アライドアーキ Research Memo(2):事業戦略やマーケットに合わせて事業ドメインを再定義(1)

配信元:フィスコ
投稿:2019/04/25 15:02
■会社概要

1. 事業概要
アライドアーキテクツ<6081>は、「ソーシャルテクノロジーで、世界中の人と企業をつなぐ」というミッションのもと、企業がFacebookやTwitter、Instagram、LINEなどのSNSを効果的にマーケティング活用するための様々なSaaS※1及びソリューションを提供する国内最大級のSNSマーケティング会社である。また、中国を中心とする越境EC市場やインバウンド市場に向けたSNSプロモーション支援のほか、世界中の広告クリエイターからの質の高い広告クリエイティブ(広告素材)を短時間で提供するグローバルプラットフォーム「CREADITS®(クレディッツ)」※2にも注力している。

※1 SaaSとは、ソフトウェアをネットワーク経由で必要な分だけ提供するサービス形態のこと。同社においては原則として月額契約(サブスクリプションモデル)のプロダクトを示す。
※2 旧「ReFUEL4®(リフュールフォー)」。提供価値やビジネスモデルの見直しに伴い、サービス名を変更。


同社のサービスは、市場が拡大しているSNS領域に特化し深掘りすることにより、専門性と独自性を兼ね備えたサービスをワンストップで提供してきたことが、同社の強みの源泉となってきた。また、最近では、企業のマーケティングが「マスベース」から「ファンベース」へと大きく変化する方向にあるなかで、提供価値を再定義するとともに、新たに「ファン・リレーションシップ・デザイン」構想を発表。これまでのようなSNS領域のみならず、リアルな場所を含めた生活者との接点を通じて、企業のビジネス成長に必要な「ファン」との最適な関係構築を支援する方向性を打ち出している。サービス進化と市場ニーズの拡大が同時進行しており、SNSマーケティングの黎明期からファンづくりを支援し、アセット※を積み上げてきた同社にとっては、いよいよ成長加速に向けた新たな局面を迎えていると言えるだろう。

※2018年6月末時点。企業のファン総数(1,910万人以上)、UGC(User Generated Contents: ユーザー生成コンテンツ)生成数(1,432万件以上)、累計クライアント数(5,000社以上)など。


事業セグメントは、ソーシャルメディアマーケティング支援を主な事業とする単一セグメントであるが、サービス別に3つに分類している。市場環境の変化とそれに伴う事業戦略の方向性に合わせ、事業ドメインを再定義するとともに、事業名称も変更。主力の「ファンリレーションシップデザイン事業」のほか、「越境・インバウンドプロモーション事業」(旧越境プロモーション事業)、シンガポールの海外子会社Creadits Pte. Ltd.※(以下、Creadits)による「クリエイティブプラットフォーム事業」(旧クリエイティブテック事業)となっている。

※2018年6月に、サービス名の変更に伴い「ReFUEL4 Pte. LTD.」から「Creadits Pte. Ltd.」に商号変更した。


各事業の概要は以下のとおりである。

(1) ファンリレーションシップデザイン事業
自社開発の多様なマーケティングプラットフォームの運営など、様々なSaaSプロダクトやソリューションを通じて、企業のSNSマーケティングやプロモーションを行ってきたが、2018年7月には、市場ニーズの変化に合わせて、新たに「ファン・リレーションシップ・デザイン」構想を発表。今後は、サービス領域を「SNSマーケティング」「ファンマーケティング」「UGC※1マーケティング」の3つの領域に位置付け、SNS領域のみならず、「人を軸とした新しいマーケティングインフラの提供」※2(企業とファンとの最適な関係構築を実現)を目指す方向性である。

※1 ウェブサイトのユーザーによって生成・政策されたコンテンツ(User Generated Content)の総称。
※2 企業のファンを可視化し、ファンとの関係を深め、ファンが新しいファンを呼ぶような循環を生む、「ファンベース」を基盤とした新しいマーケティング支援。


