クロスマーケ Research Memo(4):下期に入って業績が急速に回復

配信元:フィスコ
投稿:2021/03/26 15:14
■業績動向

1. 2020年12月期の業績動向
クロス・マーケティンググループ<3675>の2020年12月期の業績は、売上高15,985百万円(前期比14.0%減)、営業利益986百万円(同22.2%減)、経常利益1,078百万円(同6.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益467百万円(前期は477百万円の損失)となった。国内経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、それに伴って4月~5月に発令された緊急事態宣言などにより大きな落ち込みとなったが、緊急事態宣言解除後は徐々に再開していった。しかし、その後も新型コロナウイルス感染症の再拡大や収束時期が不透明なことから、多くの企業では依然厳しい状況が続いている。また、世界経済についても、一部地域で経済活動が再開されたものの、主要都市の多くで活動が大幅に制限された状態が継続、国内以上に厳しい経済環境の地域もあった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が大幅増益になったのは、海外子会社Kadenceグループのうち、収益見通しが悪化したUK、USA、Indonesia、Singaporeの各社について、2019年12月期にのれん・固定資産の減損損失を計上した反動による。

同社の収益構造は、12月の利益が大きくなるという季節性がある。2020年12月期に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業で収益見通しが立たず、期初の業績予想を未定としたところが多かった。同社も同様だが、季節性により期末12月の利益額を予想することが特に難しかったため、予想を未定とせざるを得なかった。しかし、企業各社が感染予防の対策に万全を期したこと、企業が予算執行をコロナ禍以前に戻しつつあること、同社の取引がそうした企業を相手にしていることから、第3四半期以降、11月の感染再拡大時期も含めて、同社の売上高は通常のペースに近づいていった。加えて、構造改革によって海外事業の固定費が減っていること、リモートワークにより国内の販管費が抑制されたことなどもあり、2020年12月期下期の営業利益は前下期並みにまで回復、補助金収入の発生や持分法による投資損失の縮小もあって経常利益は増益に転じることとなった。


第4四半期単体では各セグメントの売上高が回復
2. 2020年12月期のセグメント別業績動向
2020年12月期のセグメント別業績は、リサーチ事業が売上高11,970百万円(前期比17.8%減)、営業利益2,039百万円(同9.3%減)、ITソリューション事業が売上高3,241百万円(同1.3%減)、営業利益194百万円(同29.1%減)、その他の事業が売上高773百万円(同4.3%増)、営業利益103百万円(同2.3%減)と結果的に厳しい状況であったが、第3四半期以降は業況が回復していった。

リサーチ事業は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、第2四半期を中心に顧客企業の事業活動が制限され、オフライン調査を中心に調査案件数が大幅に減少し、減収減益となった。しかし、緊急事態宣言解除後、第3四半期以降は徐々に回復、メディカルや覆面調査については通期で前年を上回る堅調な推移となり、第4四半期には売上高が前年同四半期比6%減にまで回復した。海外は2019年12月期第4四半期の大型案件計上の反動はあるものの、構造改革などで固定費を削減してきたため、第4四半期単独で営業利益は黒字を確保した模様である。ITソリューション事業は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による受注活動の制限や低採算の大型案件へのリソース集中によりやや厳しい状況が続いていたが、第3四半期以降は案件受注が堅調に推移、第4四半期には売上高が前年同四半期比8%増と回復した。なお、IT系人材派遣は、登録者数の増加により増収増益となった。その他の事業(プロモーション事業)は、グループ内の連携や外部企業との提携を進めるとともに営業体制を強化、新型コロナウイルス感染症の影響により顧客のネットシフトが加速したこともあって、第4四半期は前年同四半期比22%の大幅増収と四半期別では最高の売上高を確保した。このため、短期的な広告市場の過熱により媒体価格(原価)が上昇したものの、利益は前年並みをキープすることができた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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