小次郎講師の徹底解説【テクニカル分析の重要性】

投稿:2018/09/10 10:00

「新コジテク(小次郎講師の使えるテクニカル分析講座)実践編」第5回


□皆さんこんにちは。小次郎講師です。


■助手のムサシです。宜しくお願いします。
 小次郎講師、新シリーズが始まって数回経ちまして、具体的なテクニカル指標の使い方をもっと知りたいなと僕思いました!

□ムサシ君やる気だねぇ。
 そう言うだろうと思って今日からテクニカル指標の使い方を取り上げてみようと思う。

■さすが小次郎講師。

□復習も兼ねた新シリーズということで、私の代名詞でもある「移動平均線大循環分析」を深く掘り下げていこう。
 その為にもまずはテクニカル分析の代表選手「移動平均線」について基礎からしっかり学んでいくぞ。

■はい!
 …と言っても小次郎講師、移動平均線なんて簡単過ぎやしませんか?
 みんな使ってますし。

□確かに、移動平均線自体は最もポピュラーなテクニカル指標だと言ってもいい。だが、有名だからこそ“なんとなく”見て、“なんとなく”使っている人が多いと言うのもこれまた事実。
 時にムサシ君、「平均」というのは分かると思うが、じゃあ「移動」という部分はどこから来ているか分かるかね?

■げ…!
 ただの平均値を集めた線だと思ってたので、そこまで考えたことありませんでした…

□そうだろう。ここに日本の個人投資家の弱点が浮き彫りになってくるんだ。
 そのテクニカル指標の「買いサイン」「売りサイン」しか知らず本質を理解していないから、いつまで経ってもチャート分析が上手くならない。
 そもそもそれだけで勝てたら、世の中は勝ち組投資家だらけはなず。
 自分の頭で考えて理解して実戦で使えて、初めてテクニカル指標は「有効な武器」となるんだ。

■み、耳が痛い。
 気持ちを入れ替えて一から頑張りますので、基礎から教えてください!
 (このままだとお説教が長くなりそうだぞ)

□よかろう。
 移動平均線の発祥は諸説あり、1920年代にアメリカで生まれたという説や、日本で同時期に同じような指標が生まれたという説が様々あるが、一般に広く知れ渡ることとなったのは、1960年にアメリカの有名アナリスト、ジョセフ・E・グランビルさんが『グランビルの法則』という自らの書籍の中で、移動平均線を細かに解説してからになる。

■60年近く前、と思うとともに意外と最近なんですね。

□テクニカル分析の隆盛自体が歴史的に見れば割と近年の話だからな。

■有名なテクニカル指標の発案者でまだまだ現役の人が多いのもそういうわけなんですね。

□私もその一人に仲間入りしたいものだ。

■小次郎講師ならきっとなれますよ!きっと!

□ムサシ君、気休めでもありがとう(汗;)
 さて話を戻すぞ。
 チャート分析の世界では「移動平均線に始まり、移動平均線に終わる。」なんて格言もあるぐらいだから、心して聞くように。

■了解です!

□まず移動平均線にはいくつか種類がある。このことを覚えて欲しい。
 その中でも特に大切なものが3つ。
 単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線、だ。

■よく耳にするやつですね。

□アルファベットで表記されることもあるからそれも併せて覚えておこう。

 ・単純移動平均線=SMA
 ・加重移動平均線=WMA
 ・指数平滑移動平均線=EMA

■そして、一番メジャーなものはSMAだと。

□その通り。今日はまず一番シンプルな単純移動平均線から学んでいくぞ。
 指数平滑移動平均線についてはまた別の回で解説しよう。

■はい。
 ところで小次郎講師、「SMA」というのは何の略なんですか?

□良いところに気づいたぞムサシ君。「名は体を表す」とよく言うように、そこから知れば、もっともっとテクニカル指標に詳しくなれる。
 SMAは「Simple Moving Average」の頭文字をとったもの。文字通り「単純移動平均」となるわけだ。

■日本で移動平均線と言ったらまずコレですよね。

□その単純移動平均線の計算式から。

(直近の終値+1日前の終値+2日前の終値…+(N-1)日前の終値)÷ N

 これが例えば10日移動平均線だったら

(本日の終値+昨日の終値+2日前の終値…+9日前の終値)÷ 10

 ということになる。
 計算式、というと大げさに聞こえるかもしれないが、どうだい簡単だろう。

■平均値を求める計算、そのまんまですね。
 あれ、でも小次郎講師。1時間足や15分足などの場合はどう考えればいいんですか?

□その場合は「ロウソク足1本分」と考えれば良い。N本移動平均、と考えると同じ意味合いになる。
 

 

□ではムサシ君、なぜ移動平均線をわざわざチャート上に記すのか、分かるかね?

■平均があったほうが目印になるからじゃないですか?
 ほら、テストでも「平均点」って出すじゃないですか。

□何の平均的な目印かということが大事なんだが…
 まぁその話は後にするとして百聞は一見に如かず、チャートで見てみよう。
 

 
□何かこの線の視覚的特徴を感じないかい?

■視覚的…
 あ!ロウソク足だけを見ていると上に下に忙しいですが、移動平均線は滑らかに動いてます。

□正解。
 移動平均線の役割の一つ目は「価格の動きを滑らかにすること」だ。
 平均値を繋いでいる移動平均線はそれだけ動きが滑らかになるから、大局的なトレンドの流れが分かりやすい。

■細かな価格の乱高下には付き合わないって感じですもんね。

□そして、この滑らかな移動平均線を使う有名な買いサイン・売りサインが「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」だ。

■巷で聞かない日はないですもんね。

□君がどんな“巷”で暮らしているかは知らないが…
 とにかく、移動平均線と価格(ロウソク足)が交差する所を「ゴールデンクロス」「デッドクロス」と呼び、典型的な買い場・売り場とされている。
 
■2本の移動平均線同士の交差かと思ってましたが、「移動平均線と価格」の交差のことなんですか?

