リスクモンスター 菅野健一社長インタビュー

投稿:2011/10/12 16:47

取引先の倒産リスクを「モンスター」と考えています
この10年は過去100年の歴史に匹敵する変革を果たしたといえるでしょう

略歴
リスクモンスター株式会社
代表取締役社長
菅野 健一(かんの・けんいち)
 
2000年9月インターネットを利用した与信管理サービス業を目的として、リスクモンスター株式会社を設立。2005年3月大阪証券取引所ヘラクレス上場。経済系の雑誌が好きという菅野氏、主要なビジネス誌はすべて目を通しているという。
 
 
 
──昨年創立10周年を迎えられました

「2000年9月に当社は『顧客を大切にして共に繁栄しよう』、『プロフェッショナリズムを繁栄の源泉にしよう』を企業理念として誕生しました。私どもは取引先の倒産リスクは企業にとって存続にかかわるいわば「モンスター」と考えています。そのモンスターを眠らせたままで顕在化させないという思いを込め、与信管理サービスのアウトソーシング会社としてスタートした訳です。2000年代後半の日本経済は米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的経済危機に激しく揺り動かされました。2010年台がどのようなものになるかは予断を許しません。しかし経済取引の迅速化と透明性がますます要求される趨勢の中、与信管理など企業の内部管理の重要性はますます高まっていくものと確信しています。

──当面の最大の課題は

まずはグループ力の強化だと考えています。グループ企業は5社ありますが、この3年間で組織・人事・業績などのシナジー効果が相当進んできました。ただしこれからはそのトップラインをさらに伸ばす方向を目指していきます。
今年の1月にも当社の連結子会社であるリスモン・マッスル・データが日本アウトソースの全株式を取得しました。このことにより同社の高い精度のデータ入力のノウハウと当社が蓄積してきた約240万社の企業情報及び統計的解析手法を組み合わせた高品質で付加価値の高いサービスは当社グループの成長を一段と加速してくれるものになるに違いありません。

──海外展開については

2008年8月に当社グループ初の海外拠点として中国・海南省に海南入力センターを開設しました。これを足がかりに大手を中心に国内の会員企業様の間でもニーズが増大し始めてきた中国での与信管理の展開などの事業拡大を進めていく予定です。
ただ海外についてはあくまでも顧客ニーズに基づくものという位置づけをしています。顧客ニーズが海外展開にあるのなら、当社はその顧客の水先案内人という役割を担っているという考え方です。
私は総合商社の出身ですから、海外の業務の難しさや怖さも解っています。しかし顧客ニーズが欧米から新興国へと移行してきている以上、新しいテーマとして取り込んでいきます。というよりは、「取り込んでいかねばならぬ」と感じています。

──与信管理の外部環境について

リーマン・ショック以降の政府による「倒産回避策」などが奏功し、倒産件数は減少してきました。また長引く景気低迷により与信管理に関しては多くの企業が経費削減の対象としてきました。その意味では当社にとって少し逆風が吹いていたということができます。しかし大手企業を中心として増収増益基調が鮮明になってきています。そうすると、政府の救済政策は減少し健全な企業とそうでない企業との差が再び顕在化することが予測されます。その意味では企業の与信管理需要については2009~10年を底にして復調し始めるのではないかと考えています。もっとも願望も込めてですが(笑)。
クラウドコンピューティングの先駆けとして与信管理ASPサービスを提供してきたこの10年は、経験と勘を頼りにする従来の与信管理方法の100年の歴史に匹敵する変革を果たしたといえるでしょう。これまでの10年で守り、攻めてきたことが、当社の今の実績となり、これから力強く踏みだす源泉になると考えます。

──業績は順調に推移しています

売上高については主要3事業分野別に戦略的な取り組みを行い、安定的な売上高の成長と収益獲得の実現を目指した結果、第3四半期は通期の連結業績予想に対する進捗率が73.7%とほぼ当初の予定通りに推移しました。営業利益、経常利益、四半期純利益については、グループの生産管理と原価計算の強化やシステム等のインフラ強化、また各事業の業務フローの共通化により対通期進捗率はそれぞれ75%以上となりました。今後もアライアンス等により提携会員の増加を図る方向です。
また株主還元方針として設立10周年を記念し当期(2011年3月期)に株主の皆様に感謝の意を表した1株あたり500円の初配当の実施を予定しています。

──最近の動きは

昨年10月に大証JASDAQ市場スタンダード銘柄への所属変更が承認されました。また昨年12月にサービス開始10周年を記念して最大の主力商品である企業倒産格付「RM格付」のロジックのバージョンアップを実施しました。また今年1月に株式会社エフアンドエム(JASDAQ上場)が運営するエフアンドエムクラブの会員企業向けに「リスモン企業信用格付」の提供を開始しました。


──最近社長が社内で力を入れていること

特にというわけではありませんが、とにかく「明るく元気に礼儀正しく」と言い続けています。そのためには丁寧な挨拶を欠かさないということも言っています。実は、昨年末に櫻井さんが来社されたときに「御社の社員さんはみな挨拶をきちんとされますね」と言われたことを今年の年頭挨拶で話しました。自分たちでは気がつかなくても、外部の人はそういう点を見ている。そして何かを他人のせいにして出来ない理由を挙げることも止めようと言っています。あの重厚長大な新日鉄と住金だって経営統合に向かって一気に行動しました。これからはジーと黙って横や上下を見ているのではなく行動することが必要になってくると考えています。誰もが明るく元気に挨拶することで一隅を照らせば、必ず日本は元気になるに違いありません。

取材メモ
同社は企業向け与信管理サービスの提供が中核。創業者の方々は旧日商岩井の審査部の出身。総合商社の与信ノウハウと企業データベースを基に、インターネット経由で与信管理サービスを多くの企業に提供し事業を拡大してきた。社内創業ベンチャーの草分け的存在でもある。
大手町にある本社の受付には居眠りしている「リスクモンスター」のかわいい人形が置かれている。社名の「リスクモンスター」は「どの企業にも必ず存在している(潜在)リスクは放置しておくとモンスターのように成長(顕在化)してしまう。だから、リスクを眠らせたままにしておくことが当社の役割」と伺った。巨大に成長したモンスターのようなリスクにはマーケットでよくお目にかかるが、それを未然に防ぐという発想はなかなか興味深い着眼に思える。

会社概要および業績
社名 リスクモンスター株式会社
証券コード 3768
公開市場 JASDAQ
上場年月日 2005年3月
設立 2000年9月
決算月 3月
連結業績予想(2011年3月期)
売上高2,450百万円(前年同期比112.1%)、営業利益250百万円(前年同期比111.6%)、経常利益250百万円(前年同期比111.3%)、当期純利益130百万円(前年同期比78.6%)
トピックス
設立10周年を迎え2011年3月期に1株当たり500円の記念配当を予定。

配信元: みんかぶ株式コラム