米長期金利の上昇が閾値を超えたため株価は急落した

優利加さん
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昨日の米国株式相場は大幅反落した(DJIA -559.85 @31,402.01, NASDAQ -478.54 @13,119.43)。ドル円為替レートは106円台前半の前日比円安水準での動きだった。本日の日本株全般は下げる銘柄が多かった。東証1部では、上昇銘柄数が172に対して、下落銘柄数は1,985となった。騰落レシオは102.58%。東証1部の売買代金は3兆6212億円。

TOPIX -62 @1,864
日経平均 -1,202円 @28,966円

想定していた悪いことが起こった。米国では新型コロナウィルス対策として巨額の財政出動が実施されることになっているが、新規感染者の減少傾向は明らかとなってきた。経済活動の回復はより確かなものとなりつつあり、インフレ率の上昇が懸念され、それに呼応してこの数週間、米長期金利が急上昇(一時1.61%に上昇)してきた。株価に大きなネガティブインパクトを与える閾値と見られていた1.5%を超えた。この動きを嫌気して米国株が大崩れした。それ流れを受けて日本株も大きく反落した。日経平均は2月5日以来、3週間ぶりに29,000円を割り込んだ。その下げ幅は2016年6月24日(英国のEU離脱が国民投票で決まったBrexit Shock)以来、約4年8カ月ぶりの大きさとなり、歴代の下げ幅では過去10番目の大きさだった。長期金利が上昇するとまず理論株価の下落が急速に起る成長株・ハイテク株(ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロンなど)が売られた。これに月末の持ち高調整の売りも加わり株式相場全体の下げを加速した。長期金利が大きく上がると債券価格が大きく下がり、株式と債券の両方をポートフォリオに入れているファンドは事前に決めたそれぞれの時価での比率に戻すため株式を売り、債券を買う「リバランス」をする必要がある。これが株価の下落を加速する。米長期金利の上昇に合わせるように日本の長期金利も上げてきた。新発10年物国債の利回りは0.175%となり、5年1カ月ぶりの高水準となった。日米だけでなく、イタリア、カナダでも長期金利が上がってきた。「実質金利=名目金利-インフレ率」であり、直近1週間では長い間マイナス圏にあった米国の実質金利が±0%近辺まで上昇してきた。パルエルFRB議長は2月23~24日の議会証言で、足元の金利上昇は「経済再開や経済成長への市場の期待の表れだ」として、2023年末まで政策金利をゼロ近辺に据え置く意思を表明した。政策金利は据え置いたとしても、経済が回復してくればFRBは資産購入の額を減らすなどして今まで拡大してきた金融緩和策を縮小方向に転換するだろう。それを市場は織り込み始めたと言える。

日経平均の日足チャートを見ると、昨日10日移動平均線の上に再浮上したばかりの株価は本日急反落して下値支持線と見られていた25日移動平均線も割り込んだ。数日以内に25日移動平均線を回復できないと調整期間が長くなり、調整幅も大きくなる可能性が高い。10月30日安値と2月1日安値を直線で結んだ上昇トレンドラインを割り込みそうなところまで下げてきた。来週も続落するようなら、この上昇トレンドラインを割り込むことになる。高値圏で伸び悩み始めて保ち合い相場になると買い玉一辺倒では分が悪いので売り玉も建ててバランスを取りながら相場の潮流の変化を感じ取るのが良いのだが、ほとんどの人は「買い」しか頭の中にない。だから下げ始めると祈ることしかできない。人生も相場もたった2つのことから成り立っている。自分でコントロールできることと自分ではコントロールできないこと。相場の動きは自分ではコントロールできないし予見できない。しかし、その動きにどう反応するかは自分の意志でコントロールできる。ほとんどの人は前者(決して正確に分かるはずのない株価の先を一生懸命予想しようとする)に夢中だが、後者(自分の意志でコントロールできる建玉操作)には意識すら向けようとしない。

33業種すべてが下落する全面安となった。下落率トップ5は、その他製品(1位)、電気機器(2位)、パルプ・紙(3位)、不動産(4位)、ガラス・土石(5位)となった。

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