□先ほども出てきたグランビルの法則が出来た時には、まずは価格と移動平均線の交差がそう呼ばれていたが、現在では短期線と長期線の二本の移動平均線の交差をゴールデンクロス・デッドクロスと呼ぶことが多くなっている。

■時代とともに変わって来てるんですね。

□どちらの考え方も大切なのだが、とりあえず今はオリジナル通り、価格と移動平均線のクロスで考えてみよう。

 ・ゴールデンクロスは移動平均線を価格が下から上にクロスすること
  (買いサイン)
 ・デッドクロスは移動平均線を価格が上から下にクロスすること
  (売りサイン)

 

 
■これは日頃から僕もよくお世話になってます。

□ではそんなヘビーユーザーのムサシ君に質問。
 なぜ「ゴールデンクロスが買いサイン」で「デッドクロスが売りサイン」か説明できるかな?

■え、だってみんなそう言ってますし、そういう解説文もよく見かけますし。

□ほら、また自分では本質を何も理解していない。
 テクニカル分析のシグナルは買いサイン・売りサインを単に知るだけでなく、「何故それが買いサインになるのか」「何故それが売りサインになるのか」ということまで理解しなければ一生使えるようにはならないぞ。

■そ、そうでした…
 理由の部分こそが大事なんですね。

□「買いサイン」「売りサイン」とは分析の果てのあくまで“結果”の部分だからね。それだけを追い求めてはいけない。

■はい!分かりました。

□では、その答えの糸口として、移動平均線を普通に描くとしたらどこに描くのか?という問題だ。

■どこ、ですか?

□そうだ。例えば5日移動平均線だったら、当日を含む過去5日間の平均値を計算するわけだから、その値は中間(この場合だと2日前の所)に描くのが普通だろう。

■確かに、考えたこともありませんでしたが、通常は平均値って真ん中に描きますよね。
 

 
□ではなぜ中間ではなく、本日の所に平均値を描くのか。
 それはズバリ、過去の平均値と今日の価格を比較したいが為だ!

■今日の値段との比較なんですか!?

□10日移動平均線だったら、過去10日間の平均値と本日の価格を見比べる。
 そうすると、過去10日間に買った人売った人が現在平均的にどれくらい儲けているか・どれくらい損しているかが一目瞭然となる!

■例えば10日移動平均線の本日の値が1000円で、価格の方の本日の終値が1500円だったとすると…

□過去10日の間に買っていた人は平均的に500円儲けていることになる。
 そして買い方がいるということは当然売り方もいるということだから、売っていた人は平均的に500円の損、ということが分かる。

■なるほど。ここに冒頭の部分で話のあった、移動平均線の「移動」の部分が関わってくるわけですね。

□本日の所に平均値を“移動して”描くから「移動平均線」。その理由は今日の価格と見比べて、どれくらい儲かっているか損しているかを見やすくする為なんだ。これが移動平均線の役割の二つ目。

■しっくりきました。

□そして、ムサシ君が仮に買い方で、過去何日間の平均値と比べてマイナスだった日々が続いていたとしよう。

■今日の価格が移動平均線の下にあるような状態ですね。

□そこから価格と移動平均線がゴールデンクロスを起こし、プラスに転じたらどうなる??

■「やった!」ってなります!だって損がなくなってどんどん利益が増えていくわけですから!強気にもっと買おうともなります。

□そうだ。ゴールデンクロス・デッドクロスを理解する上で投資家のこの心理的な変化がとても重要なものになってくる。ムサシ君が言ったように、それまで平均的にマイナスだった買い方がプラスに転じるゴールデンクロスは、その後の価格上昇への分岐点となりやすい。反対にそれまでプラスだった売り方はゴールデンクロスが起こったら損の時代に突入してしまう為、いち早く決済したくなってくる。その時に出す注文は売りの反対だから「買い」。

■そうか!その決済注文が価格の上昇をより促進するんですね。

□反対にデッドクロスはそれまで平均的にマイナスだった売り方がプラスの利益に転ずる部分ということで、売りがどんどん加速していく。そして買いを持っている買い方は、これ以上損が広がらないように「売り」の決済注文を出すこととなる。これがデッドクロスによって価格が下落していくカラクリだ。

■今持っているポジションが、マイナスゾーンにいるかプラスゾーンにいるかで投資家の気持ちは全然違ってくるんですね。
 

 
□そこまで理解してないと、ゴールデンクロス・デッドクロスの理由を理解しているとは言えない。でもこれでムサシ君もクロスを見ただけで市場の投資家心理を把握できるようになっただろう。

■はい!この見方でだいぶ深く移動平均線を見られるようになったと思います!

□だが、まだまだ移動平均線の真価はこんなものじゃない。「シンプルなものにこそ真理が宿る」だ。それを今後数回でさらに深く掘り下げていこう。

■まだまだ先が見えないなんて、小次郎講師深すぎますよ!

□以上、これにて第5回講義終了。

■起立、礼!
 

「小次郎講師の先物流儀」 http://f-blog.jp/kojiro/
「小次郎講師流タートルズ投資塾」 http://www.masters-tv.net/
【DVD】 http://money01.h8w.co.jp/lp/06/
【動画】小次郎講師のテクニカル分析講座
 http://commodityonlinetv.com/basic-the-commodity/
【チャート】公式一目均衡表チャート http://ichimoku-chart.com/


配信元: みんかぶ株式コラム