22日の日経平均は12090.59円(169.73円高)。一時300円を超す大幅上昇をみせていたのに、次第に伸び悩んだ。日足では転換線11915を抜いたが、基準線12285にまでは届かず長い上髭をつけて下落。週足ではまだ転換線12385にはまったく届いていない。月足も雲の下限12583ははるか上である。というわけで窓を開けて上昇した割には、上値が重たい。あいかわらずNYをみたいという自律性のない動きだが、アメリカの対策に半信半疑ということで、休日をはさんで買いあがる元気はとてもないようだ。長い上髭が市場の警戒感を表している。
一方22日のNYダウは、期待に反して、75兆円規模のアメリカ政府の金融安定策の発表にもかかわらず、372.75ドル(3.27%)安の1万1015.69ドルと大幅反落。日足では、雲の下限11445につっかけたが、結局反転して、基準線11124、転換線11018を下に割り込んで、転換線近辺で止まった形である。19日の上昇分をはきだして、18日の終値まで戻ってしまった。上げたり下げたりと荒っぽい動きで、マーケットの政府への深刻な不信を表している。週足月足はもちろん基準線転換線の下で、下げ基調で自律反発にもなっていない。週足月足の基準線、転換線は下向きであり、中期長期の基調転換には、まだ相当な距離がある。チャートからは、楽観は全くできない。戦後最大の金融危機といわれながら、高値から2割程度の調整にとどまっていて、まださがるという恐怖心が市場にあるのかもしれない。
為替は、今度はドル売りに動いている。現時点で105円前半。週足は雲の中で、週足転換線は107.14、基準線は104.75で、まだ基準線の上で、ドル安への基調転換とは言えないが、8月のドル高からのトレンドラインで頭を抑えられており、下方向を試す動きではある。いったん基準線から9月19日の週の安値103.62を試し、さらに月足転換線103.21が走っており、もしここを下抜けるとドル安基調にかわる可能性がある。G7は協調を打ち出しているが、困難な状況の中でドル防衛に成功できるかどうか、予断を許さないというところか。なお原油が突然急騰しており、日足基準線106をいきなり越して来た。まだ週足転換線109にとどいていないので、中期的なトレンドは転換しているとはいえないと思うが、目先消費には打撃であり、背景が気になるところだ。
最大の問題は、結局アメリカ政府の支援策が実効性のあるものかどうか、疑問をぬぐいきれないとことだろう。まずは救済策の中身について、議会がもたついている。時間がかかるようだったり、当初期待されていたよりも政府が及び腰だということが分かれば、不安がのこっているだけに、売り材料になる可能性がある。
うまくまとまったとしても、長期的には問題がいくつもある。第一に損失が現時点で表面化しているレベルでとどまるかどうか。一説には住宅市場のバブルを始末するには、少なくとも300兆円以上必要だという声もある。さらに金融機関の破綻がぼろぼろでてきて、処理の費用が膨れ上がりアウト・オブ・コントロールになる危険はぬぐいきれない。第二に、巨額の処理費用がアメリカの財政赤字におよぼす影響である。アメリカの財政赤字がさらに悪化した場合、アメリカの国債を誰が買うのか、ということになり、ドルの信認の崩壊につながる危険がある。ドルが崩落することになれば、急激な円高とあいまって、日本には深刻な影響を及ぼすことになる。第三に、こうした金融不安の処理が当面なんとかおさまったとしても、景気実態に及ぼす影響は、これから本格的にでてくる可能性がある。株の急落がもつ逆資産効果による個人消費の冷え込み、金融収縮と先行き不安からの設備投資の落ち込みなどが景気を下押しして、世界不況の様相に陥る危険である。
つまり救済策がきちんと迅速にまとまるかどうかが目先の焦点だが、長期的には、その規模が金融不安を沈静化するのに十分かどうか、処理費用がアメリカ国債や為替に動揺をもたらすかどうか、そして金融の動揺が世界景気実態にどう影響するか、いずれの面でも、これから一つ一つ時間をかけて越えてゆかねばならない関門が多い。市場が警戒を続けているもの無理からぬことろだろう。アメリカ当局がこうした不安をうまく取り除けるかどうか。ポールソンとバーナンキの舵取りがまずければ、金融恐慌へ転がり落ちてしまうあやさがまだただよっているようだ。