今週のまとめ11日26日から11月30日の週

著者:MINKABU PRESS
投稿:2018/12/01 08:00
 26日からの週は、ドル安と円安の動きが優勢だった。市場には「不透明感」の四文字が意識され続けた。週末のG20での通商問題をめぐる米中首脳会談、12月11日に英議会での採決を控えたEU離脱の動向、イタリア予算をめぐるEUと伊政府とのせめぎ合いなど。原油相場もNY先物が一時節目の50ドル割れと波乱の展開に。ただ、その不透明感が奏功した面もあった。パウエルFRB議長が中立金利に近づいてきているとの認識を示し、これまでよりもハト派姿勢と市場にとらえられた。利上げ打ち止めへの思惑が広がり、米債利回り低下、株高、ドル安の動きが広がった。円相場は、ドル円が114円台乗せから113円台へと押し戻されたほかは、クロス円は総じて堅調な動きをみせた。週末は前週末比プラスで取引を終える株価指数が大半だった。ただ、週末の米中首脳会談などG20会合の動向は要注意に。


(26日)
 東京市場で、ドル円は113円台をしっかりと回復している。先週末は米株が下落、原油先物が急落するなどリスク警戒の動きがみられたが、週明けはリスク動向が回復した。日経平均が堅調に推移、香港株や韓国株も1%超高となっている。ポンドは軟調。英国とEUが離脱協定案で合意したことで、朝方はポンド買いが入ったが、するに売りに転じた。ポンドドルは一時1.28台割れ。NZドルは下に往って来い。第3四半期小売売上高が弱かったことで売りが入ったが、その後は買い戻し優勢に。

 ロンドン市場では、ユーロ買いが強まった。イタリアの予算問題で、政府筋から19年財政赤字目標の見直しが報じられたことが背景。サルビーニ副首相が週末に修正の可能性を示唆したほか、ディマイオ副首相も赤字削減は可能と現地のラジオで発言。ユーロドルは1.13台前半から1.13台後半へと上昇。ユーロ円は128.90台まで買われた。ポンドドルは1.28台前半から後半へと上昇、東京市場での反落の動きを消した。ドル円は113円台前半での揉み合い。

 NY市場では、ドル買いが優勢。ドル円は113.60近辺まで買われた。原油、米株とも反発したほか、リスク回避の動きも一服し、円安の動きもドル円をサポートしていた。感謝祭明けのブラックフライデーの消費が過去最高水準に増加との調査が報じられ、再び米利上げ期待が広がった面も。ドル買い主導のなかで、ユーロドルとポンドドルはロンドン時間までの上げを失った。ユーロドルは再び1.13台前半、ポンドドルは1.28台前半へ軟化。メイ政権の離脱案については議会の承認が得られるのかどうか、未知数との見方もポンドには重石だった。
 
(27日)
 東京市場は、小動き。ドル円は113円台半ばを挟んで20銭程度でのレンジ取引。朝方は前日海外市場での株高を好感して113.60近辺まで買われたが、米トランプ大統領が来年1月からの中国製品の2000億ドル規模の関税率を10%から25%に引き上げる計画を変更しないと米紙が報じると、上値が重くなった。上昇して始まった東京株式市場に調整が入るなどの動きも、ドル円の重石となったが、中国株式市場が堅調で、後場に入って東京株式市場が再び上値を試す動きに下押しも限定的だった。ユーロドルは1.13台前半での揉み合い。

 ロンドン市場では、ポンドが軟調。各報道からは12月11日の実施される英議会での採決をめぐり否定的な内容が多い。トランプ米大統領からはEUとの合意に不快感が示された。英小売関連指標が好調だったものの、ポンド相場は圧迫され続けている。ポンドドルは1.27台前半、ポンド円は144円台後半へと下落。トランプ米大統領は中国からのアップル製品輸入に関税を課すると発言て、再び警戒感が広がっている。中国当局の発言報道にドル円や豪ドル相場が上下動する場面があり、市場がこの話題に敏感になっている面が垣間見られた。欧州株や米株先物は軟調。ドル買いと円買いの綱引きで、為替相場は方向性がみえにくくなっている。

 NY市場は、ドル買いが優勢。米景気への先行き不透明感も台頭して来ており、米利上げ期待も後退している。ただ一方で、英国や欧州のほうも不安定でドルは消去法的に買われているようだ。クラリダFRB副議長は、漸進的な利上げが適切、と述べたこともドルをサポート。ドル円は113.85近辺まで上昇。米株高も下支え。サイバーマンデーの好調が報じられている。ユーロドルは1.13台割れ、ポンドドルは1.27台前半まで下落。メイ首相とEUは離脱案で合意したが、英議会がそれを承認するか不透明な部分が大きい。

(28日)
 東京市場は、ドル円が113円台後半での推移。前日の海外市場での高値をわずかながら超える場面が見られ、ドル高・円安が優勢。一方、週末のG20を前に積極的なドル買いにも慎重な姿勢が見られ、114円手前の売りを崩すには至らず。その他主要通貨も落ち着いた動き。ユーロドルは1.13手前までの上昇。昨日のNY市場で1.13台をしっかりと割り込んでからは同水準が頭を抑えていた。

