価減の一巡、さらに原材料・物流コスト高騰の影響が想定より遅れたことも影響した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<EY>
1. 2021年12月期連結業績の概要
サカタインクス<4633>の2021年12月期の連結業績は、売上高が前期比12.4%増の181,487百万円、営業利益が同2.8%増の7,414百万円、経常利益が同9.2%増の8,506百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.5%減の4,933百万円となった。なお特別損失に固定資産除却損425百万円、連結子会社(阪田産業)において発生した不適切取引に伴う貸倒引当金繰入額565百万円を計上したため、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となった。
期中平均為替レートは1米ドル=109.80円(2020年12月期は1米ドル=106.82円)で、為替換算影響排除後ベースでは売上高が前期比9.8%増収、営業利益が同1.6%増益、経常利益が同8.8%増益、親会社株主に帰属する当期純利益が同7.1%減益となった。前回予想(2021年11月12日に売上高を上方修正、各利益を下方修正して、売上高181,000百万円、営業利益7,500百万円、経常利益8,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,000百万円)との比較で見れば、売上高、営業利益、経常利益はおおむね前回予想の水準で着地した。
売上面はインキ販売数量が順調に増加し、機能性材料の需要も回復して2ケタ増収となった。利益面は、第2四半期以降に原材料・物流コストの高騰が顕著になったが、通期ベースでは数量増、製品ミックス改善、販売価格改定、グループ全体におけるコスト削減などで原材料・物流コストの高騰を吸収した。売上総利益は6.3%増加した。売上総利益率は20.8%で1.2ポイント低下した。販管費は7.2%増加したが、販管費比率は16.7%で0.8ポイント低下した。営業外収益では持分法投資利益が678百万円増加(2020年12月期は314百万円、2021年12月期は992百万円)した。
営業利益の要因別増減額は以下のとおりである。営業利益の増益要因は、印刷インキの単価上昇(製品ミックス改善、価格改定)43.5億円、印刷インキの数量増40.3億円、機能性材料13.3億円、機材1.6億円、その他1.9億円、為替影響0.8億円、減益要因は、印刷インキのコスト上昇(原材料・物流コスト上昇、その他のコスト要因)99.3億円、調整額0.1億円となった。
なお半期別に見ると、上期は売上高が88,676百万円で営業利益が5,045百万円、下期は売上高が92,811百万円で営業利益が2,369百万円となった。拡販による数量増などで売上面は順調だが、下期の営業利益は原材料・物流コストの想定以上の高騰の影響を受け、数量増、販売価格改定、諸経費抑制でカバーできなかった。
印刷インキ(米州)がコスト高騰の影響で大幅減益
2. セグメント別の動向
(1) 印刷インキ・機材(日本)
印刷インキ・機材(日本)は売上高が前期比4.9%増の50,444百万円、営業利益が9.1%増の1,366百万円となった。売上面はコロナ禍による影響やデジタル化進展などで新聞用インキが減少したが、内食需要やEC購買の増加などでパッケージ印刷用インキ(軟包材用グラビアインキ、ダンボール用フレキソインキなど)が増加し、機械販売の増加も寄与して増収となった。利益面では、パッケージ印刷用インキの好調、環境対応の機能性ニスの拡販などによる製品ミックス改善、コスト削減(出張費などの販管費抑制)なども寄与して増益となった。なお日本においては原材料価格上昇がほかの地域に比べて半年程度遅れる傾向があるため、原材料コスト上昇の影響は他の地域に比べて比較的小さかった。
(2) 印刷インキ(アジア)
印刷インキ(アジア)は売上高が前期比18.3%増の38,574百万円、営業利益が同8.4%減の2,244百万円となった。コロナ禍からの需要回復や拡販効果で軟包材グラビアインキを中心に数量が増加し、販売価格改定も寄与して大幅増収だが、原材料・物流コスト高騰の影響により減益となった。なお地域別の需要動向を見ると、インドネシアやタイではグラビアインキの拡販が進展して好調となった。インドはコロナ禍の影響で落ち込んでいた新聞用インキの需要が徐々に回復しており、パッケージ印刷用インキは順調な推移となっている。中国は第3四半期に一時的に伸び悩む局面があったが、通期ベースでは拡販が進展した。
(3) 印刷インキ(米州)
印刷インキ(米州)は売上高が前期比10.9%増の54,930百万円、営業利益が同50.4%減の1,464百万円となった。売上面は、環境配慮型製品を中心とするパッケージ関連(軟包材用フレキソ・グラビアインキ、紙器用途UVオフセットインキ)の拡販で数量が増加した。環境負荷軽減を背景とするアルミ缶需要の高まりで缶用メタルインキも好調に推移した。全体として2ケタ増収となったが、利益面では、数量増加、製品ミックス改善、販売価格改定などがプラス要因となったものの、第3四半期以降に原材料価格高騰が急激に進行し、港湾物流混乱に伴う物流コスト高騰や人件費の上昇なども影響して大幅減益となった。
(4) 印刷インキ(欧州)
印刷インキ(欧州)は売上高が前期比56.7%増の15,929百万円、営業利益が188百万円の損失(2020年12月期は432百万円の損失)となった。売上面は、環境配慮型製品を中心とするパッケージ関連(軟包材用フレキソ・グラビアインキ、紙器用途UVオフセットインキ、缶用メタルインキ)の拡販効果に加えて、ドイツのRUCOの新規連結も寄与して大幅増収となった。利益面では、原材料価格高騰の影響を受けたものの、数量増効果に加えて、構造改革効果(生産体制再構築による生産能力増強、コスト削減)で営業損失が縮小した。
(5) 機能性材料
機能性材料は売上高が前期比21.0%増の14,328百万円、営業利益が同245.9%増の1,901百万円となった。2020年12月期はコロナ禍の影響により大きく落ち込んだが、経済活動再開に伴って海外を中心に需要が回復基調となり、売上高、営業損益とも回復基調となった。インクジェットインキ、カラーフィルター用顔料分散液、トナーの販売数量が増加し、利益面では数量増効果に加えて、欧米事業におけるコスト体質改善(高付加価値製品拡販など)や在庫評価減の一巡、さらに原材料・物流コスト高騰の影響が想定より遅れたことも影響した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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