■みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
経済アナリスト、木下晃伸(きのした・てるのぶ)です。
■週明けの世界株式市場は、好調なスタートとなりました。
先週までの乱高下からすれば
ホッと胸をなでおろす投資家も多いかもしれません。
まだまだ先行きは不透明な環境が続きますが、
こうしたときほど情報で理論武装していく必要があります。
今日は、不安になる情報と、安心できる情報と両面からお伝えしています。
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●【中国】人民元、金融危機で来年は2%下落[経済]
●【韓国】銀行の対外債務を3年間保障、政府が金融対策[金融]
●【中国】中国投資、米ブラックストーン権益拡大へ[金融]
※ニュース提供/NNA(http://www.nna.jp/)
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●【中国】人民元、金融危機で来年は2%下落[経済]
中金公司によると、来年の人民元の対米ドルでの相場は
2%切り下がるとの予測を発表した。
世界金融危機による外需の落ち込みで輸出が大幅に減速し、
ホットマネーの国内への流入も減ることなどが背景にあるとした。
通貨バスケット制への移行以降、当局は人民元の上昇を認めているが、
来年は国内景気の減速感が明らかになり、これまでの上昇基調から
転換する可能性があるとの見方を示した。
また、海外企業が世界で資金不足になる中、中国に留めてあった資金を
引き揚げる例が増え、人民元に対する需要が減る可能性もあるとした。
香港大公報が伝えた。<全国>
【木下コメント】
景気後退の波が、世界景気拡大のエンジンであった米国消費が
躓いたことで新興国にも押し寄せている。
中でも、人民元が“切り下がる”という発想まで湧き上がっていることに、
中国の心配を見てとれる。
また、各地でも倒産が目立つようになってきた。
香港では、創業62年の老舗家電チェーン「泰林」が17日、
全13店舗で突然営業を停止し、裁判所に清算の申し立てを行った。
また、経営危機が伝えられていた上場宝飾品チェーンの金至尊珠宝(
3Dゴールド)も同日、債権行が裁判所に清算の申し立てを行い、
デロイト・トウシュ・トーマツが臨時管財人に就いたことが分かった。
香港で、ここ数カ月の間に倒産や経営危機が伝えられた大手企業は、
このほかにも時計製販の宜進利(ピースマーク・ホールディングス)、
水着・カジュアル衣料チェーンの徳発集団国際、カジュアル衣料チェーンの
佑威国際(ユーライト・インターナショナル)などがあり、特に小売業や
製造業の経営環境が急速に悪化していることがうかがえる。
本来、日銭が入る業態は不況に強いはずだが、それを超える景気悪化と
資金繰り悪化が鮮明に出始めていることになる。
北米のクリスマス商戦に目が行きがちだが、
アジア各国でも、苦しい展開が続いている。
しばらくは、下落のリスクを考慮する慎重な投資家が多い
という全体感を持っておくことは必要だ。
その中で、足元の下落リスクを耐えながら上昇を待つ、
強い精神が投資家にいま求められている。
●【韓国】銀行の対外債務を3年間保障、政府が金融対策[金融]
韓国政府は19日、銀行の対外債務を3年間保障することなどを盛り込んだ
金融安定化策を発表した。
米ドルとウォンの流動性拡大や株式市場の安定などが狙い。
政府の対策は為替市場の安定や企業の資金事情の改善につながると期待されるが、
一方では世界の金融不安が長期化して
内需や輸出など実体経済にも影響がでる可能性があると懸念されている。
政府は、国内銀行(海外支店含む)で今月20日から来年6月30日までに
発生する対外債務について、3年間の政府保障を行うことを決めた。
保障規模は1,000億米ドル(約10兆1,650億円)以内となる見込み。
20日から国会での同意を得るまでの間は、
銀行の対外債務を産業銀行と輸出入銀行が保障。
国会同意後には政府が直接保障する。
外貨建てへの政府保障は、米国発金融危機以降、
主要国政府も信用収縮を改善するため行っており、これに協調した形となる。
銀行の米ドル不足はウォン安・米ドル高につながるなど、
為替市場の最も大きな不安要因となっている。
さらに、政府と韓国銀は300億米ドルの追加流動性を市場に供給する。
政府関係者によると、200億米ドルは輸出入銀行を通じて行われ、
100億米ドルは韓国銀が競争入札などさまざまな方法で行う。
これまで、スワップ資金100億米ドルと
輸出入銀行を通じて50億米ドルが支援されている。
ウォンについては、韓国銀が金融市場に買戻し条件付き債券(RP)の買い入れや
通貨安定証券の中途償還などを通じて、緊急のウォン流動性を供給する。
証券市場の安定に関しては、長期株式型ファンドに3年以上加入した場合、
