■アドバネクス<5998>の中長期の成長戦略
1. 中期経営計画の最終年度目標値の下方修正
以前の中期経営計画は、2020年3月期の売上高を35,000百万円、営業利益を4,000百万円、売上高営業利益率11.4%を目標値として掲げた。しかし、進捗状況から目標値が現状にそぐわなくなっていたため、見直しを表明していた。今回、新たな目標値を発表した。中期経営計画における2021年3月期のマイルストーンを売上高26,500百万円、営業利益1,200百万円、売上高営業利益率4.5%におき、さらに最終年度の2023年3月期に売上高31,500百万円~35,000百万円、営業利益2,500百万円~3,000百万円を目指すとした。2018年3月期の予想をベースとした3ヶ年の予想CAGRは、売上高で9.8%増、営業利益で44.2%増と利益面での大幅な伸びを見込む。ただし、精密ばね事業に限定した売上高と売上高営業利益率の推移では、過去のレンジ内の水準である。
見直しに至った要因として、OA機器向けの売上高が計画比半減、新工場の進捗遅れ、円高が挙げられている。OA機器向けでは、プリンターの構造変化により一部金属部品が不要化された。自動車向けは、品質マネジメント規格がTS16949からIATF16949へアップグレードしたため、新設した埼玉工場の欧米自動車向け量産開始時期が1年半遅れた。医療向けは、プロジェクトは進むものの、検証期間が想定以上にかかっている。また、新製品を新規分野で販売するインフラ向けの市場開拓は、複雑な流通経路のため浸透に手間取っている。前中期経営計画での想定レートは、1米ドル当たり120円を前提としていたが、今回は110円と円高寄りに改めた。新興国では、ほとんどの地域で人件費が高騰し、チャイナ・リスクも勘案せざるを得なくなった。また、人材採用難に直面しており、特に想定外の技術者不足が、新規受注、立ち上げ、生産拡大、技術指導などすべてにおいて影響している。マンパワー不足と財務バランスを考慮して、一部投資案件を見送ることとなった。また、2回の地震を経験して、新潟工場のリノベーションなどやむを得ない費用が発生している。
2. 中期経営計画の戦略
経営戦略の大きな変更はない。
(1) エリア戦略
チェコ、インド、ベトナム第2工場の新設計画を完了し、海外18工場とする。チェコとベトナム第2工場は、面積がそれぞれ8,000平米程度の大型工場となる。2019年3月期までの8年間で、グローバルな生産面積は2倍となる。年間設備投資額は、2018年3月期の25億円超ほどではないものの、その後も年間20億円程度の高水準が続く見込みだ。
(2) 市場戦略
2023年3月期の市場別売上高構成比の計画は、自動車が50%、OA機器、医療、インフラ・住設が各10%、その他が20%とした。これまでOA機器向けの売上高が半減してしまっていることから、OA機器の比率を以前の20%から10%へ引き下げ、自動車の構成比を40%から50%へ引き上げた。市場戦略としては、自動車、医療、インフラ・住設を重点分野とし、さらに二次電池、航空機などに注力する。
自動車向けは、量産効果が大きい上、メガサプライヤーからのグローバルな注文がくる。この3年間で、新規顧客が数百社増えた。例えば同一部品の受注が、日本から始まり、タイ、中国、インドと展開される。自動車部品は、引き合い、見積り、設計・試作の繰り返しなどの工程を経てから2~3年後に量産開始となる。海外における追加的な受注では、設計・試作の工程が省かれる。生産量が増加することで習熟度が高まり、顧客からのコストダウン要求にも対応できるようになる。中期経営計画において利益率が大きく改善する要因として、増収率ほど販管費などの経費が増えないことが挙げられている。
収益性の高い医療市場では、前期に顧客におけるジェネリック喘息薬の認定取得が遅れたため、想定外の減収となった。2018年3月期におけるイベントとしては、第1四半期にカテーテルハブの量産開始、第3四半期に留置針用ばねの増産、第4四半期にジェネリック喘息薬の開始が予定されている。来年度は、アメリカ工場での量産開始とチェコ工場の操業入りが計画されている。2021年3月期になると、自己注射器用ばね及び深絞り加工品の量産開始が見込まれている。従来、欧州など高齢化が進む先進国を主要市場としてきたが、人口の多い新興国でもライフスタイルの変化により生活習慣患者数が爆発的に増加している。医療関連の顧客も世界展開を行っていることから、同社のグローバル供給体制が強みとなる。
(3) 製品戦略
タングレス・インサート、インサートカラー、ロックワンなど規格品のラインナップを拡充し、グローバルに販路を広げる。海外で需要が旺盛なインサートモールド・深絞り加工品は、海外工場への技術移転を進めて、需要を取り込む。
(4) M&A戦略
とがった技術を持つ企業もしくは販路拡大に寄与する企業を引き続きM&Aの対象とする。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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1. 中期経営計画の最終年度目標値の下方修正
