【Alox分析】今年の粉飾を把握する〔2018年〕- 自己完結型粉飾の王道 –

【不適切な会計処理】
例年通り、企業評価の“眼”を更新することを目的として、『上場企業の不適切な会計処理』のリリースをまとめたレポートをお送りします。

【24件のリリース】
“今年”※は24件の「不適切な会計のリリース」があった。
(ちなみに、2017年21件、2016年21件、2015年21件、2014年14件、2013年20件、2012年29社、2011年17件、2010年15件だった。)

※昨年からの連続性を踏まえると、集計期間は2017年9月~2018年8月とすべきですが、昨年掲載すべきリリース漏れがあったことや、集計及び資料作成時期の都合上、2017年3月~2018年9月を“今年”と表現させて頂いております。何卒ご了承ください。

【不適切な会計に関する調査報告書 -概論-】
報告書には、2種類ある。

(1)内部調査委員会報告書(社内調査委員会報告書)
社内の監査役や顧問弁護士等によって作成された報告書。

→ 身内によって作成された報告書のため、甘い報告書となりがち。
 「調査した」という外形を整えることを目的とした報告書に見えるものも多い。

(2)第三者委員会報告書(社外調査委員会報告書)
企業から独立した弁護士や専門家等によって作成された報告書。
日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に沿って、作成される。

→ 経営者等のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために作成された報告書のため、内部調査委員会の報告書に比べれば、格段に透明性の高い報告書である。

調査報告書の概要については、下記の資料をご参照ください。

<不適切な会計に関する調査報告書 -概論->
http://alox.jp/dcms_media/other/171204_outline_dressingreport.pdf

<不適切な会計処理に関するリリースをした会社一覧>

リリース コード 市場 社名
2017/03/27 8090 東証1 昭光通商(株)
2017/03/30 6678 東証1 (株)テクノメディカ
2017/08/09 6715 東証1 (株)ナカヨ
2017/10/31 2220 東証1 亀田製菓(株)
2017/12/01 6942 ジャスダック (株)ソフィアホールディングス
2017/12/04 1971 東証2 中央ビルド工業(株)
2017/12/08 1822 東証1 大豊建設(株)
2018/01/12 9924 名証2 (株)ドミー
2018/01/17 7215 東証1 (株)ファルテック
2018/02/09 6239 ジャスダック (株)ナガオカ
2018/02/13 9101 東証1 日本郵船(株)
2018/02/15 2402 マザーズ (株)アマナ
2018/02/28 8032 東証1 日本紙パルプ商事(株)
2018/03/27 7519 ジャスダック 五洋インテックス(株)
2018/04/13 4347 ジャスダック ブロードメディア(株)
2018/04/27 4028 東証1 石原産業(株)
2018/05/02 1711 東証2 (株)省電舎ホールディングス
2018/05/10 3156 東証1 (株)UKCホールディングス
2018/05/10 6926 東証1 岡谷電機産業(株)
2018/05/23 6072 マザーズ 地盤ネットホールディングス(株)
2018/07/10 6064 マザーズ (株)アクトコール
2018/08/01 4287 ジャスダック (株)ジャストプランニング
2018/08/07 6637 ジャスダック 寺崎電気産業(株)
2018/09/14 6901 東証1 澤藤電機(株)

<不適切な会計処理 リリース概要一覧表>
http://alox.jp/dcms_media/other/181216_2018dressing.pdf.pdf

【不適切な会計処理の型】
粉飾をその手法等に基づき、「売上加工」「利益捻出」「資金流出」「循環」「混在」の5つに分類した。

1「売上加工」とは
→架空売上、押し込み販売、売上の前倒しなど、売上を増やす行為

2「利益捻出」とは
→売上原価の過小計上や翌期繰延、費用の過小計上や翌期繰越、棚卸資産の過大計上など、利益を増やす行為

3「資金流出」とは
→創業者や特定の担当者による商行為の私物化、協力会社との癒着によるキックバック、買収や取引を通じてグループや協力会社への資金援助など、会社から資金を流出させる行為

