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直売所の利点「なみえ焼そば」

東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故で居住者が激減した福島県浪江町で8月、道の駅なみえが開業した。地元産品をそろえる「ショーケース」は、離散した町民の交流拠点としても期待される。関西出身の女性駅長は「懐かしさと新しさに同時に触れられる場にしたい」と奮闘している。
 1日の営業初日。原発事故後の一時期、人影が消えた町に、開店待ちの行列ができた。地元の野菜や花、海産物が並ぶ直売所や食堂に客があふれ、入場が制限される盛況ぶり。町商工会青年部はB級グルメ「なみえ焼きそば」をふるまい、歓迎ムードを盛り上げた。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響も懸念されたが、2日以降も1日3千~5千人が来店。まずは順調に滑り出した。「コロナがなければもっと客は多かったかも。スタッフの人手が足りない」。滋賀県出身の駅長、東山晴菜さん(35)はコロナ感染防止に神経をとがらせつつ、店舗運営の改善に奔走する。
 町は6年がかりで道の駅開業にこぎ着けた。計画づくりには町民も加わり、4カ所の候補地を選定。役場の担当者は地権者と交渉を重ね、最も利便性の高い国道6号と同114号が交わる現在の場所で立地が決まった。
 「生産者と消費者の交流の場になれば」。農家の佐々木久雄さん(70)は地元の出荷先誕生を喜ぶ。震災前は建設関係の仕事に携わり、2016年からタマネギ栽培に汗を流す。ゆくゆくは仲間と生産組合を立ち上げるつもりだ。
 道の駅の役割は物販にとどまらない。震災当時の町民約2万1千人は原発事故で国内外に離散。17年3月末の一部地域での避難指示解除を経た今も、居住者は約1400人にとどまる。吉田数博町長は「駅は懐かしい人に会える場所になる」と期待する。
 21年1月には酒蔵と伝統工芸品「大堀相馬焼」の作陶体験・販売所も完成する。避難先の山形県長井市で醸造を続ける鈴木酒造店は駅の敷地内で井戸水をくみ上げ、町内での酒造りを再開する。鈴木大介社長(47)は「山形は第2、今回は第3の創業だ」と力を込める。
 町は現在、新旧の風景が混在する過渡期にある。道の駅周辺では7月にビジネスホテルが開業し、道路整備も進む。町再興への期待が膨らむ半面、避難先で暮らす町民からは故郷の変貌に戸惑う声も上がる。
 「変わりゆく町並みに喪失感を抱き、受け入れられない町民は少なくないはずだ。それに対して何ができるか。私に出された宿題だ」。駅長の東山さんはこう話し、続けた。「浪江に関わるすべての人たちにとって、居心地のいい道の駅にしたい」
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