おはようございます
来週の日経は下げそうですね。
対中追加関税に加えて日本産自動車への高関税。
自動車立国、迫る危機、米、日本に貿易黒字の削減要求、下旬にもFFR、不調なら高関税に現実味。
2018/09/16
日本経済新聞 朝刊
3ページ
日米両政府は9月下旬に閣僚級の貿易協議(FFR)を開く方向で調整に入った。自動車への追加関税をちらつかせて対日貿易赤字の削減を迫る米国に対し、日本は輸入拡大策などを示し理解を求める方針だが、11月に中間選挙を控えるトランプ大統領を説得できるか不透明感も漂う。車に高関税が発動されれば日本経済への打撃は避けられず、日本側は警戒感を強めている。
「日本にいくら払うべきかを言えば(安倍晋三首相との良好な)関係はすぐ終わるだろう」。6日、トランプ氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのコラムニストに自ら電話をかけ、対日貿易赤字の削減を強く迫るとまくしたてた。
日本はFFRでの議論を経て、直後の日米首脳会談でトランプ氏とのトップ交渉に持ち込む段取りを探る。日本政府は複数のシナリオを検討するが、トランプ氏が日本との「ディール(取引)」に何を求めるのか、真意を測りかねている。
ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が主張するのが、農産品の関税引き下げに向けた2国間交渉の開始だ。首相は国会答弁などで「農家との約束がある。農業分野でこれ以上の譲歩はない」と述べ、環太平洋経済連携協定(TPP)の合意内容を上回る市場開放は受け入れないとしてきた。逆に言えば、TPPの水準までは関税引き下げを受け入れる余地は残しているともいえる。
例えば牛肉の場合、米産品への関税率は38・5%。TPPで合意している9%まで下げれば、オーストラリアやカナダに比べて米国の農家が不利になる事態は避けられると交渉で主張できる。
トランプ氏はTPPより2国間交渉の方が有利な条件を引き出せると主張してきた経緯があり、「TPP並み」で満足する保証はない。日本政府には液化天然ガス(LNG)や防衛装備品など米国からの調達増、自動車メーカーの現地生産拡大計画をパッケージで提示する案も浮上している。
経済産業省によると、日本企業が結んでいる米国のLNG調達契約は2019年以降に1000万トンと、17年の10倍近くに急拡大する。仮に日本に全量を輸入すれば、単純計算で輸入金額は5千億円近く拡大する。
米政府と直接契約して取得する有償軍事援助(FMS)の契約額も19年度予算の概算要求で約6900億円と、18年度予算から約2800億円も積み増した。最新鋭ステルス戦闘機「F35A」の追加取得などで調達額の拡大は続く見通しだ。
だがLNGと防衛装備品を合わせても輸入拡大額は年間1兆円前後と、約7兆円に上る対日貿易赤字の解消には遠い。「首脳会談で一定の方向性を出せなければ、日本から米国に輸出する自動車・部品に25%の高関税が課される事態が現実味を帯びる」と日本政府関係者は焦りを募らせる。
17年に日本は米国に約170万台を輸出し、完成車と部品を合わせた輸出額は約5兆3000億円。日本の対米輸出総額の4割弱を占める。メキシコやカナダなど日本国外での生産分を合わせた対米輸出台数は合計で約330万台。米国が国内生産で補いきれない台数の約半分を日本車の輸出が埋めている計算だ。
米国が自動車への高関税で国内市場の「扉」を閉ざしたとき、日本への影響が「最も厳しい」と国際通貨基金(IMF)は指摘する。日系6社への高関税による影響額は最大2兆円超と、営業利益の約6割に上る見通しだ。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは日本で自動車の生産台数が10%減ると国内総生産(GDP)が4兆3千億円押し下げられ、雇用も約4万人減ると試算する。
トランプ政権は自動車関税で交渉相手国から譲歩を勝ち取る作戦に自信を深めている。北米自由貿易協定(NAFTA)見直しでは、メキシコに自動車・部品の輸出数量規制や通貨安誘導を阻止する「為替条項」を受け入れさせた。ライトハイザー氏は対日交渉でも強硬姿勢を見せる公算が大きく、日本政府は強く警戒している。
(貿易問題取材班)