弱体化する米中間所得者層

著者:矢口 新
投稿:2015/02/09 15:23

ここ何年間かの世界経済の最大懸念の1つに、所得格差の拡大が挙げられている。言葉を換えれば、中間所得者層の没落だ。世界で1人勝ちと言われている米国ですら、過去半世紀にわたって中間所得者層が減少し続けている。ここでの中間所得者層とは、その所得が年収3万5000ドルから、10万ドルまでの層を指す。

前世紀までは、市場経済の進展もあって、高所得者層が増加し続けてきたが、人数的に圧倒的多数を占める中間所得者層の弱体化は経済基盤そのものを弱体化させるため、高所得者層の伸びも鈍ってきた。また、今世紀に入っては、低所得者層が増加に転じている。
参照:The Shrinking American Middle Class
http://www.nytimes.com/interactive/2015/01/25/upshot/shrinking-middle-class.html?abt=0002&abg=1

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人種別では、アジア系その他の中間所得者層の減少が目立ち、アフリカ系、南米系の低所得者層の比率が高止まりしている。

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学歴別では、人種別以上に残酷だ。高所得者層になるには大卒以上であることが大きな条件となるなど、学歴と所得との相関関係がはっきりと見て取れる。中卒・高校中退以下では6割以上が低所得者層に属し、高卒でも半数近くが属している。

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年齢別では、30歳から64歳までの層が最も所得が多い世代だが、そこでも中間所得者層は減少している。一方で、65歳以上だけが年を追うごとに豊かになる傾向が見られている。

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夫婦と子供の世帯、夫婦だけの世帯、母子・父子家庭、独身世帯別では、子供のあるなしに関わらず、夫婦世帯の所得が顕著に高い。以前はDINKs(Double Income No Kids)と呼ばれる共働きで子供のいない世帯が最も豊かだと言われていたが、事実は昔から夫婦と子供の世帯の方がより豊かだったようだ。母子・父子世帯の生活が最も厳しいのは想像の範囲だが、意外に独身者の所得も多くない。これは日本や他の多くの国々と同じように、結婚できるための「所得の壁」があるものと思われる。

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以下は、日本における雇用形態と婚姻率、学歴と婚姻率の関係だ。ここでは草食化とか、勝手気儘な若者たちなどとは全く違う残酷な事実が見えてくる。結婚できるための「所得の壁」だ。そして、学歴と婚姻率の関係に見られるように、それは急速に悪化している。私には、日米ともに中卒・高校中退以下の人たちが他の学歴の人たちよりも身勝手で、草食化が進んでいるとは思えない。

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配信元: みんかぶ株式コラム