国内発の材料で深く沈み込むことは考えにくいが・・・

優利加さん
優利加さん
昨日の米国株式相場は高安まちまちとなった(DJIA +71.37 @34,869.37, NASDAQ -77.73 @14,969.97)。ドル円為替レートは111円台前半の前日比円安水準での動きだった。本日の日本株全般は高安まちまちとなった。東証1部では、上昇銘柄数が1,033に対して、下落銘柄数は1,057となった。騰落レシオは150.44%となり、遂に150%台まで上昇して来た。東証1部の売買代金は3兆8105億円。

TOPIX -6 @2,082
日経平均 -56円 @30,184円

米国株式相場は高安まちまちとなったため明確な株価材料とはならなかった。しかし、米長期金利は8月上旬には歴史的な低水準である1.1%台まで低下していたのに、足元ではブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)が2.3%台と歴史的な高水準で推移しているため、昨日までに1.5%台前半(3カ月ぶりの水準)まで上昇した。ハリケーン「アイダ」の被害によりメキシコ湾からの供給が減少したことで供給が不足して価格を押し上げている。そのため原油先物価格も3年ぶりの高値まで上昇して来ており、人手不足と半導体不足も重なり消費者物価指数は高い水準で推移している。WTI原油先物価格は一時、1バレル=76ドル台まで上昇した。これらを嫌気してハイテク株が中心のナスダックが下げた。これを受けて、東京市場でも値がさ半導体関連銘柄が下落した。これに中国経済の先行き不安も重なり、日経平均の下げ幅は一時200円を超えて30,000円ちょうどまで下げた。

イールドカーブは8月から9月にかけてはフラット化していたものが、足元ではスティープ化(立ってきた)している。イールドカーブのフラット化は景気減速局面の特徴なので警戒感が高まってきた。2年物のような短期では政策金利が引き上げられて上昇し、10年物などの長期では先行きの景気減速を織り込んで下がるからイールドカーブはフラット化する。

ドル円相場は3カ月ぶりに111円台の円安水準となってきた。米国FRBが年内にも段階的に量的金融緩和を縮小し始める(テーパリング開始)ことが直接の原因であるが、市場はその先の利上げを2022年中にあると見て長期金利が先取りして上昇しているからである。さらに、国際商品相場が上昇して来たため、交易条件が悪化して日本が貿易赤字に転じたことも影響している。8月の貿易統計によれば、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は3カ月ぶりの赤字に転じた。通常は円安となれば輸出が増加するはずだが、今回は原油輸入額が大幅に増加したため、資源価格高騰の悪影響の方が大きかった。8月の企業物価指数で裏を取ると、前年同期比で円ベースの輸入物価指数は22.9%上昇したのに対して、輸出物価指数は10.9%増にとどまった。輸入物価の価格転嫁が進んでいないことを示している。多くの日本企業は1985年秋のプラザ合意以降の急激な円高に対応して海外に生産拠点を移したため、円安になってもかつてほど輸出が増えない構造に変化した。その分だけ交易条件が悪化した。さらに、日本人の所得が過去30年間ほとんど増えていないのだから、不用意に価格転嫁すれば売り上げが急減しかねないので、怖くてできないというのが実情だろう。9月末で緊急事態宣言が解除されると、国内需要の高まりとともに輸入需要も上昇するのでますます輸入額は増えて貿易赤字は増加しそうだ。そうなると、円安はもう少し進むと見ておこう。

日経平均の日足チャートを見ると、ほぼ水平の10日移動平均線の少し下に沈み込んだ。しかし、新型コロナウィルスの新規感染者が明確に減少してきているために緊急事態宣言が解除される状況では、国内発の材料で深く沈み込むことは考えにくい。しかし、米国株の急落等、海外発の悪材料はそれなりに堪えるだろう。

33業種中18業種が下げた。下落率トップ5は、海運(1位)、精密機器(2位)、空運(3位)、その他製品(4位)、サービス(5位)となった。

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