■決算動向
1. 2020年9月期第3四半期決算の概要
イグニス<3689>の2020年9月期第3四半期(累計)の業績は、売上高が前年同期比4.0%増の4,224百万円、営業損失が32百万円(前年同期は723百万円の損失)、経常損失が284百万円(同807百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が598百万円(同358百万円の損失)と増収となり、損失幅が縮小した。
売上高は、引き続き『with』を主力とする「マッチング事業」の伸びが増収に大きく寄与したものの、2020年3月2日に「ゲーム事業」における主力タイトルを譲渡した影響により増収率は前年同期比4.0%増にとどまった。また、「エンターテック事業」も順調に伸びているが、コロナ禍に伴うイベント中止や延期等により自社のIP展開においては当初見込んでいた成長スピードの実現が難しかったようだ。もっとも、業績への影響は軽微と言える。
損益面でも、『with』(マッチング事業)の伸びが損益改善に寄与した。ただ、黒字化に至らなかったのは、第2四半期まで利益貢献してきた『ぼくとドラゴン』(ゲーム事業)の譲渡や「エンターテック事業」への先行投資などが理由である。
財務面では、「ゲーム事業」の譲渡に伴って固定資産(ソフトウェア等)が減少したものの、長期借入金※1や新株予約権が行使※2されたことなどにより「現金及び預金」が大幅に増加した結果、総資産は前期末比29.8%増の5,136百万円に拡大した。一方、自己資本も新株予約権の行使等により前期末比35.5%増の3,048百万円に拡大したことから、自己資本比率は59.3%(前期末は56.9%)に改善。それに伴ってGC注記の記載も解消している。なお、医療機関向けSaaS『FOREST』にかかる営業貸付金(約12億円)の存在が気になるものの、保守的な会計方針に従って、既に相応の貸倒引当金が計上済であることから、仮に回収不能となったとしても損益への影響は限定的である。
※1 2019年11月26日に同社代表取締役2名から合計5億円の借入を締結。「エンターテック事業」への投資などを予定している。
※2 2020年5月13日に第14回新株予約権(2018年3月22日発行分)の8,750個(875,000株の新株発行)が行使され、約13億円の資金調達を実現した(本件により行使がすべて完了)。
2. 事業別の業績及び活動実績
(1) マッチング事業
売上高は前年同期比43.4%増の3,030百万円、営業利益が同82.9%増の906百万円と大きく拡大した。第3四半期会計期間(4月−6月)だけで見ると、売上高は第2四半期比8.6%増の1,110百万円と順調に伸び続けている。一方、営業利益は同13.3%減の288百万円と広告費増額により一時的に減少したものの、高い利益水準を維持しているとの見方が妥当だろう。注力する『with』が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学・統計学を生かした最適なマッチング機能による差別化や効果的なプロモーション展開等)により好調に推移。2020年6月末の会員数は320万人を突破し、SNSカテゴリの売上ランキングでも5位以内にランクインしている。広告費回収効率を示すKPI※が高い水準にあるなかで、広告費を増やしたことも会員数の伸びに寄与したと考えられる。損益面でも、積極的なプロモーションや機能強化に向けた広告費用を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、営業利益率は29.9%(前年同期は23.4%)と売上高に連動して大きく改善し、収益の柱に成長している。
※同社の管理指標によると、十分な利益を確保できる回収効率を基準値(=1)とした場合、第2四半期(1月−3月)は1.63に達するとともに、直近の第3四半期(4月−6月)においても広告費を増やしたにもかかわらず1.36の水準を維持している。すなわち、広告費の投入に対して会員獲得ペース(回収スピード)は高水準を維持しており、まだまだペースアップできる状態にあると言える。
(2) エンターテック事業
売上高は前年同期比336.3%増の241百万円、営業損失は1,136百万円(前年同期は945百万円の損失)と大きく伸びたものの損失幅は拡大した。第3四半期(4月−6月)だけで見ても、売上高は第2四半期比17.7%増の93百万円と伸びているが、営業損失は430百万円(第2四半期は384百万円の損失)と先行投資の状態が継続している。VRアイドル『えのぐ』に加え、所属タレント『VOYZ BOY』及び『学芸大青春』による定期イベントやファンミーティング、グッズ販売等が業績の伸びをけん引している。コロナ禍の影響を受けた第3四半期(4月−6月)においても、『VOYZ BOY』のCD発売等により業績の伸びをカバーすることができた。自社関連IPのSNS等累計フォロワー数も、コロナ禍により一時的に成長が鈍化したものの、2020年7月末には618,000(2020年4月末比5%増)を突破している。
(3) ゲーム事業
売上高は前年同期比50.9%減の883百万円、営業利益は同164.9%増の298百万円と減収ながら増益となっている。ただ、2020年3月2日付で『ぼくとドラゴン』と『猫とドラゴン』の2タイトルに係る事業をドリコムへ譲渡したことにより、第3四半期(4月−6月)への業績寄与はほぼない。
(4) その他
売上高は前年同期比26.2%減の69百万円、営業損失は100百万円(前年同期は385百万円の損失)と減収ながら損失幅は縮小した。求人サービスなどが売上寄与する一方、医療機関向けSaaS等は先行投資が継続している。なお、第3四半期(4月−6月)における『FOREST』導入医療機関のオンライン診療利用患者数は12,034名(第2四半期比90.1%増)となっており、規制緩和※やコロナ禍の影響(院内感染への懸念等)により急拡大している。
※時限的措置で初診からのオンライン診療が2020年4月に解禁された。
■トピックス
2020年9月26日と27日には、かねてより大きな注目を集めていたバーチャルライブ「初音ミク GALAXY LIVE 2020」を『NSPIX LIVE』上で開催するに至った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 2020年9月期第3四半期決算の概要
