波乱相場のリベンジなるか、直近IPOと7月上場銘柄の投資妙味度 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2021/07/05 19:30

―6月不振も割安株に見直し機運、今月は9社登場で上場ペースは落ち着く―

 波乱状態となった6月IPO(新規株式公開)が終わり、今週から7月IPOが始まる。先月は22社が登場したが、約半年ぶりに初値が公開価格を下回る銘柄が複数発生するなど冴えない動きとなった。全体相場が方向感に欠ける展開となるなか、中小型株の上値は重く、IPO物色も勢いに欠ける状況となった。ただ、足もとではそんな状況にも変化がみえ始め、6月上場の 直近IPO銘柄の一角には割安株物色で急伸する動きが出ている。また、7月IPOは資金吸収額が小さい銘柄が少なくなく、堅調な展開も期待されている。果たして、6月相場のリベンジはなるか。

●6月IPOは不振、公開価格割れが4銘柄発生

 6月は22社が株式上場を果たした。6月としては異例の大量IPOとなったが、全体相場は上値の重い展開が続くなか、市場では「季節外れのIPOラッシュで荷もたれ感が出ないか」(アナリスト)が警戒されていた。

 実際のところ、蓋を開ければデコルテ・ホールディングス <7372> [東証M]やペイロール <4489> [東証M]、ドリームベッド <7791> [東証2]、アルマード <4932> [JQ]の4銘柄の初値は公開価格を下回った。IPO銘柄の公開価格割れは、昨年12月のポピンズホールディングス <7358> 以来、約半年ぶりのことだ。資金調達金額が大きかったり、ファンドによる売り出しが目立ったりするような銘柄が軟調となった。また、先月下旬以降には同日に4銘柄が上場する日があるなど、過密日程のなか物色の回転は効かず、6月IPOは昨年春に続く波乱展開となった。

●日本電解やアイドマHDなど直近IPOに物色人気も

 一方で、上場後のセカンダリー(流通)市場では6月の直近IPO銘柄を拾う動きも強まり始めている。日本電解 <5759> [東証M]は先月25日に東証マザーズに新規上場し、初値は公開価格と同値だったが、その後、株価は急騰し5日終値時点で公開価格から約2.2倍に上昇。アイドマ・ホールディングス <7373> [東証M]やコンフィデンス <7374> [東証M]、ステムセル研究所 <7096> [東証M]、Enjin <7370> [東証M]といった直近IPO銘柄にも物色の矛先は向かっている。6月IPOは初値で値を飛ばした銘柄は限られただけに、「全体的に割安に放置されていた銘柄は少なくなく、いったん動き出せば買い人気は膨らむ」(市場関係者)状態にある。

 足もとではアルマードやテンダ <4198> [JQ]、ベイシス <4068> [東証M]、全研本社 <7371> [東証M]、あるいは4月上場のオキサイド <6521> [東証M]やアイスコ <7698> [JQ]なども強含みの動きとなっている。ただ、直近IPO銘柄の物色の裾野が一段と広がるか、どうかは「今後の相場の地合い次第」(アナリスト)ともみられている。

●7月IPOは銘柄ごとのパフォーマンスに差も

 そんななか、7月は9社がIPOを実施する。東証マザーズが7社、東証2部が1社、ジャスダックが1社といった内訳だ。例年夏場はIPOの端境期となり、7月は19年が5社、20年は7社にとどまった。今年は依然として高水準だが、6月に比べれば落ち着いたペースとなる。「大型の資金調達を実施する企業は6月に比べ多くない」(アナリスト)ことも安心感につながる。ただ、ファンドによる売り出しが大きい銘柄もあり、株価のパフォーマンスには差が出そうだ。

 7月の先頭を飾るのは6日に東証マザーズに新規上場するBCC <7376> [東証M]だ。同社は大手IT企業の営業支援サービスとヘルスケアビジネスなどを手掛けている。市場の関心を集めているのは、資金吸収額は4億円弱、上場時の時価総額は13億円強という軽量銘柄であることだ。市場関係者からは「初値は飛ぶ展開が予想される」との見方が出ている。続いて8日にはコラントッテ <7792> [東証M]が上場する。同社は、磁気ネックレスを主力とした医療機器の製造・販売を手掛ける。男子フィギュアスケートの宇野昌磨選手などが愛用していることでも知られる。資金吸収額は27億円強。

 16日のラキール <4074> [東証M]は企業向けシステム開発などを手掛け、デジタルプラットフォーム「LaKeel DX」を提供している。デジタルトランスフォーメーション(DX)関連で時流に乗り、仮条件価格から弾いた資金吸収額は20億円前後だ。20日のアシロ <7378> [東証M]は、ITと弁護士業界を結びつけたリーガルメディアサイトを運営している。資金吸収額は50億円強と、やや大きめでファンドの売り出しが多い点は警戒要因ともみられている。

●ブレインズTには期待、AIメカテクには警戒感も

 7月下旬以降のIPOでは、21日のランドネット <2991> [JQ]や28日のブレインズテクノロジー <4075> [東証M]、29日のデリバリーコンサルティング <9240> [東証M]の資金吸収額は10億円台が見込まれ小さい。ランドネットはジャスダックへの上場で、中古不動産の買い取り販売やリノベーションなどを展開している。ブレインズTは人工知能(AI)を用いた「異常検知ソリューション」などを展開し、AI関連で時流に乗る銘柄としても注目されている。デリバリコンはテクノロジーコンサルティングを展開している。27日に登場するサーキュレーション <7379> [東証M]は、プロ人材の経験・知見を活用する「プロシェアリングコンサルティング」を手掛ける。想定される資金吸収額は40億円台だ。

 また30日に東証2部に上場するAIメカテック <6227> [東証2]は、半導体パッケージ製造装置や有機ELパネル製造装置などを手掛けている。半導体関連株として注目されているが、想定発行価格から弾いた資金吸収額は70億円台とやや大きく、公募はなく投資ファンドによる売り出しのみの案件であることは警戒要因とみられている。

株探ニュース
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