瓜生 憲さんのブログ

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こんな時こそ冷静な銘柄選び

日本列島は記録的に気温が上昇したというのに、株式市場は更に凍りつき、日経平均は年初来安値を下回りました。

昨日の日記にも書いた通り、「株価は常に正しい方向に向かっている」が持論ではあるので、現在の日経平均の妥当性についてのコメントは避けようと思いますが、こういった時こそ、妥当株価の算出方法というか、割安銘柄の探し方について考えたいと思います。

市況環境の急変時に、株価はオーバーリアクションするのが近代株式市場における常識とすると、それが今なのか、今後なのかの見方はさておき、どこかのタイミングで過度に割安感が出てくる銘柄が生じる可能性が高いと考えます。

大規模なポートフォリオ運用が実質困難な個人投資家にとっては、こういう市況変化の時こそ、稀に見る投資機会と考えることもできるのではないでしょうか?

割安かどうかの判断においてバリュエーションを用いますが、一般的に利用されているバリュエーションとして、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、PSR(株価売上高倍率)があります。これら3つの指標の基本的な捕らえ方としては、純利益を算出根拠とするPERを基本に、市況が強ければ強いほど、売上高を基準とするPSRを利用する人が増え、弱気になれば、なるほど純資産を基準とするPBRの重要性が増します。

市況が強いというのは、一般的に最終需要(必ずしも国内とは限らない)が拡大している局面が多く、そのトレンドに乗るだけの一般的な提供商品・サービスに対する市場ニーズがあるかというトップライン(売上高)と、トップラインの上昇による体力強化を前提とした、その後の利益追求型経営への移行余力に鑑み、PSRの倍率に意味合いが生じます。

一方、市況が弱くなれば、当然、最悪の解散価値という本来の「株式」の意味合いに鑑み、PBRが底値を支えるとの見方がなされます。しかし、本来であれば、PBRだけを見ていても、FCF(Free Cash Flow)がマイナスなら、B(Book value)自体が低下をするので、PBRが底値の絶対指標とはなりません。

個人投資家が急増し始めた頃の2000年~2005年においては、ITバブル崩壊後に最終需要が滞る中で、設備投資が縮小し、企業は販管費の削減を目的としたリストラを慣行。その過程で得たキャッシュについては、近視眼的な発想の高まりと同時に、配当に対する株主要求が高まりました。結果、当時は配当利回りが底値の指標の大事な一翼を担った関係から、配当を払わないIT系企業は大きくアンダーぱフォームしたという歴史があります。

しかし、現在の株価水準においては、いくらサブプライムの影響で市場に減速感が出たからといって、配当利回りやPBRで盛り上がれるほど低水準には至っていません。

そして現在は、市場全体として低リスク商品への移行が進んでいるという前提を置いた場合、投資家が好む銘柄(株価が反発しやすい銘柄)は短期的にキャッシュを生み出す銘柄もしくは短期的にキャッシュを失わない銘柄となってきます。

そういった観点で銘柄選択をすれば、見なければいけないのはPL(損益計算書)ではなく、バランスシート(貸借対照表)です。

株式投資の基本である有利子負債のウエイトを確認した上で、ここ数年間の流動資産と固定資産のウエイト変動パターンを確認し、同時に企業戦略を見て、その変動パターンに今後著しい変化が生じる可能性がないかを判断します。

その際には、市況が凹んだ後、戻り基調の中でファイナンスを実施する企業も多いので、その観点においてもバランスシートから、企業のお腹の減り具合(必要な運転資金+設備投資需要と手持ち現金のバランス)を確認することは、この時期において必須のことです。

ここまでが、料理で言う「下ごしらえ」みたいなものですね。

これら「下ごしらえ」の過程で、ある程度の企業を絞り込んだ上で、できれば、Discount Cash Flow(ターミナルバリューは0%)、EV/EBITDA倍率、EV/FCFといったキャッシュフローを活用したバリュエーション手法を用いて相対的に割安感が出ている銘柄を抽出します。初心者は比較的簡単なEV/EBITDA倍率を用いてください。

※EV/EBITDA倍率=(時価総額+純負債)÷(税引き前利益+減価償却費+固定資産除却費)
※純負債=有利子負債-(現預金+有価証券)

その際に、できればROIC-WACC(投下資本利益率から加重平均資本コストを差し引いた実利益率)のスプレッドを用いて、上記のバリュエーション指標の妥当性を確認することができれば、尚、良いかと思います。

ここからは完全な好みですが、実際に何を買うかの際に何気に重要なのは利益の絶対額(もしくは固定費比率)・・・個人的にはここでPLが重要になってきます。ガツンと行きたければ、利益の絶対額が小さい、もしくは固定比率の高い企業が良いでしょうし、こんな市況でそんなに強気には・・・と思われる方は逆に利益額が大きく、固定比率の低いところが安全でしょう。市況回復時には、高β銘柄がオーバーリアクションしますからね。

どちらにしても、テクニカルな要因で身動きを取るのが躊躇われる時期には、こういった手法でゆっくりと銘柄選びをしながら、夏を過ごすというのはどうでしょうか?

そうそう、『みんなの株式』で皆と相談することも忘れずに(笑)
30件のコメントがあります(21〜30件)
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    タジーさん
    2007/8/23 20:58
    瓜生様
    履歴以外は、売り買いともに評価はマイナスのタジーですが、いつもなぜか親切にご回答頂いていて大変感謝してます!