 ロンドン市場は、ドル相場が方向性を欠く動き。米GDP改定値やパウエルFRB議長講演待ちに。欧州通貨はユーロ売り・ポンド買いが優勢。イタリア予算をめぐってはEU側からは大幅修正を求めるとの報道があり、現行案にこだわる伊政府との溝は深い。このあと英政府や英中銀がブレグジットに関連した経済分析を公表する予定となっており、合意なき離脱のマイナス面が強調されるとの思惑もあるようだ。ユーロドルは1.12台後半へ軟化、ポンドドルは1.28台手前まで一時上昇。ドル円は113円台後半での揉み合い。

 NY市場では、パウエル発言を受けてドル売りが急速に強まった。パウエル議長は「政策に既定路線なく、金利は中立レンジをやや下回る」と述べた。また、利上げの影響は不確実で顕在化に1年以上かかる可能性にも言及した。前日にクラリダ副議長は「漸進的な利上げが適切」と発言していたが、それよりも引き締めに慎重になっている印象も感じられ、市場ではサプライズとなったもよう。序盤に114円台を付けたドル円は、113円台半ばへ下落。ユーロドルは1.13台後半へ、ポンドドルは1.2840近辺まで上伸した。米債利回りが低下し、米株は大幅高となった。英EU離脱による経済への影響を予想した英中銀のレポートが公表され、無秩序な離脱ならGDPを8%押し下げ、住宅価格を30%引き下げると予想していた。ポンドは25%下落する可能性も。
 
(29日)
 東京市場では、ドル安・円高の動き。前日のパウエル発言を受けたドル売りの流れを受けて、ドル円はドル安圧力がみられた。一方で、米株高を受けて日本株、中国株などが堅調に推移し、ドル円の下支えとなった。そのなかで、ライトハイザー米USTR代表が、中国からの輸入自動車の関税について現行から引き上げる意向を示したことで、中国関連株が大幅安に転換。米債利回りの低下とともに、ドル円は113.20近辺まで下落した。ユーロドルは1.13台後半で1.14台手前まで上昇。

 ロンドン市場では、クロス円が下落。米中自動車関税問題が再燃したことで、時間外取引の米株先物が軟化。買い先行で始まった欧州株も次第に上げ幅を縮小している。また、メイ英首相は議会が政府を打ち負かすようなことがあれば、合意なき離脱への準備が必要と発言。市場には、前日の英中銀の合意なき離脱のポンド急落見通しが想起され、ポンドに売り圧力が広がった。連れて、ユーロ相場も反落している。ドル円は113円台前半で下げ渋っているが、値幅は限定的。ポンド円は144円台後半へ、ユーロ円は128円台後半へと押し戻されている。

 NY市場では、ドル売り一服も上値は重かった。明日からのG20首脳会議に市場の関心が集まっており神経質な動きが続いている。特に12月1日に予定されている米中首脳会談の動向が注目されている。合意を期待も、関税引き上げへの警戒感が残る状況。午後に入ってFOMC議事録が公表されたが、金利に対して柔軟なアプローチの必要性を検討していたことが明らかとなった。発表直後は振幅したものの、大きな反応には至らなかった。ドル円は113円台半ばへと下げ渋り。ユーロドルは1.13台後半での上下動。ポンドは1.2760近辺まで下落と、戻り売り優勢。合意なき離脱への警戒感が重石に。
 
(30日)
 東京市場は、小動き。きょうとあすのG20および各国首脳会談、特に米中首脳会談に注目が集まるなかで、市場には様子見ムードが広がった。ドル円は113円台前半での15銭レンジ。ユーロドルも15ポイント程度にとどまった。米中首脳会談では、通商摩擦問題が大きなテーマ。知的財産侵害での第3弾の関税2000億ドル規模に対して、1月から税率が25%に引き上げられる件や、第4弾として計画されている2670億ドル規模の追加関税について、保留や先送りなどの動きが見られるかがポイントとなりそう。

 ロンドン市場では、ドル買いが優勢。G20を控えて様子見ムードで取引を開始したが、欧州株が次第に下げ幅を拡大する動きに、リスク回避的なドル買い・円買いの動きが優勢になっている。ポンド相場にとっては、12月11日の英議会採決を控えて、メイ英首相がプランBはないとしており、合意なき離脱への懸念が高まっている。ユーロ圏の消費者物価指数速報値は前年比+2.0%と前回から伸びが鈍化、改善予想の同失業率も8.1%と横ばいにとどまった。ポンドドルは朝方に1.28台に乗せたが、反転して1.27台半ばへと下落。ユーロドルは1.14台手前から1.1360近辺まで軟化。クロス円も弱い動き。ドル円は113.50台へとじり高。

 NY市場はドル買いが優勢となった。月末ということもあり、ロンドンフィキシングにかけてドル買いが強まった。年末に向けたドル買い需要を予感される動きでもある。一方、きょうからG20首脳会談がアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されており、特に明日の米中首脳会談の行方を市場は注目している。その結果待ちの雰囲気も強かったが、きょうのドル買いはそれに向けたリスク回避の動きとの指摘もあった。

このニュースはみんかぶ(FX/為替)から転載しています。

配信元: みんかぶ(FX/為替)