「ロシアゲート」疑惑本格追及で、どうなるトランプ政権?

著者:津田隆光
投稿:2017/05/26 18:18

注目の“コミーメモ”。“ディープ・スロート”(密告)となり得るか?

次週から始まる6月相場。6月8日の英総選挙や、同11・18日の仏国民議会選挙、そして同13-14日の米FOMCといった重要イベントが目白押しの中、引き続き相場の中心軸にはやはりこの御仁、トランプ大統領がいることを念頭に置くべきでしょう。

そのトランプ大統領は、就任後初の外遊となる中東歴訪を終え、イタリア南部タオルミーナで開催される先進7ヵ国首脳会議(G7サミット、26-27日)に参加する予定となっています。
その外遊後に本国・アメリカで待ち受けているのが、いわゆる「ロシアゲート」疑惑の本格的な追及。
当初24日に予定されていたコミー前米連邦捜査局(FBI)長官に対する公聴会が、本人の希望により延期され、休み明けとなる30日以降に開催される見通しに。

25日付の米ワシントンポスト紙とNBCニュースによると、この「ロシアゲート」疑惑に関して、トランプ大統領の娘婿で、トランプ大統領が絶大な信頼を寄せるクシュナー大統領上級顧問がFBIの捜査対象に入っているとの報道が。
仮に、トランプ大統領にとって側近中の側近、いわば“右腕”であるクシュナー氏に対して「ロシアゲート」疑惑に関する捜査のメスが入るような事態になれば、トランプ政権にとっては極めて大きなダメージとなり得ることは疑いようもありません。

23日に下院情報委員会で行われたブレナン前米中央情報局(CIA)長官によると、「昨夏、ロシアが米大統領選挙に影響を与えようとしていたことは明白」と証言し、また「ロシア当局者とトランプ陣営と関係のある米国人との間で行われたやり取りを露呈した情報や諜報を目にした」との発言もなされました。
この証言と合わせて、30日以降に予定されている公聴会でのコミー前長官の証言、さらにはその証拠として提出されるであろう“コミーメモ”(=トランプ大統領との会話について記載したコミー氏の詳細なメモ)こそが、40年以上前の「ウォーターゲート事件」で当時のニクソン大統領にとって致命傷となり得た【ディープ・スロート】(密告)となる可能性も。

一方で、仮に“コミーメモ”やその他証言によって、合衆国憲法第2条第4節に記載される「反逆罪」、「収賄罪」、「その他重罪および軽罪」につき弾劾相当となされた場合であっても、まずは下院において過半数の賛成(同意)を得た上で、その後上院での弾劾裁判において3分の2以上の賛成(同意)を得る必要が。

米国の歴史上においても、弾劾裁判にかけられた大統領は、1867年のアンドリュー・ジョンソン氏と1998年のビル・クリントン氏の2名しかいなく、しかも2名とも最終的には罷免回避となっていることもあり、そう簡単に事が運ぶ(トランプ大統領の弾劾→罷免)と思わない方がいいのかもしれません。

足もとでは、5月30日以降に予定されているコミー元長官による証言内容と、その後の議会の動きからは目が離せそうにありません。
津田隆光
マネースクエア チーフマーケットアドバイザー
配信元: 達人の予想