例えば、主力サービスである「モニプラ」では、各種キャンペーンの開催のほか、ファンサイト作成※1や効果分析※2などを行うことができる。顧客企業にとっては、1)キャンペーン等への効率的な集客のほか、2)商品モニターやアンケートをはじめ、フォトコンテストや懸賞・人気投票など、様々なキャンペーンを手軽かつ低コストで開催できることや、3)会員ユーザーとの交流を通じた自然な形でのクチコミの醸成(及び消費者への拡散)による認知度向上などにメリットがある。また、そこで蓄積されたSNSデータをデータマネジメント(CRMや需要調査、商品開発など)や精度の高いSNS広告に活用することも可能となっている。

※1 「モニプラ」上に作成される顧客企業専用のページであり、キャンペーンに参加した会員ユーザーデータが蓄積される仕組みとなっている。
※2 「モニプラ」管理画面より、キャンペーンに参加した会員ユーザーの状況やページビュー数、コメント、参加時間等のデータを分析するツールを利用できる。


すなわち、SNSマーケティング事業(特に、SNS広告)を展開している同業他社は多数存在するものの、「広告」「運用」「インフルエンサー」「キャンペーン」「データ」「CRM」「コンサル」「制作」など、主要な全領域を業務範囲とすることにより、様々なSaaSとソリューションの組み合わせによる独自の価値提供に優位性があると言える。

一方、会員ユーザーにとっても、ワンストップで複数企業のキャンペーンにアクセスすることができ、その中から好みのキャンペーンに無料で参加し、商品等を入手したり、企業に対して商品等の感想や要望を発信するといった交流を図ることができるところにインセンティブがある。同社は上記サービスを、FacebookやTwitter、Instagram、LINE等の主要な各SNSとの連携によってSNSユーザーに展開しており、登録ユーザー総数は600万人を突破するとともに、累計クライアント数も5,000社以上に上る。

(2) 越境・インバウンドプロモーション事業
中国を中心とする越境EC市場や急激に拡大するインバウンド市場に向けて、SNSを活用したプロモーションの支援を行う事業である。2016年8月に中国最大規模のSNS「Weibo」の公式マーケティング会社北京天下秀科技有限公司(IMS)と提携し、「Weibo」の公認サービス「WEIQ」※1の日本における独占販売契約を締結すると、中国向けの動画インフルエンサーマーケティング事業を行う合弁会社Vstar Japan(株)※2を設立した。本格的な業績貢献にはある程度の時間を要するものと見られるが、2017年における中国のEC市場は約200兆円と世界最大級の規模を誇るうえ、日本からの越境EC市場も1兆円規模と拡大基調にある。中国ではSNS利用者が多く、影響力も大きいことから、SNSを活用したプロモーションのポテンシャルは非常に大きい。

※1 「Weibo」や「WeChat」上のインフルエンサーを活用した中国向けコンテンツ拡散支援サービスである。約80万人のインフルエンサーが登録する中国最大級のインフルエンサーネットワークの活用が可能となっている。
※2 中国に向けた動画インフルエンサーを活用したプロモーション事業の日本国内における販売などを目的としている。


(3) クリエイティブプラットフォーム事業
2014年3月に設立した海外子会社Creaditsが広告クリエイティブに特化したグローバルプラットフォーム「CREADITS®」(旧「ReFUEL4®」)を展開している。「CREADITS®」は、契約プラン(月額固定料金)に応じて付与される購入権チケット「CREADITS」と引き換えに、世界中の広告クリエイター(100ヶ国1万人超)からの質の高い広告クリエイティブを短時間で利用できるシェアリングエコノミー型のプラットフォームとなっている。また、独自開発の人工知能(AI)の活用により、より効果的なクリエイティブの提供をサポートする機能が組み込まれている。GoogleやFacebookなどのプラットフォームにとってはメディア収益の最大化、広告主にとっては広告効果の最大化、広告クリエイターにとっては生産性の最大化(及びビジネス機会の獲得)を実現することから、すべてのプレーヤーに対して価値提供が可能となっている。2016年10月には、Facebook,Inc. が年間で最も革新的なマーケティングサービス/ テクノロジーを選出し表彰する「Facebook Innovator of the Year 2016」を受賞している。サービス提供を開始して以来、より完成度を高めるための先行投資や試行錯誤を繰り返してきたが、2018年6月に現在の新モデルをリリース。まだ売上規模は小さいものの、SaaS型プラットフォーム(サブスクリプションモデル)として順調に伸びている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


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