米10年債入札が強くドル円は110.30円近辺まで下落=NY為替後半

著者:MINKABU PRESS
投稿:2021/08/12 04:38
 NY時間の終盤に入ってドル円は下げが一服しているものの、110.45円付近での推移。米10年債入札が強い入札となったことから、利回り低下とともにドル円も一時110.30円近辺まで値を落とす場面がみられた。

 きょうのNY為替市場、ドル円は6日ぶりに反落。ロンドン時間には110.80円近辺まで上昇し、111円台をうかがう動きも見せていたが、この日発表の米消費者物価指数(CPI)がインフレ上昇の鈍化を示したことから、ドルは戻り売りに押されドル円も伸び悩んだ。

 米CPIは概ね予想通りではあったものの、前月比で0.5%上昇、コア指数で0.3%上昇と前回から伸びは鈍化した。市場では先週の米雇用統計で早期の資産購入ペース縮小への期待が高まっている。今回の米CPIがその期待を後退させたとは思われないが、先週からドルは買いが続いていただけに、この日のCPIをきっかけに上げ一服となっているものと思われる。

 ただ、市場のドル高への期待は高い。米上院はきのう、新規支出5500億ドルを含む1兆ドル規模の超党派のインフラ支出法案を可決した。また、社会福祉や気候変動対策に総額3.5兆ドルを投資する予算決議案も現地時間の11日午前4時(日本時間午後3時)前に賛成50、反対49で承認された。市場からは全体的により緩い財政政策が力強い米経済の回復を支援する上で重要でドルを支援するとの見解も聞かれる。

 民主党内の穏健派から革新派まで全員が合意できる具体的な財政支出案を作成する必要がある。上院の議席は与野党50ずつで、1人でも離反者が出れば単純過半数に届かない。財源には富裕層への増税などが検討されているが、穏健派からはコストを問題視する声も強く、成立までには数カ月に及ぶことも予想されている。

 ユーロドルは下げ渋る動き。ロンドン時間に1.17ドル割れを試す動きも見られていたが、いまのところは維持されている。ただ、FRBとECBの金融政策スタンスの格差からユーロドルはしばらく下値模索が続くとの見方は依然として根強い。FRBとは対称的に一部からは、ECBは9月の理事会で債券購入を増額してくる可能性があるとの見方も出ている。

 先月ECBは戦略見直しを発表し、インフレ目標の新たなフレームワークを公表したが、ECBはそれに基づく調整に時間を無駄に費やすことはないという。7月22日の理事会で金利のガイダンスを変更しているが、それと伴にECBは9月の理事会で債券購入額の増額を発表するという。期間は1年間で購入額は月額250億ユーロ増加させると見ているようだ。前半はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を利用して行われ、後半は従来の資産購入プログラム(APP)を利用して行われるという。一部の理事からはインフレ上昇を懸念したタカ派な主張も出ているが、足元のインフレおよびインフレ期待、そして、賃金の根底にある指標はすべて、長期に渡って本来あるべき位置を遥かに下回っているとしている。

 ポンドドルも買い戻しが優勢。ロンドン時間には1.38ドルちょうど付近まで下落する場面が見られ、本日1.3835ドル付近に来ている21日線を下割る場面がみられたものの、その水準は維持されている格好。ただ、ポンドは対ドルでは軟調な動きが続いているものの、対ユーロでは上昇が続いており底堅さも示している。英国ではデルタ株の感染再拡大が一服しており、7月下旬には制限措置も全面的に解除になっている。それに伴い景気回復への期待とともに、英中銀の量的緩和(QE)終了への期待も高まっていることが、ポンドをサポートしている。

 明日は4-6月期と6月のGDP速報値が発表される。エコノミストの一部からは予想を下回るのではとの見方も出ているようだが、予想を上回る内容であれば、英中銀の出口戦略への期待が正当化され、ポンド買いに繋がるとの見方もあるようだ。明日の日本時間15時に発表予定。

MINKABU PRESS編集部 野沢卓美

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