4「循環」とは
→協力会社を通じて、売上、仕入れ、資金を循環させる行為(3と4の合わせ技として、社外へ「資金流出」するために、「循環取引」が用いられることは多い。)

5「混在」とは
→売上を増やす行為と利益を増やす行為が混在するケースや、役員や従業員の私利私欲を満たすような個人プレーなどの1~4に分類できない多種多様な行為

【分類別の企業一覧】
<売上加工>
・ソフィアホールディングス
・ナガオカ
・五洋インテックス
・石原産業
・省電舎ホールディングス
・地盤ネットホールディングス

<利益捻出>
・亀田製菓
・中央ビルド工業
・ドミー
・日本紙パルプ商事
・澤藤電機

<資金流出>
・テクノメディカ
・ナカヨ
・大豊建設
・ブロードメディア
・UKCホールディングス

<循環>
・昭光通商
・アクトコール

<混在>
・ファルテック
・日本郵船
・アマナ
・岡谷電機産業
・ジャストプランニング
・寺崎電気産業

【今年の傾向】
昨年と同様に資金流出(循環による資金流出も含む)系の粉飾は、24社中7社(29%)と多い。
また、「自己完結型粉飾の王道」というべき“在庫調整による利益捻出”も、24社中5社(21%)と多かった。

【自己完結型粉飾の王道】
多くの場合、売上加工や資金流出などの粉飾行為では、共犯者というべき親密なパートナーが必要である。
だが、そのパートナーの失態や情報漏えい等によって、粉飾が露見することも多い。

一方で、“在庫調整による利益捻出”は、共犯者がいらない。

会社の必達目標や上司からの有形無形のプレッシャーによって、「工場現場や経理担当者が自らの裁量の範囲内で実行可能な粉飾」であり、非常に重宝されている粉飾テクニックである。

【粉飾のテクニック実例集】
今年は、下記のようなテクニックを用いて、不正会計が実行された。

〔亀田製菓〕
連結子会社において、棚卸資産の残高を記入するエクセルシートを経理部長が管理していた。

社長が「もっと赤字を少なくしてもよいのではないか。」と言ったことに対し、経理部長は「他の方法がなかったら、在庫量を増やすしかない。」と説明したところ、社長が「これ以上赤字を出したくない。」と返答したため、それを黙示的な指示と受け取った。

 ◆勘所
 → 社長の意図を忖度して、経理部長が自主的に粉飾を実行。経理によって、利益が作成される事例。

〔中央ビルド工業〕
棚卸における差異を5万円以下に抑える改竄が、何世代にも渡って、ルーティング業務として引き継がれていた。

ある工場では、赤字を避けるために、原価を「200万円を切れ」「300万円を切れ」など、具体的な改竄の指示なされた。

〔ドミー〕
仕入先からのリベート・協賛金の一部について、減損処理を回避するため、上司及び担当役員の明示又は黙示の指示を受け、各担当者が伝票を改ざんする等により、減損の懸念がある店舗について傾斜的な配賦処理が行われていた。

〔ファルテック〕
●社内用語 →“サプライズ”

明確な定義があるわけではないものの、「何らかの要因により、予算上織り込まれていなかった(又は想定されていなかった)費用・損失が発生すること」などを指して、役職員の中で用いられていた。

役職員のメールのやり取りには、「サプライズを避けるため」、「サプライズが発生してしまう」といった記載が散見され、それを防ぐために「工場間で在庫を移動していたことにする」などの調整がなされていた。

〔ジャストプランニング〕
元代表取締役は、複数の協力会社の請求書フォーマット、印影の画像データを保有しており、必要に応じて請求書を作成し、自社グループへ請求していた。

