身近にいる料理人へ投げかけて、いろいろ訊いてみた。
★カレーにトマトは必要なのか?
A1:「カレーにトマトって嫌いだから、トマト使ってない」
(味の十八番・中華)
この店では中華なのに実際にカレーライスを提供している。水野仁輔の分類でいうと、インド風でも欧州風でもないオリジナル風。トマトがないせいかコクがあって、
しかも、なにやら癖になる風味があり中毒性がある。この中毒性のあるカレーにハマっている顧客をよく見かける。中華で使うダシのきいた特性スープでコクを出しているという。少量のケチャップは使っていると教えてくれた。トマトの酸味がコクを打ち消す作用があるという見解について、同感だと語った。
A2:「トマトを使っていてもトマト臭さがなく、コクのあるカレーは存在する」
(漁り火・和食)
京都のツルヤという料亭で修行してきた店主は、研究のため食べ歩きしてきた経験を語ってくれた。ただし、トマトは強いので、かなり煮込まないと酸味が飛ばないだろうと。また逆に、トマト好きだったら、コクが消えるとしても、この風味をあえて残すのが普通だろうと。トマトの存在下で、なおかつコクも出すとなると、相当な工夫がこれでもかと必要になるだろうと。ハウス食品の「ザ・ホテル・カレー」にガラムマサラを入れると、トマトの作用を打ち消してコクが爆発するというオイラの話に、それはオモロイと反応してくれた。
★トマトなど含めて酸味のある食材と、砂糖など甘み調味料との関係について
A3:「ハウスのバーモンドカレーって、凄いと思わない?」
(味の十八番・中華)
あの味をいくらトライしても再現できないという。リンゴと蜂蜜、酸味と甘みの関係が、このカレールーには潜んでいる。妙に考えさせられる発言。
A4:「それは大いに関係あるね。因みに砂糖はガツンと、みりんにはフンワリと
した風味があって使い分けている。酒の肴には、砂糖の方がイイ」
(漁り火・和食)
この時に、味覚の検出限界の話をふった。それこそホントウの隠し味、けれど同じ和食だったら、ほとんど見抜けるという。その根拠は、たとえば砂糖そのものの味はしなくても、生じているコクの強さで経験的に判断できるという。例外があるとしたら、世界中にあるだろう自分には未知のなにかが使われた場合。これは見抜けないという。
また、落合務シェフのプロデュースした「予約でいっぱいの店のポモドーロ」について、そのソースのコクがトマトの酸味とカラメルで成立しているという説に、強く同意した。ソースの色あいも良くなるし、少し硬めのソースになるはずだという。その通りだ。
★陳建一の麻婆豆腐について
A5:「あの人には、ちょっと凄くって敵わない」(味の十八番・中華)
どこかの会場でプロ向けの研修会があり参加したところ、陳建一の麻婆豆腐を食したことがあるという。家庭用に公開されているレシピとは全く異なる麻婆豆腐で、ふぐ毒のように口がしびれる麻婆豆腐だったという。これにハマる人はハマってしまうのだが、そこで公開されていた調味料を入手しようと試みた。しかし、仲介業者からそれは不可能だといわれたという。陳建一は、中国本土に対して特殊な人脈を有しており、そこに辿りつくことさえできないのだから、陳建一には敵わないという。闇社会みたいだ。
因みに、この味の十八番・中華が提供している麻婆豆腐、すっごくうっまい。
こんなにコクのある麻婆豆腐ってあるんだっていう味。店主によれば、十八年通ってくれている顧客は、いっつも麻婆豆腐しか注文してこないという。なんという、ドハマりぶりか。このどエライ中毒性は、麻薬なみなんじゃなかろうか・・・・・・。
A6:「すっげーぞ、陳建一の麻婆豆腐は」(漁り火・和食)
やはりふぐ毒のように、口がしびれる麻婆豆腐だったという。味の十八番・中華と、
どーも同じ研修会に行ったみたいだ。