■みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
経済アナリスト、木下晃伸(きのした・てるのぶ)です。
■11日前場の香港株式市場でハンセン指数は反落。
前引けは前日比87.48ポイント(0.59%)安の1万4657.15となりました。
下げ幅は一時500ポイントを超え、1万4100台まで下げたことを考えれば、
底堅く推移したと言えなくもありません。
■ただし、昨日発表があった中国の内需拡大策を考慮すれば、
本日も株価が上昇してもおかしくはない、とも言えます。
本日は、中国で発表された内需拡大策に加え、金融状況、
ならびに世界的な消費状況についてお伝えできればと思います。
それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします!
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●【中国】2年で57兆円投資、政府が内需拡大に本腰[経済]
●【英国】HSBC、第3四半期は増益達成[金融]
●【台湾】華碩の10月売上高、前月比1割減[IT]
※ニュース提供/NNA(http://www.nna.jp/)
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●【中国】2年で57兆円投資、政府が内需拡大に本腰[経済]
国務院(中央政府)はこのほど、企業向け減税などを柱とする
内需拡大策10項目を新たに打ち出し、今後2年間で
計4兆元(57兆1,200億円)を投資する計画を明らかにした。
まず今年第4四半期(10~12月)に1,000億元(約1兆4,280億円)を投じる。
大規模な財政出動に加え、通貨政策も緩和する方針で、
当局が内需拡大による経済の減速防止に本格的に乗り出した。
先ごろ開かれた国務院常務会議で決定した。
打ち出された内需拡大策は、来年1月からの増値税改革などを通じた
1,200億元規模の企業向け減税のほか、
◇低所得者向け住宅の建設加速
◇農村部基礎インフラの整備加速
◇鉄道、道路、空港などの建設加速
◇医療、衛生、文化事業の発展加速
◇生態環境の建設加速
◇総量規制の撤廃
などを通じた、金融業による経済発展支持-など。
経済成長の維持を目的に、公共投資を通じて内需の刺激を図り、
冷え込む景気を下支えする方針。
このほか来年に予定していた震災被害の復興事業を前倒しで実施、
年内に200億元を投資することも決まっている。
【木下コメント】
政府の内需拡大策の発表を好感し、10日の中国株式市場は急騰。
上海総合指数は127.09ポイント(7.27%)高の1874.80と、
一気に1800ポイントを回復して引けた。深セン市場も、6.5%の大幅高で終了。
政府発表のほか、物価上昇が落ち着き始めたことも好材料視されたもようだ。
ただし、長続きはしていない。本日は、上海総合株価指数は前日比安くなっている。
ただし、金融恐慌から実体経済の悪化に焦点が移っている中で、
GDP比16%にものぼる対策は、期待が出来る。
ビジネス上においては、中国は堅調だからだ。
実際、中国米国商工会議所によると、中国に進出している米国企業のうち89%が、
今後5年間の中国での事業展開について「楽観視している」と
回答していることが分かった。同会関係者によると、
回答した企業のうち昨年に黒字を計上したのは74%。
財政黒字、膨大な外貨準備高を考えれば、中国経済は今後も順調な成長を遂げる。
中国が世界経済悪化の防波堤となりうる可能性も秘めている。
中国への投資に一歩踏み出すタイミングとして、
現在は決して悪いタイミングではないと考えている。
●【英国】HSBC、第3四半期は増益達成[金融]
金融で英最大手のHSBCホールディングスは10日、
第3四半期(7~9月)の税引き前利益が前年同期を上回ったと明らかにした。
アジアをはじめとする新興市場で収益が伸び、
米国のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)関連の
損失を相殺した。
米国の消費者金融事業は
貸倒引当金が第2四半期から7億ドル増え、43億ドルに達した。
財務の健全性を示すTier1レシオ(基本的項目の自己資本比率)は
9月末時点で8.9%と、目標とする7.5~9%の上限近くを実現している。
同行はグループの四半期決算を公表していない。
1~9月の税引き前利益は1年前を下回ったという。
【木下コメント】
一部金融機関の業績に底打ち感が見られてきた。
ただ、1-9月期の税引き前利益が1年前を下回ったことを嫌気し、
本日は下落基調となっている。
※HSBC Holdings plc (Hong Kong) (Public, HKG:0005)
http://finance.google.com/finance?q=HKG%3A0005
しかし、危機は過ぎ去った訳ではない。
特に注目したいのが、
金融恐慌が新興国の債務不履行(デフォルト)リスクを引き起こしている点だろう。
ラトビアでは、ゴドマニス首相は9日、国内2位の銀行
パレックス・バンカ(Parex Banka)を国有化すると発表した。
パレックスは今回の世界的な金融危機を背景に
政府の救済措置を受ける国内初のケース。
また、健全性がたたえられていたスペイン最大の金融機関バンコ・サンタンデールは
10日、株主割当増資で72億ユーロ(9,200億円)を調達する計画を発表した。
同行は米国のサブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題の
影響が小さく、1~9月期の連結決算で
5.5%の最終増益を果たしているにも関わらず、だ。
もちろん、こういった事態がそのまま新興国リスクに飛び火すると
短絡的に考える必要は無い。しかし、市場が不安心理に喘いでいる中では、
疑心暗鬼になりかねない。
14日、15日に開催が予定されている金融サミットで、
金融恐慌への対処に注目が集まる。
●【台湾】華碩の10月売上高、前月比1割減[IT]
華碩電脳(ASUS)の10月売上高は267億台湾元で、
伸び率は昨年同月比9%増だったが前月比では12%減となった。
世界的な金融危機でマザーボード(MB)やノートブック型パソコン(ノートPC)、
低価格ノートPC「Eee PC」などの出荷が予測より伸びなかったことが
前月比減収の要因となったようだ。
証券筋では、今四半期の売上高は前期の783億元を下回る約750億元になるとみている。
10月の売上高は昨年同期比26%増の2,260億元だった。
【木下コメント】
金融恐慌が世界的な需要後退を起こしている。
それは、北米向けはもちろんのこと、ここまで新興国をも巻き込んだ形になるとは、
数ヶ月前には想定できなかったのではないだろうか。
実際、飛ぶ取りを落とす勢いで成長していた韓国造船業界では、
造船・海運専門の調査会社の英クラークソンによると、
10月の韓国の造船の受注量は21万1,849CGT(標準貨物船換算トン)で、
前月(65万CGT)の約3分の1まで落ち込んだことが分かった。
前年同月比では91.0%減と急減している。
世界的な景気減速で、海運および船舶金融市場が停滞しており、
世界的に発注量が激減している影響をモロに受けている。
また、インド自動車工業会(SIAM)が11日に発表した10月の自動車新車販売台数は、
乗用車が前年同月比6.6%減の9万8,900台にとどまった。
乗用車のメーカー別販売台数は、最大手のマルチ・スズキが6.4%減の5万2,153台。
世界的な消費減退が、世界の株式市場を冷やしている。
早晩に回復するということも期待しづらい。
いままで北米、新興国の消費で成長してきた企業への投資は、
もう一段待つタイミングではないだろうか。
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編集後記
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嫌なニュースばかりが目につきます。
ただ、こうした嫌なニュースばかりが目についているとき、
“光明”が見えることがあります。
いまはなかなか光明が見えてきませんが、注意を払っておくことが重要だと思って、
メールマガジンを発行していきたいと思います。