四半期別に300万ウォン、年間1,200万ウォン以内で納入金を5~20%所得控除する。
3年間の配当所得も非課税とすることなどを決めた。
資金難に苦しむ中小企業の支援については、
政府が企業銀行に保有している株式や債券など1兆ウォン規模の現物を出資する。
これにより企業銀は約12兆ウォンの追加融資が可能になるとみられる。
【木下コメント】
日米欧の足並みをそろえた金融恐慌への対応が、
投資家の過度の不安を抑えている。
実際、JPモルガン・チェースや日本の三菱UFJフィナンシャル・グループなど、
財務基盤が安定している金融機関は、
金融恐慌の中でも株価は大きく下落していない。
では、金融恐慌によって、株価はなぜ大きく下落したのか。
それは、かつて94年メキシコ、98年アジアで見られたような
“新興国の倒産”というコンフィデンス・クライシス
(信認の危機)によるものである。
実際、新興国の債券を扱う米国ETF
「iShares JPMorgan USD Emer Mkt Bnd Fd ETF (Public, NYSE:EMB)」では、
7月より100を切り、9月に入った後は急速に価格を下げている。
※iShares JPMorgan USD Emer Mkt Bnd Fd ETF (Public, NYSE:EMB)
http://finance.google.com/finance?q=NYSE%3AEMB
“国が倒産しなければ100で戻る”わけだから、
どれほど投資家が新興国に対して不安を抱いているか分かるだろう。
では、本当にまずいのか。
上述の韓国に加え、香港では、香港金融管理局(HKMA)と香港政府は今月14日、
外為基金を個人預金の保護や銀行の資本増強に使えるようにする
臨時の金融安定化策を発表している。
さらに、シンガポールでも金融管理庁(MAS)と財務省が16日、
国内金融機関のSドルおよび外貨建て預金を全額保護すると発表している。
シンガポールの発表後、マレーシアも金融機関の預金保護策を発表した。
今は過度の悲観に世界中が覆われている。
そのため、今が株式市場の底であると断言することは難しい。
しかし、世界恐慌の安定化に向けて着実に動き出していることも事実。
弱気になる必要はない。
●【中国】中国投資、米ブラックストーン権益拡大へ[金融]
外貨準備の運用を主要業務とする中国政府系投資ファンド、
中国投資有限責任公司が、保有する米投資会社大手のブラックストーン株を、
現在の9.9%から12.5%まで拡大する計画だ。18日付北京日報が報じた。
ブラックストーンは世界最大のプライベート・エクイティー・ファンド。
中国投資は2007年5月、30億米ドル(約3,000億円)を投資して
9.9%を取得していたが、
その後の米金融危機で60%以上の含み損が生じているとされる。
中国投資が今回買い増す背景には、安値になった
ブラックストーン株の投資額の平均コストを引き下げる狙いとみられる。
ただ金融危機の影響はまだ収束していないとの見方は多い。
中国投資は昨年末、米モルガン・スタンレーに50億米ドル(約5,000億円)を
出資し、同様に約9.9%を保有している。
モルガンはサブプライムローン問題で多大な痛手を被っており、
中国投資の投資にも影響が出ているとみられるなか、
今回の投資を不安視する向きも出ている。<全国>
【木下コメント】
今は不安が不安を呼び、積極的な投資家が姿を消している。
かつては、欧米金融機関の不良債権処理の過程で
積極的な投資家としてSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)などが
大規模な増資に応じていた。
しかし、その後の株価下落によって、彼らの体力は落ち、
今回の金融恐慌の局面では、まったくといっていいほど
資本参加する動きはなかった。
その中で、中国投資がブラックストーン株を買い増す決断をしたことは、
再びマネーの流れが変わろうとしている息吹のようだ。
世界各国が金融恐慌に対応すべく足並みを揃え、
これから回復に向かうため一丸となっている状況を感じ取っているのだろう。
信用収縮は「時が癒す」。いずれ信用収縮から拡散に向かう時、
マネーはSWFを経由して規模を増すことだろう。
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編集後記
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●ヨーロッパ
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NNA.EU
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提供していきたいと考えています。引き続きよろしくお願いいたします。