〔寺崎電気産業〕
X氏は寺崎電気産業の銅在庫をA社及びB社に対して不正に売却して売却代金を着服した。不正に銅材を売却した結果、現物の銅在庫が基幹業務システム上の銅在庫を下回っている事態が発生するが、その解消のために、個々の製品製作に際して現実に使用した銅材を上回る銅材を使用したように基幹業務システム入力することで、基幹業務システム上の銅在庫を少しずつ減らして、不正な銅在庫売却を隠蔽してきた。

 ◆勘所
 → 極めて巧妙な隠蔽工作。本物の取引の中に嘘の在庫を少しだけ計上して、最後には証拠隠滅する例。

〔澤藤電機〕
月次決算において赤字となることを防ぐため、予算を大きく超えた仕掛品残高が計上されている実存するプロジェクト(すなわち採算の悪いプロジェクト)の仕掛品残高について、予算に対して実績に余裕のある他のプロジェクト(すなわち採算の良いプロジェクト)に対して付け替えた。

〔省電舎ホールディングス〕
子会社の元社長C氏は、架空売上の販売先のD社の代表取締役に対して、監査法人から届く売掛金についての残高確認書が届くので、「問題がない旨の回答をしてほしい」と依頼した。

また、C氏は取引先に対して、別案件の名目で請求書を発行してほしいと依頼して、原価の付け替えを行った。

〔日本紙パルプ商事〕
子会社において、架空在庫を払い出して利益を加えて架空売上を計上するとともにその売上金額全額を取消して利益込みの金額で在庫を再計上した。

子会社のX 氏は、取引先からキックバックとして直接現金を受領し、クレジットカードの支払口座である自己名義の銀行普通預金口座に入金することを繰り返した。

【ベストオブ不適切な会計に関する調査報告書】
独断と偏見に基づく、今年の一読に値する報告書は、ブロードメディアである。

今回の報告書は変わっており、ブロードメディア(実際には子会社)が、架空取引の被害者という立場から作成されている。

簡単に言うと、「10年間にわたって、120億円の架空取引に巻き込まれました。その内容について、第三者委員会で調査しました。」という報告書である。

被害者から見た不適切な会計に関する調査報告書は、極めて珍しい。

内容は強烈で、「THE 架空取引」というべき一品である。

<架空取引の構造>
(1)架空の発注元
(2)ブロードメディアの子会社
(3)A社(ブロードメディアの業務委託先)

(1)は存在せず、(3)が(1)を演じている。

つまり、「架空の発注先を騙るA社(3)」が「ブロードメディアの子会社(2)」へ発注し、「ブロードメディアの子会社(2)」が「架空の発注先を騙るA社(3)」へ発注する取引である。

<実際の取引の構造>
(2)ブロードメディアの子会社
(3)A社(ブロードメディアの業務委託先)

ブロードメディアの子会社がA社に資金を提供(ブロードメディアの子会社から見たら詐欺)しているだけである。

架空ゆえに、偽造のオンパレードである。

<偽造された物や隠蔽工作>
・発注書
・担当印
・会社印
・納品受領書
・制作物(動画サイトからダウンロードした映像を加工。)
・銀行における振込名義人(窓口で架空の発注元を騙る。)
・架空会社のドメイン(*****.co.jp)
・架空会社のメールアドレス
・会計監査人からの残高確認書を自身で回収するとともに、
住所と消印が不整合とならならいように、各社の近辺のポストで投函した。

【総括】
粉飾実行会社が、会計監査人から届く残高証明書の対策として、「手違いなので、回収させてほしい」と連絡するケースはよくある。

万が一、このセリフを耳にすることがあったら、「限りなく黒の会社」と判断するのが賢明である。

ベストオブ不適切な会計に関する調査報告書
1位:ブロードメディア

<調査報告書>
http://alox.jp/dcms_media/other/180413_4347.pdf

※コピーのコピーの報告書で、やや画質は悪く、読み辛いです。ただ、デジタル・フォレンジックス調査によって、登場人物のメールの送受信の件数を分析したグラフなど、興味深い所も多々あります。時間のある時にご参照ください。

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