これからは建て替えではなく再生する時代-。渋谷区神宮前の建築設計事務所「再生建築研究所」は、行政の「検査済証」がなかったり建築基準法に違反したりしている建築物を、適法化するなどして日本各地で生まれ変わらせている。本来なら取り壊されてしまう建物も、補強などで活用できるものが多い。同研究所は「モノを残す仕組みづくりをしたい」と奮闘を続ける。
◆「残すのは大変」
東京メトロ・表参道駅から徒歩3分。アパレルショップやカフェなどが立ち並ぶ一角に、開放的な雰囲気が漂う「ミナガワビレッジ」がある。喫茶店のほかオフィス、賃貸住宅などを備えた複合施設で、再生建築研究所が東急電鉄と共同で改修事業を手がけた。
元々は昭和32年に建てられた住宅。増改築を重ねるなどして使われていたが、相続による住人不在と老朽化が進んだことにより、再生することになった。
オーナーからは「建て替えずに活用したい」と要望があったが、他業者が新築するしかないとした中で、再生の道が選ばれたのだという。同研究所の神本豊秋(とよあき)代表(37)は「壊すのは簡単だが、残すのは大変。残せるなら残したいという依頼主が多い」と話す。
ビレッジは、一つの敷地に4棟の建物があるなど建築基準法の「一建物一敷地の原則」に違反していたため、それを是正。断熱や耐震改修も実施した。同研究所も入居して運営を担い、昨年、ビレッジは再スタートを切った。
「日本の文化にしたい」
同研究所の取り組みが一般的なリノベーション(大規模改修)と異なるのは、違法建築を適法化するなどして生まれ変わらせている点にある。建物は完成した際に、自治体などから建築に関する法律や条例に適していることを証明する「検査済証」の交付を受けなければならない。ただ、昭和50年代ごろの建築の多くは検査済証の交付を受けておらず、交付率が20%にとどまる時期もあったという。
こうした建物は建て替えなどをきっかけに、行政の“お墨付き”がないことや違法性が発覚し、その後は放置されるか、取り壊されているのが実情だ。
同研究所はそんな建物の検査済証を再取得したり合法の建物に変えたりしている。ミナガワビレッジでは60年ぶりに検査済証を取得。都内だけでなく全国での実例もある。
神本氏は「世界の建築の平均寿命は100年以上だが、日本は木造でも鉄骨でも一緒に約30年とされている。使えるものを壊している状態だ」と指摘する。
再生よりも建て替えがまだ一般的だが、「モノを壊すのではなく、再生させる仕組み作りを定着させ、再生を日本の文化にしたい」と神本氏。今後、再生手法も広がりを見せそうだ。(久保まりな)
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1件のコメントがあります
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私が建設を学んだ頃に、この様な改修工事が
あれば、消防法を遵守出来てリフォーム工事など
可能なのだなと思いました。時代は進んでいます。