以前の中期経営計画は、2020年3月期の売上高を35,000百万円、営業利益を4,000百万円、売上高営業利益率11.4%を目標値として掲げた。しかし、進捗状況から目標値が現状にそぐわなくなっていたため、見直しを表明していた。今回、新たな目標値を発表した。中期経営計画における2021年3月期のマイルストーンを売上高26,500百万円、営業利益1,200百万円、売上高営業利益率4.5%におき、さらに最終年度の2023年3月期に売上高31,500百万円~35,000百万円、営業利益2,500百万円~3,000百万円を目指すとした。2018年3月期の予想をベースとした3ヶ年の予想CAGRは、売上高で9.8%増、営業利益で44.2%増と利益面での大幅な伸びを見込む。ただし、精密ばね事業に限定した売上高と売上高営業利益率の推移では、過去のレンジ内の水準である。
見直しに至った要因として、OA機器向けの売上高が計画比半減、新工場の進捗遅れ、円高が挙げられている。OA機器向けでは、プリンターの構造変化により一部金属部品が不要化された。自動車向けは、品質マネジメント規格がTS16949からIATF16949へアップグレードしたため、新設した埼玉工場の欧米自動車向け量産開始時期が1年半遅れた。医療向けは、プロジェクトは進むものの、検証期間が想定以上にかかっている。また、新製品を新規分野で販売するインフラ向けの市場開拓は、複雑な流通経路のため浸透に手間取っている。前中期経営計画での想定レートは、1米ドル当たり120円を前提としていたが、今回は110円と円高寄りに改めた。新興国では、ほとんどの地域で人件費が高騰し、チャイナ・リスクも勘案せざるを得なくなった。また、人材採用難に直面しており、特に想定外の技術者不足が、新規受注、立ち上げ、生産拡大、技術指導などすべてにおいて影響している。マンパワー不足と財務バランスを考慮して、一部投資案件を見送ることとなった。また、2回の地震を経験して、新潟工場のリノベーションなどやむを得ない費用が発生している。
2. 中期経営計画の戦略
経営戦略の大きな変更はない。
(1) エリア戦略
チェコ、インド、ベトナム第2工場の新設計画を完了し、海外18工場とする。チェコとベトナム第2工場は、面積がそれぞれ8,000平米程度の大型工場となる。2019年3月期までの8年間で、グローバルな生産面積は2倍となる。年間設備投資額は、2018年3月期の25億円超ほどではないものの、その後も年間20億円程度の高水準が続く見込みだ。
(2) 市場戦略
2023年3月期の市場別売上高構成比の計画は、自動車が50%、OA機器、医療、インフラ・住設が各10%、その他が20%とした。これまでOA機器向けの売上高が半減してしまっていることから、OA機器の比率を以前の20%から10%へ引き下げ、自動車の構成比を40%から50%へ引き上げた。市場戦略としては、自動車、医療、インフラ・住設を重点分野とし、さらに二次電池、航空機などに注力する。
自動車向けは、量産効果が大きい上、メガサプライヤーからのグローバルな注文がくる。この3年間で、新規顧客が数百社増えた。例えば同一部品の受注が、日本から始まり、タイ、中国、インドと展開される。自動車部品は、引き合い、見積り、設計・試作の繰り返しなどの工程を経てから2~3年後に量産開始となる。海外における追加的な受注では、設計・試作の工程が省かれる。生産量が増加することで習熟度が高まり、顧客からのコストダウン要求にも対応できるようになる。中期経営計画において利益率が大きく改善する要因として、増収率ほど販管費などの経費が増えないことが挙げられている。
収益性の高い医療市場では、前期に顧客におけるジェネリック喘息薬の認定取得が遅れたため、想定外の減収となった。2018年3月期におけるイベントとしては、第1四半期にカテーテルハブの量産開始、第3四半期に留置針用ばねの増産、第4四半期にジェネリック喘息薬の開始が予定されている。来年度は、アメリカ工場での量産開始とチェコ工場の操業入りが計画されている。2021年3月期になると、自己注射器用ばね及び深絞り加工品の量産開始が見込まれている。従来、欧州など高齢化が進む先進国を主要市場としてきたが、人口の多い新興国でもライフスタイルの変化により生活習慣患者数が爆発的に増加している。医療関連の顧客も世界展開を行っていることから、同社のグローバル供給体制が強みとなる。
(3) 製品戦略
タングレス・インサート、インサートカラー、ロックワンなど規格品のラインナップを拡充し、グローバルに販路を広げる。海外で需要が旺盛なインサートモールド・深絞り加工品は、海外工場への技術移転を進めて、需要を取り込む。
(4) M&A戦略
とがった技術を持つ企業もしくは販路拡大に寄与する企業を引き続きM&Aの対象とする。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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