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金融倒産爆弾に揺さぶられる有名一流企業“21社”

 リーマン・ショックが老舗ホテルを直撃した。明治期に創業したJR品川駅前の「京品ホテル」が20日、突然の廃業に見舞われた。経営破綻した米証券リーマン系列のノンバンクに対する計60億円の債務返済が理由だ。京品ホテルは昨年1億円近い利益を出し経営は順調だっただけに、まさにトバッチリ倒産だが、これは決して他人事ではない。リーマン破綻を誘引し、世界中にバラまかれたCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる金融商品“爆弾”がいつどこで爆発するか分からないからだ。

●リーマンは7%にハネ上がって潰れた

「世界金融恐慌の元凶」と名指しされる「CDS」は、融資先や社債を発行した企業の倒産に備えた保険のような金融商品。買い手は、売り手に保証料を払い、倒産時には売り手から回収不能となった債権の元本補填を受ける仕組みだ。倒産の可能性が高いほど保証料率(スプレッド)が高いが、好景気時は企業の破綻リスクも小さいため、売買双方がこぞってCDS取引を拡大。世界のCDS市場の取引残高は6月末時点で54兆ドル(約5400兆円)に上り、世界のGDP(48兆ドル)を上回る状況だ。

「CDSは好景気時は売買双方にメリットがある。だが、もともと“損失リスク”をやりとりするため、株価下落などで企業の破綻懸念が高まればスプレッドが急騰。企業は信用力が落ちて資金調達が難しくなり、さらに破綻懸念が高まるという悪循環に陥る。破綻したリーマンも、直前のスプレッドが3%から7%に跳ね上がった」(経済ジャーナリスト)

 三菱UFJ証券の藤戸則弘氏はリポートで、このCDSスプレッドを企業の“平均余命”を判断する傾向値として着目。それによると、スプレッドが(1)2%を超えるとイエローカード(2)4%でレッドカード(3)7%で破綻を強く意識(4)10%でファイナルカウントダウン――になるというのだ。

 東京金融取引所が公表している上場企業を対象にした各社のCDSスプレッド(参考値・21日)を見ると、“イエローカード”を超える会社は21社(別表)。消費者金融、航空、建設……と日本を代表する企業がズラリだ。

「現在の市場でCDSスプレッドは企業の信用度を測る究極のバロメーター。それが証拠に、スプレッドが高い企業は最近の上昇市況でも株価は一部を除いて安値に張り付いたまま、何ら変化がありませんでした。経営不安がささやかれる米GMのスプレッドは今や50~60%という異常数値です」(証券アナリスト)

 前出の藤戸氏もリポートでこう指摘する。

「『あの大企業が』という規模の論理は通用しない。規模の大小にかかわらず破綻リスクに直面する――これが今回の恐ろしさである」

 今後、要警戒だ。

【上場企業のCDSスプレッド(参考値)】
◇企業名/スプレッド
◆アイフル/16.14
◆武富士/13.64
◆日本航空/9.41
◆ソフトバンク/7.65
◆プロミス/4.32
◆オリックス/4.05
◆全日本空輸/3.9875
◆住友不動産/3.9125
◆日興コーディアルグループ/3.8
◆西松建設/3.194
◆荏原製作所/3.095
◆大成建設/3.025
◆アコム/2.97
◆IHI/2.7675
◆鹿島建設/2.265
◆丸紅/2.2565
◆パイオニア/2.2
◆NECエレクトロニクス/2.1733
◆日産自動車/2.0774
◆野村ホールディングス/2.0167
◆伊藤忠商事/2.0125
(東京金融取引所調べ=21日。単位は%)

(日刊ゲンダイ2008年10月22日掲載)
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