底無しの沼

投財堂さん
投財堂さん

逃げ切れるのか?

追っ手の売鬼を何体か切り倒しながら、漸く都を脱出した。
周りを見ると誰もいない。
とうとう一人きりになってしまった。それにしても・・俺は思った。

何で今回の売鬼はこれほど手強いのであろう。
答えは簡単に出た。今までのように、都に出る売鬼だけなら何とかなる。
しかし今回は事情が違った。都の売鬼に混じって、今まで見たこともないような
青い目の売鬼がウジャウジャいたのである。
これでは到底勝てない。しかも見方の武将はどんどん減って・・・

ふと、前方を見た。
おお!あれは。
我が配下の武将達ではないか。逃げ延びる事が出来たのか

しかし何か様子が変だ。

「おお!殿。無事でござったか。」
俺に気付いた一人が声をかけてくる。あれは・・曹達だ。
俺は彼らの方に近づいた。

「お主等、こんなトコで何をしておる?」

「やあ、これはこれは、殿でしたか。お元気そうで」
と言ったのは、投財堂四天王の一人石原の産。

よく見ると、彼らは沼を囲んでいた。汚い沼だ。
石原が服を脱ぎだした。そして沼へ入ろうとする。
「お、お主、何をするか!」

「殿、いい湯ですぞ。」
だらしなく間延びした顔、焦点の定まらぬ目。
沼の中を見ると、すでに一人入っていた。旭の爺だ。

石原に続いて、曹達 三井の松島らが沼の中に入っていく。
「いい湯じゃ、いい湯じゃ・・・。」
と言いながら、ぶくぶく沈んでいく旭の爺。

「ええい!止めい!止めい。お主等、死ぬ気か。ここは底無しの沼じゃ」

ブクブクブクブク・・・・・

首から下を沈ませた曹達が言った。
「殿、これでいいのです。老いぼれの我々がいるから勝てないのです。」

ブクブクブクブク・・・・・
石原は上向きで、何とか口だけを出していた。そして
「殿、いつかまた会うときもありましょうや。どうか、お達者で」

ブクブクブクブク・・・・・
「さらばですじゃ」

「おお~~~~!」
沈んでいく、沈んでいく、沈んで・・。

全員が俺のために死んだ。

暫しの放心状態の後、俺は誓った。
こいつらの死を無駄にする事は出来ない。

よし、待ってろよ、都の売鬼め。
青い目の売鬼共々、皆殺しにしてくれるわ。

充分な戦力を整えて、必ず戻ってくる。それが弔い合戦というもの。

こうして俺は全国行脚の旅に出た。

【第1部 完】


この物語を、我が身を犠牲にして主君に忠誠を誓った
石原産業 日本曹達 旭化成 三井松島の4名に捧げる



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