二階堂ドットコムで紹介されていて、書店で買った。
つい先ほど読み終わったところ。
★「新宿鮫Ⅺ 暗約領域」
大沢在昌著 光文社 2019.11.30.初版第1刷
日本の公安警察が北朝鮮との取引のため手がけていた密輸案件をきっかけにした奇怪な殺人事件を介して、中国、北朝鮮、東南アジアを股にかけるブローカー陸永昌と、鮫島との駆け引きがメインになっている。
ハードカバーで790ページという大著、かつ話が入り組んでおり登場人物も多いため、余分な表現を削りに削った北方謙三方式で文章が綴られていく。それでもぐいぐい読者を引き込んでしまうのは、現在の政治・経済状況や反社勢力の置かれた現状などが、リアルに織り込まれているからだろうか。
特に北朝鮮工作員を巧みに描いているところに、オイラは惹かれた。
要所要所の登場人物を、別段くわしく説明している風でもないのに、気がつくとそれら登場人物に魅了されてしまう自分に、読者は気がつくだろう。
古本屋の主人を装って日本の公安警察と北朝鮮工作員とのパイプ役を演じている黒井、捜査の合間に出会ってやがて鮫島と手を結ぶことになる大物極道な浜川という人物に、オイラは特に惹かれた。
最初は鮫島と反目しあうのだが、気がつくと次第に鮫島と気脈が通じあい、不思議な友情のようなものが芽生えてくる。敵味方関係なくそうした人間関係を築きあげてしまう鮫島という男は、希有なヒト垂らしといえよう。
ということはつまり、そういうことを描けてしまう大沢在昌という人物が、希有なヒト垂らしなのに違いない。八年ぶりの「新宿鮫」だということだが、そんなに焦らさんと、早めの続編を期待する。