    「未来は頑張ればいくらでも変わる」ですが、、
    私は薩長土肥(鹿児島・山口・高知・長崎)の生まれではないですよ!
    どちらかと言えば賊軍だった群馬県(でも戦後は首相を3人出してます)育ちです!

    )色々とご心配いただき、ありがとうございます。「未来は頑張ればいくらでも変わる」というのは、そうあって欲しいという意味合いも込めて同感です。

    あと、もしかしたらロードオブリングとかスターWARSの方が好きかもしれないのですが、ガンダムとZガンダムと逆襲のシャア程度はレンタルビデオで見ておいた方がよいかもしれません。あと、古典としては宇宙戦艦ヤマトもお薦めです!
    レベルは日本のアニメのレベルは世界最強であることもあり、ハリウッドに劣らないと思います。

    株育成計画2さん
    いよいよ、ガンダムワールドからメジャーデビューですかね!
    でも、ここは真剣道場ですので、達人に切られても知りませんよ(笑)。
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    育成計画さん
    2007/8/23 21:11
    瓜生社長、
    お忙しいところありがとうございました!
    流動資産の減少については特に注意を払って見てみます。
    有利子負債が大きい会社についても、
    利上げが業績の重しになりそうですので、
    中期で投資する場合には考慮いたします!
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    瓜生 憲さん
    2007/8/24 15:37
    タジーさん
    「ロード・オブ・ザ・リング」はDVDを持っていながらも、まだ観てないです。ただ、「STARWARS」も、「ガンダム」も、「Zガンダム」も、「逆襲のシャア」も実は全てDVDを保有しています。以前日記にも書いたとおり、何気にDVDコレクターです。

    株育成計画2さん
    引き続き、何かありましたら、コメントしてくださいね!
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    びりっちさん
    2007/8/24 18:59
    瓜生社長さま
    質問に丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。

    回答をいただいてまた疑問がわいてきてしまったのですが、社長のご厚意に甘えさせていただいて、またまた質問してしまいます・・・。

    >私が述べた「有利子負債のウエイト」というのは、営業キャッシュフローとのバランスを含めた考え方でした
    とのことでしたが、これは、営業キャッシュフローと有利子負債を比較してみなさい(比率をみる?)ということでしょうか?

    ものすごい初歩的な質問ですみません。キャッシュフローの見方が今ひとつわかっていないもので・・・(そもそもファンダメンタル指標にまだ慣れなくて、四苦八苦中です)。

    ご鞭撻よろしくお願いいたします。
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    瓜生 憲さん
    2007/8/24 20:48
    びりっちさん
    多分、難しい指標の話をするより、僕はもっと自分に置き換えて考えたほうが簡単な気がします。

    具体的には、現預金残高と有価証券が、口座に入っていて(流動資産)、欲しいもの(固定資産、設備投資ニーズ)がある。ローンや分割払い(有利子負債の増加)なら買えるけど・・・と思った時に、日々の給料額(営業キャッシュフロー)や持ち物(固定資産に計上されている設備や有価証券等のうち売却可能なもの)の売却で得られる資金と照らし合わせるはずです。返済期間が長引く額であれば、今後の自分の出世による給料の増加(将来成長率)を加味し始めるはずです。

    基本的なバリュエーション手法はこういった考え方の延長線上にしかないという感覚です。つまり、各BS項目とのバランスと投資活動のサイクルと照らし合わせながら、キャッシュフローの妥当性を判断していく必要があると思います。

    あとは、どのバリュエーション手法を使うか・・・EV/FCFが良いか、EV/EBITDAか、DCFか、それともEVAか、ROIC-WACCか、これは好みの問題だと思います。

    的外れの回答であったら、ごめんなさい。
    再度、コメントください!
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    びりっちさん
    2007/8/24 21:36
    瓜生社長
    早速のご回答ありがとうございます!

    つまり、日々の収入(営業キャッシュフロー)に対し、ローン(有利子負債)がどのくらいあるのか、自分の収入に見合った借金に収まっているのかみなさい、ということなのですね。すごい納得です(目から鱗です)。

    では、営業キャッシュフローが「給料」だとすると、投資キャッシュフローは「投資による儲け」でよいですか?それでは財務キャッシュフローは?
    (ああ、どちて坊やになってしまっている・・・)
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    瓜生 憲さん
    2007/8/24 21:58
    先程の例で言うと、一般的に投資キャッシュフローは買い物時の支払(設備投資)とあと持っているものの売却(有形・無形固定資産の売却)が該当します。財務キャッシュフローはお金を借りたり(有利子負債の増加)、返したり(有利子負債の減少)が該当します。ちなみに株を発行したりした時の入金や利益が出た時の配当金も財務キャッシュフローです。
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    hiro☆shiさん
    2007/8/24 23:15
    今回はバリュエーションの話ですね。

    なかなか高度な話題なのにコメントがたくさんあってビツクリです。

    という私もバリュエーションにもとづく投資を行っています。(いえ、正確には行おうと鋭意努力中です
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    びりっちさん
    2007/8/26 23:59
    瓜生社長
    素人な質問にわかりやすい回答をありがとうございました!
    投資キャッシュフローは固定資産系、財務キャッシュフローは借金系をみるときに使えるということですね。
    すごい勉強になりました。これからもよろしくお願いいたします。
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    瓜生 憲さん
    2007/8/27 12:08
    hiro★shiさん
    バリュエーションは奥が深くて、その手法の裏には、様々な投資家心理があり、勉強していくと面白いと思うので、ぜひ続けてみて欲しいです。

    びりっちさん
    これからも分からないことがあれば、日記等でコメントしてくださいね!
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