トライSTG Research Memo(3):2018年2月期は3期連続増収となるも、減益に転じる

配信元:フィスコ
投稿:2018/05/24 15:33
■業績動向

1. 2018年2月期の業績概要
トライステージ<2178>の2018年2月期の連結業績は、売上高が前期比17.9%増の55,775百万円、営業利益が同26.0%減の1,032百万円、経常利益が同33.5%減の908百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同49.3%減の385百万円と増収減益決算となった。

売上高は主力のテレビ事業が前期比1,080百万円の減収となったものの、DM事業が同5,608百万円増となったほか、M&A効果によってWeb事業が同2,625百万円増、海外事業が同1,087百万円増となるなどその他の事業が増収となったことで3期連続増収、過去最高を更新した。

売上原価率が89.8%と前期比0.8ポイント上昇したが、これはテレビ事業の原価率が上昇したことに加えて、売上構成比が変化したことよるもので、売上総利益は前期比9.0%増の5,613百万円となった。また、販管費については前期比21.9%増の4,580百万円となった。主な増加要因としては、子会社増を主因とした人員増(前期末比26名増の336名)により人件費が前期比286百万円増となったほか、賃借料が同106百万円増、広告宣伝費が同99百万円増、のれん償却額が同73百万円増となった。セグメント別利益で見ると、テレビ事業の減益に加えて新規事業として開始した通販事業の立上げ費用が減益要因となった。

なお、同社が2017年12月に修正発表した会社計画に対しては、売上高、利益ともに上回って着地している。特に経常利益と当期純利益の増額幅が大きくなっているが、これは持分法適用関連会社であるTV Directの株価下落で第2四半期に営業外費用として計上していたのれん相当額の一時償却599百万円が、TV Directの株価回復により戻入されたことが主因となっている※。

※TV Directの株価は業績悪化に伴い、一時的に取得時の価格を大きく下回ったため、第2四半期にのれん相当額分の一時償却を実施したが、期末株価が1.75TBを上回ればこの会計処理は不要とされていた。2018年2月末の株価は1.90TBだったため費用計上する必要はなくなったが、今後も株価が1.75TBを下回ることがあれば計上することになる(4月12日終値は1.83TB)。


テレビ事業は値引き販売や成果報酬型取引の効率低下が収益悪化要因に
2. 事業セグメント別動向
(1) ダイレクトマーケティング支援事業
ダイレクトマーケティング支援事業の売上高は前期比4.6%増の35,419百万円、営業利益は同24.6%減の1,234百万円となった。売上高の内訳を見ると、テレビ事業が前期比3.2%減の32,684百万円と3期ぶりの減収となった一方で、Web事業は同24倍増の2,735百万円となった。第2四半期からアドフレックスが新たに子会社として加わったためで、アドフレックスの売上高は2,553百万円、営業利益は148百万円となった。また、のれん償却費は61百万円となっている。このため、テレビ事業だけで見ると約3割の減益で、2013年2月期以来の減益に転じたことになる。

テレビ事業の収益悪化要因は、顧客の出稿意欲が総じて鈍い状況が続くなかで、上期は特定顧客に対する売上値引き処理117百万円が発生したこと、また、下期には主に成果報酬型取引の顧客において販売効率が目標を下回ったことによるメディア枠の値引き販売が発生したことが要因となっている。同社では2017年秋のテレビ番組改編時にメディア仕入枠を絞り込み、需給バランスの改善による粗利益率回復に取り組んだものの、顧客企業の出稿意欲は鈍いままで第4四半期まで厳しい状況が続く結果となった。この結果、テレビ事業を展開するトライステージ単体の売上総利益率は前期比1.6ポイント低下の10.0%となった。

顧客動向を見ると、上位5社の売上高は個別の増減はあるものの、合計では前期比5%減の154億円となり、その他既存顧客は同15%増の136億円、新規顧客が同37%減の34億円となった。新規顧客の売上が減少したのは規模の大きかった顧客が2年を経過し、既存顧客に振り替わったことが主因となっている。ただ、同顧客を除いたベースでも新規顧客の売上は減収となっている。顧客業種別では、健康食品が比較的堅調に推移したものの、2016年に伸びた生活雑貨品を含めてその他の業種は総じて低調だった。

(2) DM事業
子会社のMCCが展開するDM事業の売上高は前期比48.6%増の17,144百万円、営業利益は同341.7%増の272百万円と大幅増収増益となった。参入企業が多く利益率の低いDM発送業界において、ヤマト運輸や日本郵便が相次ぐ値上げを実施したことで、中堅以下の事業者が収益的に厳しくなり、業界内で大手の寡占化が進行していることが追い風となっている。

利益面では、送料値上げ分の顧客への価格転嫁がスムーズに進んだことや、収益性の高い直接取引の新規顧客が増加したことに加えて、のれん償却費が前期比50百万円減少したことが増益要因となった。営業利益率はのれん償却前ベースで1.9%と前期比0.4ポイント上昇している。なお、MCCののれん資産の一部については第3四半期で償却が終わっている。

(3) 海外事業
海外事業の売上高は前期比162.6%増の1,755百万円、営業損失は259百万円(前期は295百万円の損失)となった。のれん償却費は前期の31百万円から94百万円に増加しており、のれん償却前ベースで見ると営業損失は164百万円となり、前期比では99百万円縮小したことになる。

会社別の業績を見ると、2017年2月期第3四半期に子会社化したJMLの売上高は742百万円、営業損失は34百万円に、同第4四半期に子会社化したMerdisの売上高は908百万円、営業利益は59百万円となった。また、2018年2月期に新設したTSMの売上高は3百万円、営業損失は4百万円となっている。海外事業の業績数字と3社合計の差額は、単体の海外事業及びのれん償却費となる。

海外子会社では、長年売上げをけん引してきた健康器具等の主力商品のライフサイクルが終盤を迎えたことや代替するヒット商品が生まれなかったことから、当初の会社計画を下回る結果となった。また、TSMについても健康食品等の日本商品をTV Directを通じて販売していく計画であったが、現地のニーズと合わずに日本商品の販売が伸び悩む格好となった。同社では海外事業について早期の収益化に取り組むべく、業務提携先の双日<2768>から迎え入れた担当役員が中心となって事業戦略の見直しを進めている段階にある。


(4) 通販事業
子会社のNHAで2017年3月より開始した通販事業の売上高は65百万円、営業損失は237百万円となった。日本製にこだわった一般用漢方製剤やサプリメントを販売しているが、新聞広告からラジオ、テレビ広告と広告戦略を強化し、認知度の向上に取り組んできたことで、売上高は四半期ごとに着実に伸び始めている。同社はスタートアップ段階にあり、多額の損失は計上しているものの、将来のグループ成長のための先行投資的な位置づけであり、赤字幅は想定の範囲内である。2020年2月期の黒字化を目指して運用している。

(5) その他の事業
その他の事業の売上高は前期比13.7%増の1,390百万円、営業利益は同416.9%増の22百万円となった。2016年3月に子会社化した日本百貨店が運営する小売事業「日本百貨店」が含まれる。「日本百貨店」の既存店は微増となり、前期途中に出店した新規2店舗の売上増分が増収要因となった。店舗数は現在、7店舗(東京、神奈川、オンラインストア)となっている。

また、卸事業では、沖縄最大の流通企業グループであるリウボウグループの傘下である(株)リウボウインダストリーと相互の商品供給や商品開発を中心とした業務提携を2017年6月に発表し、同グループ傘下の百貨店やスーパーマーケットへの卸販売が増加した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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配信元: フィスコ

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