■ 日銀の黒田東彦総裁は8日、トランプ米大統領がメキシコ製品への制裁関税発動を無期限で停止すると表明したことについて「米、メキシコのみならず、世界経済のためにも良かった」と、歓迎する意向を示した。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に先立ち、福岡市で記者団に語った。
世界経済の現状については「昨年後半以来、減速してきたが安定しつつある」と語った。先行きに関し「今年下期に回復するシナリオ自体は変わっていない」との認識も併せて示した。
ただ、米中貿易摩擦を念頭に「依然として貿易関係など不確実性が残っている」と述べ、G20会合で「世界経済の現状とその対応、何かあったときどのような対応ができるのかが、議論のひとつになる」との見通しを示した。(ロイターより抜粋)
■10日には日米通商交渉の実務者会合がワシントンで始まり(11日まで)、12日からは安倍首相がイランを訪問(14日まで)。英国では辞任するメイ首相の跡を継ぐ候補者受け付けの締め切り日(10日)を迎えるほか、日本では衆参ダブル選挙の憶測が一段と活発化しそうだ。
こうしたイベントをめぐる展開によっては、高まった利下げ期待や、一服した貿易摩擦への懸念が逆流する場合もある。また、米国の利下げは本来であれば円高の要因にもなるため、為替相場の変動も警戒したい。日経平均の想定レンジは1万9900~2万1200円とやや広めにとる。(SBI証券より抜粋)
■≪市場関係者の見方≫
●大和総研経済調査部の小林俊介エコノミスト
「雇用統計の受け止められ方にもよるが、基本的に米国の利下げ期待の継続が株式相場を下支えそう。米中貿易摩擦は、米国で第4弾の追加関税計画に関する公聴会を前にエアポケット(空白期間)に入り、悪材料となるニュースフローが少なくなることから居心地の良い状態になる。米国によるメキシコ関税も交渉は継続されるので最悪の事態は避けられるとの見方が広がりそう。ただ、日米協議ではメキシコ式の段階的な自動車関税を交渉カードに使う可能性があり警戒される。中国では輸出入の弱さから工業生産と小売り指標が市場予想を下振れるリスクが高く、注意が必要だ」
●アセットマネジメントOne運用本部調査グループの中野貴比呂ストラテジスト
「様々な下方向へのリスクを抱えながらも、横ばい圏で推移しそうだ。決定的な相場材料に乏しいとあって、来週も最大の材料は米利下げに関してマーケットがどのように織り込んでいくかに尽きる。6月はドットチャートを変更し、7月以降に利下げを行う可能性がある。中国の指標では貿易問題がどの程度影響しているかが注目点で、生産や投資が悪化すれば株価に素直にマイナス、良くとも貿易問題が解決していない中では大きく反応しないだろう。米国がメキシコに対する関税を上げれば株価にマイナスで、延期しても大きく上がることはないとみている」
(ブルームバーグより抜粋)
■≪市場関係者の見方≫
●リズ・ヤング氏(BNYメロン・インベストメント・マネジメント) FRBによる利下げは7月はないとみている。9月の利下げもまだ確実ではない。米雇用統計は弱かったが、一時的な要因の可能性もある。過度に懸念すべきではない。利下げを正当化するにはより多くの弱いデータが必要だ。
市場は利下げを先走って織り込んでいる。もしFRBから利下げ期待に反するような発言がでれば市場はネガティブに反応するだろう。さらなる上昇の前に調整する可能性はある。(ニューヨーク=関根沙羅)
●唐鎌大輔氏(みずほ銀行) 今週のドル円相場は1ドル=108~109円程度で推移するだろう。トランプ米大統領がメキシコへの追加関税を見送ったことで投資家のリスク回避の姿勢がいったん弱まる。
ただ5月の米雇用統計の不振は深刻だ。経済の状態が良くないとなれば米利下げ観測が強まり、ドル安・円高の傾向は続く。
FRBが6月中旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを示唆すれば、6月中に1ドル=106円台まで円高が進んでもおかしくない。米中貿易摩擦など波乱要因は多く、年末にかけて1ドル=100円に近づく展開がありうる。
●居林通氏(UBS) 日本株の買い意欲が強くなりそうだ。市場はFRBが年内に2~3回利下げに踏み切るとの確信を深めた。欧州を含めた世界の中央銀行は再び金融緩和へカジを切っている。米国のメキシコへの関税発動見送りも投資家心理を改善させた。
足元の日本株には割安感が強い。日本の企業業績は2019年10~12月期に前年同期比で増益となると予想している。着実な業績成長が株高につながるだろう。年末までの日経平均株価は2万4000~2万円で推移するとみている。6月下旬の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)も注目している。米中が何らかの歩み寄りをすれば株高の大きな材料となる。
●内田稔氏(三菱UFJ銀行)今週のドル円相場は円安基調に戻るだろう。米雇用統計が予想を下回り、FRBの利下げ期待が強まった。これを好感した株が上昇し、投資家がリスク志向を強める「リスクオン」相場となる。米国のメキシコ関税の発動が見送りとなったことも低リスク通貨である円の売り要因だ。
ただ目先は1ドル=109円台半ばまでの円安にとどまる。最大のリスクは米中貿易摩擦が長引き、世界経済の成長率が3%を割れることだ。米景気の減速を受けたFRBの年内利下げの確率は高い。円相場は年末に向けて1ドル=105円まで円高が進むだろう
(日経電子版より抜粋)