不動産業などを中心に事業展開を行うクレアHDでは、クレアの現経営陣と株主側でちょっとしたバトルが展開されています。どのようなバトルが展開されているのか、その一端をご紹介します。
- 2019年から始まった異変
2019年に入り、クレアホールディングスではMTキャピタルマネジメント(小田祐次社長)とオリオン1号投資有限責任組合(岡本武之社長)を対象にした第三者割当増資を行いました。その規模は3000万株、およそ45億円です。
2019年末にはこの2社に対して追加で増資を行っており、これに伴い、不動産業の業務などが中心だったクレアは広告事業を行う会社を子会社化するなど、これまでの姿から変わろうとしていました。
この2回の増資によって、それぞれが10%ほどの株を手にしますが、のちにこの株をどちらも売買するようになり、「主要株主の異動に関するお知らせ」を何度も出す事態を招きます。
- 激震の2020年の夏
第三者割当増資によって株を手に入れた企業に触発されたのか、株式会社SEED(猪俣秀明代表取締役)や松林克美氏なども、同じように10%前後の株を手にしてから、売買を行っていました。
ちょうどこのタイミングでクレアはジールコスメティックスとの販売契約を結び、ダチョウ抗体関連の商品という武器を手に入れました。これに伴い、株価は急騰したことで、利益確定の動きがあったのかもしれません。筆頭株主が定まらない状況が続き、乱高下の状態が長く続くことになります。異常な事態が起こり始めます。そして、株価は安定し、パース社とも契約を結んだことで、7月6日の終値で1株175円まで上昇を見せました。
- 会社と株主の対立ポイント
株主側は7月に入り、臨時株主総会を招集するよう求めます。その中身は、ジールコスメティックスとの提携強化や、中小企業ホールディングスプロジェクトという計画の策定、そして、クレアから中小企業ホールディングス株式会社への変更です。これに伴い、取締役候補を用意し、経営陣を一新するよう要求したのです。
取締役候補の中にはジールコスメティックスの社長やオリオン1号投資有限責任組合の岡本武之社長なども含まれ、何かと問題を含んでいるのではないかと会社側は抵抗します。会社側はこれと別に、社外取締役を2人選任することを決め、11月20日の臨時株主総会で株主からのジャッジを受けることになります。
議決権行使助言会社のInstitutional Shareholder Services Inc.「ISS 社」は、クレア側の会社提案に賛成推奨を出しました。要するに、会社側の提案に株主は賛成をした方が望ましいという判断を示したのです。一方、株主側に対しては手厳しい評価を下しているのが実情です。
- 登場人物が怪しい
株主側の中心人物となっているのが岡本武之氏ですが、その後ろに控えている存在がいるのではないかと指摘されています。その人物こそ、前澤周平氏です。ファッション通販サイト「ZOZO」の創業者であり、Twitterを連日賑わせる前澤友作氏の弟にあたります。ゼアー株式会社の代表を務めていますが、その実態は謎が多いのが特徴です。
2020年2月には、ネット掲示板において、岡本氏の後ろに前澤周平氏がいるという情報が書き込まれ、いずれクレアの社長になるのではないかという希望的観測が生まれたほどです。経営陣を一掃して、前澤周平氏を担ぎあげたい株主側と、中小企業ホールディングスなどの事業計画をまともに出さず、イメージの域を出ない提案など絶対に阻止したい会社側のバトルは、11月20日の臨時株主総会でひとまずの決着がつけられそうです。