人材募集・派遣大手は海外展開を積極化

著者:冨田康夫
投稿:2016/06/01 11:25

<話題の焦点>

 4月の有効求人倍率が1.34倍と約24年5カ月ぶりの高水準に達するなど足もとの国内雇用環境は改善をみせている。一方で、中長期的にみれば、少子高齢化傾向に歯止めが掛からないなかで、労働人口の減少は継続する見通しにある。こうしたなか、人材募集・派遣の大手各社は、M&A(企業の合併・買収)を積極化することで海外展開を加速している。

 リクルートホールディングス<6098>は、2004年に中国進出を果たしたことを皮切りに、本格的にグローバル展開を進めている。2010年以降には、欧米・アジアを中心に実績のある現地企業を次々とグループに収め、現在では世界16の国と地域、約900拠点にまで展開を拡大している。同社は、海外展開について「グローバル No.1」、「海外売上比率50%(16年3月期実績は35.9%)」という目標を掲げている。16年3月期の国内人材派遣事業の売上高は、4141億円(前期比6.3%増)と前期比1ケタ台の伸びにとどまったものの、海外での人材派遣事業は4758億円(同66.6%増)と極めて高い伸びを示している。

 テンプホールディングス<2181.>もM&Aによって海外での事業規模を拡大している。2010年に米大手との戦略的提携により海外展開を進め、13年には米大手投資ファンドから持ち株を譲り受け総合人材サービス会社のインテリジェンスを買収。15年は、シンガポールのキャピタ社をはじめとして国内外で積極的にM&Aを実施。さらに、今年4月には米大手のケリーサービスとの合弁事業でエリア拡大を図っている。同社は2020年3月期を最終年度とした中期経営計画を策定。最終年度の売上高は7500億円(16年3月期実績は5175億9700万円)、営業利益450億円(同280億5200万円)としている。

 アウトソーシング<2427>は、従来の製造派遣事業主体から総合人材サービスへ転換して業績拡大を目指す。16年12月期は、豪州、シンガポールなどでの大型M&Aや、前期にM&Aで進出した欧州、南米での事業が順調な滑り出しをみせていることにより、海外部門が大きく拡大する見通しだ。16年12月期の連結業績は、売上高1340億円(前期比65.7%増)、54億円(同72.8%増)と大幅増収増益を見込んでいる。

 ジェイエイシーリクルートメント<2124>は、もともとイギリス発祥の外資系企業で、日本とイギリス以外にも海外拠点を持ち、現地ならではの求人情報のサービスも実施している。また、東南アジアの求人にも強みを発揮しアジア圏だけでなく、北米・南米・ヨーロッパ各国の求人も豊富にそろっている。また、国内の他の転職エージェントに比べて外資系の海外転職求人がかなり多いのも特長。さらに、4月には豪州や英国で新にM&Aを実施している。同社は16年12月期の連結業績を売上高134億4200万円(前期比20.0%増)、40億5200万円(同15.1%増)と見込んでいる。
冨田康夫
株経ONLINE:編集長
配信元: 達人の予想