イグニス<3689>の2020年9月期第3四半期(累計)の業績は、売上高が前年同期比4.0%増の4,224百万円、営業損失が32百万円(前年同期は723百万円の損失)、経常損失が284百万円(同807百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が598百万円(同358百万円の損失)と増収となり、損失幅が縮小した。
売上高は、引き続き『with』を主力とする「マッチング事業」の伸びが増収に大きく寄与したものの、2020年3月2日に「ゲーム事業」における主力タイトルを譲渡した影響により増収率は前年同期比4.0%増にとどまった。また、「エンターテック事業」も順調に伸びているが、コロナ禍に伴うイベント中止や延期等により自社のIP展開においては当初見込んでいた成長スピードの実現が難しかったようだ。もっとも、業績への影響は軽微と言える。
損益面でも、『with』(マッチング事業)の伸びが損益改善に寄与した。ただ、黒字化に至らなかったのは、第2四半期まで利益貢献してきた『ぼくとドラゴン』(ゲーム事業)の譲渡や「エンターテック事業」への先行投資などが理由である。
財務面では、「ゲーム事業」の譲渡に伴って固定資産(ソフトウェア等)が減少したものの、長期借入金※1や新株予約権が行使※2されたことなどにより「現金及び預金」が大幅に増加した結果、総資産は前期末比29.8%増の5,136百万円に拡大した。一方、自己資本も新株予約権の行使等により前期末比35.5%増の3,048百万円に拡大したことから、自己資本比率は59.3%(前期末は56.9%)に改善。それに伴ってGC注記の記載も解消している。なお、医療機関向けSaaS『FOREST』にかかる営業貸付金(約12億円)の存在が気になるものの、保守的な会計方針に従って、既に相応の貸倒引当金が計上済であることから、仮に回収不能となったとしても損益への影響は限定的である。
※1 2019年11月26日に同社代表取締役2名から合計5億円の借入を締結。「エンターテック事業」への投資などを予定している。
※2 2020年5月13日に第14回新株予約権(2018年3月22日発行分)の8,750個(875,000株の新株発行)が行使され、約13億円の資金調達を実現した(本件により行使がすべて完了)。
2. 事業別の業績及び活動実績
(1) マッチング事業
売上高は前年同期比43.4%増の3,030百万円、営業利益が同82.9%増の906百万円と大きく拡大した。第3四半期会計期間(4月−6月)だけで見ると、売上高は第2四半期比8.6%増の1,110百万円と順調に伸び続けている。一方、営業利益は同13.3%減の288百万円と広告費増額により一時的に減少したものの、高い利益水準を維持しているとの見方が妥当だろう。注力する『with』が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学・統計学を生かした最適なマッチング機能による差別化や効果的なプロモーション展開等)により好調に推移。2020年6月末の会員数は320万人を突破し、SNSカテゴリの売上ランキングでも5位以内にランクインしている。広告費回収効率を示すKPI※が高い水準にあるなかで、広告費を増やしたことも会員数の伸びに寄与したと考えられる。損益面でも、積極的なプロモーションや機能強化に向けた広告費用を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、営業利益率は29.9%(前年同期は23.4%)と売上高に連動して大きく改善し、収益の柱に成長している。
※同社の管理指標によると、十分な利益を確保できる回収効率を基準値(=1)とした場合、第2四半期(1月−3月)は1.63に達するとともに、直近の第3四半期(4月−6月)においても広告費を増やしたにもかかわらず1.36の水準を維持している。すなわち、広告費の投入に対して会員獲得ペース(回収スピード)は高水準を維持しており、まだまだペースアップできる状態にあると言える。
(2) エンターテック事業
売上高は前年同期比336.3%増の241百万円、営業損失は1,136百万円(前年同期は945百万円の損失)と大きく伸びたものの損失幅は拡大した。第3四半期(4月−6月)だけで見ても、売上高は第2四半期比17.7%増の93百万円と伸びているが、営業損失は430百万円(第2四半期は384百万円の損失)と先行投資の状態が継続している。VRアイドル『えのぐ』に加え、所属タレント『VOYZ BOY』及び『学芸大青春』による定期イベントやファンミーティング、グッズ販売等が業績の伸びをけん引している。コロナ禍の影響を受けた第3四半期(4月−6月)においても、『VOYZ BOY』のCD発売等により業績の伸びをカバーすることができた。自社関連IPのSNS等累計フォロワー数も、コロナ禍により一時的に成長が鈍化したものの、2020年7月末には618,000(2020年4月末比5%増)を突破している。
(3) ゲーム事業
売上高は前年同期比50.9%減の883百万円、営業利益は同164.9%増の298百万円と減収ながら増益となっている。ただ、2020年3月2日付で『ぼくとドラゴン』と『猫とドラゴン』の2タイトルに係る事業をドリコムへ譲渡したことにより、第3四半期(4月−6月)への業績寄与はほぼない。
(4) その他
売上高は前年同期比26.2%減の69百万円、営業損失は100百万円(前年同期は385百万円の損失)と減収ながら損失幅は縮小した。求人サービスなどが売上寄与する一方、医療機関向けSaaS等は先行投資が継続している。なお、第3四半期(4月−6月)における『FOREST』導入医療機関のオンライン診療利用患者数は12,034名(第2四半期比90.1%増)となっており、規制緩和※やコロナ禍の影響(院内感染への懸念等)により急拡大している。
※時限的措置で初診からのオンライン診療が2020年4月に解禁された。
■トピックス
2020年9月26日と27日には、かねてより大きな注目を集めていたバーチャルライブ「初音ミク GALAXY LIVE 2020」を『NSPIX LIVE』上で開催するに至った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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