豪ドル
RBA(豪中銀)が4月2日に政策金利を発表します。政策金利は現行の1.50%に据え置かれるとみられますが、声明の内容が豪ドルの動向に影響を与える可能性があります。
RBAは“次の政策変更は、利上げと利下げのいずれもあり得る”とし、金融政策について中立的なスタンスを示しています。4月2日の声明は、政策スタンスが“緩和方向”へとシフトしつつあることが示唆される可能性があります。米FRBやECB(欧州中銀)、BOC(カナダ中銀)などがハト派色を強めているほか、同じオセアニアの中銀であるRBNZ(NZ中銀)に至っては利下げの可能性まで示しました。こうした状況のなかで、RBAがこれまでのスタンスを維持すれば、豪ドルに対して上昇圧力が加わる可能性があるためです。
RBAの政策スタンスが“緩和方向”へシフトした場合、豪ドルは上値が重い展開になりそうです。一方、“中立”的な政策スタンスが維持されれば、豪ドルは堅調に推移する可能性があります。ただし、中立的なスタンスが維持されたとしても、市場ではRBAの利下げ観測は残存するとみられます。そのため、豪経済指標の弱い結果が続けば、豪ドルの堅調さは長続きしないかもしれません。
4月に発表される豪主要経済指標は、2月住宅建設許可件数(2日)、2月小売売上高(3日)、4月ウエストパック消費者信頼感指数(10日)、3月雇用統計(18日)です。
豪ドルは、投資家のリスク意識の変化(リスクオン/リスクオフ)に反応しやすいという特徴があります。主要国の株価動向や米中通商協議に関する報道にも注意が必要です。
NZドル
RBNZ(NZ中銀)は3月27日、政策金利を過去最低の1.75%に据え置きました。据え置きは16会合連続です。
RBNZは今回、金融政策スタンスを“中立(利上げと利下げの両にらみ)”から“緩和方向”へとシフトしました。声明では、「世界経済の見通しの弱まりや国内支出の失速を踏まえると、政策金利の次の方向性は下向きの可能性が高い」と表明。利下げを示唆しました。2月13日の前回会合時は「政策金利の次の方向性は、上向きか下向きの可能性がある」でした。また、「政策金利を2019年から2020年にかけて現在の水準に維持すると予想する」との文言も今回削除されました。
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このところ、主要先進国中銀は相次いで金融政策スタンスをハト派方向にシフトしています。ただ、その中でも、次の政策変更について“利下げのみ”に言及したRBNZのハト派色の強さは際立っているように見えます。RBA(豪中銀)も金融政策スタンスをシフトしましたが、それでも「利上げと利下げの可能性は均衡」です(以前は「利上げの可能性が高い」でした)。
市場では、RBNZの早期利下げ観測が浮上しており、一部には5月にも利下げが行われるとの観測もあります。利下げ観測を背景に、NZドルは当面、上値が重い展開になりそうです。
NZの1-3月期CPI(消費者物価指数)が4月17日に発表されます。CPIがRBNZの2月時点の見通しである前期比+0.2%、前年比+1.6%を大きく下ブレする結果になれば、早期利下げ観測は一段と高まる可能性があります。
カナダドル
BOC(カナダ中銀)は3月6日に政策金利を1.75%に据え置きましたが、フォワードガイダンス(金融政策の方向性をあらかじめ示したもの)を以下のように修正しました。
<これまで>
・「インフレ目標を達成するため、政策金利を時間をかけて中立レンジまで引き上げる必要がある」
<3月>
・「見通しは引き続き中立レンジを下回る政策金利を正当化する」
3月の声明では、BOCの利上げバイアスが後退し、金融政策スタンスが“より”中立”的なものへとシフトしたことが示されました。その一方で、声明は「将来の“利上げ”時期についての不確実性が高まった」と利上げに言及する一方、利下げへの言及はなく、次の政策変更は利上げとBOCが見ていることも示唆されました。
BOCの次回政策会合は4月24日。それまでBOCの金融政策の先行きについて、市場の見方が大きく変化することはなさそうです。主要国中銀が利上げから遠ざかるなか、BOCが利上げの可能性を残していることは、カナダドルの下支え要因となりそうです。また、原油価格(米WTI先物)が高止まりしていることもプラス材料です。カナダドルは当面、底堅い展開になりそうです。
トルコリラ
3月31日(日)にトルコの統一地方選が行われます。選挙の大勢は、日本時間4月1日の早朝にも判明する可能性があります。
統一地方選では、イスタンブール、アンカラ、イズミルの三大都市の市長選が特に注目されており、それらの結果が地方選における勝敗の重要な判断材料になるとみられます。
市場は、AKPが地方選に敗れた場合に、エルドアン大統領がバラマキ的な政策の強化やTCMB(トルコ中銀)に対する利下げ圧力の増大へと動くことを懸念しています。上述した三大都市(特にイスタンブールやアンカラ)の市長選でいずれか1つでも敗れれば、市場は“地方選はAKPの敗北”と判断して、トルコリラ売り圧力を強める可能性もあります。
地方選でAKPが勝利すれば、エルドアン大統領はバラマキ的な政策を縮小し、TCMBに対する利下げ圧力を弱める可能性がありますが、自身の政権運営が信任されたとみなして独裁色をさらに強めることも考えられます。トルコリラにとって、前者はプラス材料とみられますが、後者はマイナス材料と考えられます。
トルコリラについては、地方選の結果だけでなく、選挙後のエルドアン大統領の言動にも注意が必要です。
南アフリカランド
米格付け会社のムーディーズが3月29日に南アフリカの格付け見直しを発表します。ムーディーズにおける南アフリカの格付けは、投資適格級最低の“Baa3”。本稿執筆時点では、その結果は明らかになっていませんが、仮に格下げされれば、ジャンク(投機的等級)へと転落します。
市場では、格付けは今回据え置かれるとの見方が有力ですが、格付け見通しが「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に下方修正されるとの観測があります。その通りになれば、将来的な格下げの可能性が意識されて、南アフリカランドは上値が重い展開になるかもしれません。一方で、格付けが据え置かれ、かつ「安定的」の格付け見通しも維持されれば、南アフリカランドの上昇材料になるとみられます。
南アフリカランドについては、トルコリラの動向にも注意が必要かもしれません。トルコリラが下落を続けた場合、南アフリカランドなど新興国通貨全体に下落圧力が加わる可能性もあります。