久しぶりの投稿なので月足を中心に大きなトレンドを見て行きたい。
まず注目すべきなのはアメリカの10年物の国債の動きだ。言うまでもなく長期金利は、政府などが人為的に動かしにくいもので長期的な景気動向を示すものとして使われる。
この10年物国債の月足一目均衡表は、転換線の下、基準線の下、雲の下、遅行線は雲の下、ローソク足の下。ボリンジャーバンドも、下に大きく広がって-2σの外側。MACDはマイナを下降。つまり長期で見て、明確に下降トレンドを形成している 。 2019年初頭に、2016年以来の下値抵抗線を大きく割り込んで、下降しており、月足の下値のめどがたたないで2016年の底である 1.36%を叩きに行く勢いである。これから見る限り、アメリカの、そして世界の景気拡大は 終焉を迎えつつあると言わなければならない。ついでながら CRB 商品指数も10年物国債ほど劇的ではないがやはり雲の下、基準線転換線の下でマイナスシグマの下、ボリンジャーバンドは広がりつつある。10年物国債のチャートの後を追いかける形になるのではないかと思われる。
このアメリカの10年物国債の動きに比較的ストレートに反応しているのがドル円の相場のように思われる。 ドル円 月足一目均衡表は転換線の下、基準線の下、雲の下、遅行線は転換線の下、基準線の下、雲の中、ローソク足の下。ボリンジャーバンドは、下に向かっており、-2σの近辺。MACDはややマイナス、DMIはマイナスが優勢でADXは拡大。2016年のそこからの三角持ち合いをきれいに下抜けている。ドル円は、20183月に付けた 104.58をすでに一旦割り込んでおり このまま下降の局面が続けば 2016年の下値である101円から98円の辺りを叩きに来る可能性がある。
日経平均もこうしたドル円の動きに引っ張られて、下降局面に入りつつあるように思われる。日経平均の月足一目均衡表はドル円と違って雲の上ではあるが、転換線の下、基準線の下になっており、遅行線はまだ転換線の上、基準線の上、雲の上、ローソク足の上ではあるものの、ボリンジャーバンドは横ばいで-σの内側だが、下向きで、狭まりつつあり、パラボリックは下降、MACDはプラス圏だが下降、DMIはマイナスが優勢でADXは拡大。トレンドラインは2016年からの三角持ち合いが煮詰まりつつある状況にある。この三角持ち合いが下に離れればドル円の後を追うことになろう。
ニューヨークダウの月足はまだ雲の上基準線の上、 FT、DAX の月足はまだ雲の上基準線を切ったところにあり上海だけが雲の下基準線の下で日経平均と同じように下降局面となっている。日本と中国の市場が世界経済の景気に最も敏感に反応すると考えられるので、世界景気の悪化がまずは日本中国の市場に顕在化しているといえるのではなかろうか。
トランプの関税を使った貿易戦争は、結局のところ、アメリカの製造業の生産性の向上がない限り中国に関税をかけても別の国から製品を調達するにすぎないため、アメリカの貿易赤字の縮小には繋がらないであろう。アメリカの貿易赤字を縮小するためにはやはり為替をドル安にするしか政策的な手段はないだろうから、選挙で劣勢が伝えられるトランプとしてはこれからドル安誘導に向かってくる可能性が高い。従って貿易戦争はやがて為替引き下げの競争へと変わってゆくのではなかろうか。だがこうした貿易戦争はとどのつまり世界経済の縮小をもたらし、経済の不況をさらに深刻なものにしていく可能性が高い。もちろん不況がはっきりしてくれば FRB をはじめ各国の中央銀行は再び金利を0からマイナスに誘導ししインデックス投信などを買って量的緩和にまた乗り出すだろうがそれは結局野放図に信用を膨張させて正常な経済の循環を歪めていくことにつながるだろうし前ほどの効果がそもそもあるかどうか疑問なしとしない。
大局的に世界史的に見ればアメリカの製造業を中心とした繁栄はすでに終わりを告げ金融やインターネットなどのセクターを中心にした繁栄も終焉を迎えつつありアメリカが自由貿易の中心から内向きの保護貿易へと転換を始めたことが今の世界情勢の基礎になっている。財政出動や減税や金融政策は何も言わばカンフル剤のようなものでありこうした実態経済の大きな変遷を変えることは難しいのではなかろうか。