[資源・新興国通貨2/11-15の展望] 豪ドルは一段安の可能性あり

著者:八代 和也
投稿:2019/02/08 18:46

豪ドル

豪ドルは今週(2/4の週)、大幅に下落。対米ドルや対円で約1カ月ぶりの安値を記録しました。RBA(豪中銀)が金融政策スタンスを“引き締め方向”から“中立”へとシフトしたことが主因です。

ロウRBA総裁は6日の講演で、「次の政策変更は、利上げと利下げのいずれもあり得る」と述べ、「失業率の上昇が持続し、インフレ率が目標に近づかなければ、ある時点で利下げが適切になる可能性もある」と語りました。ロウ総裁らRBA当局者はこれまで、金融政策の次の一手は“利下げよりも利上げの可能性が高い”との見方を示していました。

RBAは8日に金融政策報告を公表。2019年と2020年の豪GDP成長率やインフレ率の見通しを18年11月時点から下方修正し、豪住宅市場の減速がかなりの不確実性をもたらしているとの見方を示しました。

市場では、RBAの次の一手は利下げとの観測がありました。ロウ総裁の発言や金融政策報告を受けて、利下げ観測は一段と高まるとみられ、豪ドルはさらに下値を試す可能性があります。目先の下値メドとして、豪ドル/米ドルは0.6979米ドル(1/2安値)、豪ドル/円は76.95円(1/7安値)が挙げられますが、その水準を割り込む可能性もあります。

ムニューシン財務長官やライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表ら米国の交渉団が来週、北京を訪問して中国側と通商協議を行う予定です。通商協議に関して新たなニュースが出てくれば、豪ドルが反応する可能性があります。

NZドル

NZドルは今週(2/4の週)、対米ドルや対円で約2週間ぶりの安値を記録しました。同じオセアニア通貨である豪ドルに引きずられたほか、2018年10-12月期のNZ雇用統計がNZドルへの下落圧力となりました。雇用統計の結果は、失業率が4.3%、就業者数が前期比+0.1%、前年比+2.3%となり、いずれも市場予想の4.1%、+0.3%、+2.6%よりも弱めでした。

来週(2/11の週)のNZドルは、13日のRBNZ(NZ中銀)の政策金利発表が最大の材料になりそうです。政策金利は現行の1.75%に据え置かれるとみられ、焦点は金融政策の先行きに関するRBNZの見解になりそうです。

RBNZは前回18年11月の会合時の声明で、経済成長とインフレ見通しへのリスクは上下両方向にあると指摘し、金融政策報告では利上げ開始時期を2020年7-9月期と予想しました。

前回会合以降、世界経済の先行き懸念が高まったうえ米中貿易摩擦の行方は依然として不透明。NZの経済指標も軟調です。RBNZは利上げ開始時期の予想を2020年7-9月期から後ズレさせる可能性があります。そうなれば、NZドルは下落しそうです。

カナダドル

カナダドルは今週(2/4の週)、対米ドルで約2週間ぶりの安値を記録しました。原油価格が軟調に推移したことが主因と考えられます。

8日のカナダの1月雇用統計(執筆時点では未発表)が市場予想(失業率:5.7%、雇用者数:0.80万人増)から大きく乖離するようであれば材料になる可能性もあります。そうならなければ、カナダドルは原油価格の動向に引き続き左右される展開になりそうです。

世界経済の減速によって原油需要が減少するとの懸念が根強くあるため、原油価格は引き続き上値が重い展開が想定されます。その場合、カナダドルも上昇しにくい地合いになりそうです。

トルコリラ

トルコの1月のCPI(消費者物価指数)が2月4日に発表され、結果は前年比+20.35%と、2018年12月の+20.30%からわずかに上昇率が加速しました。構成項目のうち、最大のウエイトを占める食品・ノンアルコール飲料(23.29%)が前年比+30.97%と、最も高い伸びを示し、それがCPI全体を押し上げました。

市場では、TCMB(トルコ中銀)が早期に利下げを行うとの観測が根強くあります。ただ、1月のCPI上昇率が、わずかとはいえ前月から加速したことを踏まえると、TCMBが早期に利下げに踏み切る可能性は低下したとみられます。TCMBの利下げの可能性が低下することは、トルコリラにとってプラス材料と考えられます。

ただし、エルドアン・トルコ大統領のTCMBの金融政策に関する発言や米国とトルコの関係、シリア情勢には引き続き注意が必要です。対円(トルコリラ/円)については、米ドル/円の動向にも目を向ける必要があります。

南アフリカランド

南アフリカランドは今週(2/4の週)、軟調に推移しました。米ドルが全般的に上昇したことで、南アフリカランドは対米ドルで下落し、対円は対米ドルの下げに引きずられました。

来週(2/11の週)は、南アフリカの製造業生産(12日)、小売売上高(13日)、鉱業生産(14日)が発表されます。ただ、足もとの南アフリカランドは、南アフリカの経済情勢以上に米ドルの動向に左右されやすい地合いであり、この状況は当面続く可能性があります。
八代和也
マネ―スクエア シニアアナリスト
配信元: 達人の予想