米国では9月のFOMC以降、年内追加利上げ観測が上昇したことを受け
ドル円相場は一時113円台に突入しました。
その結果、市場からは年内115円~という声も聞かれる様になりましたが
実際は予想に反して円高に振れています。
ただ短期筋によるCME円建て玉状況は下図の通り円ショートが増加していますし
実需筋(輸出企業や個人など)が円を買う理由も見当たらないため
むしろ対ドル円安になりそうですが実際は逆の結果になっています。
普通に考えるとFRBによる年内追加利上げ観測が70%に上昇し
10月からポートフォリオの縮小を開始することも決まっているため
市場が対ドル円安を予想するのは当然ですが一向に円安が進む気配はありません。
無論地政学的リスクに伴う円高の可能性はありますが
そうであれば円は買い戻される筈ですから円ショートの増加は矛盾しています。
そこで初歩的な話になりますが「対ドル円高」になるパターンを整理してみます。
<対ドル円高になるパターン>
①円=横ばい & ドル=売り
②円=買い & ドル=横ばいor売り
③円=買い > ドル=買い
④円=売り < ドル=売り
つまり円が売られているのに円安にならない理由は④のケースしかありません。
では追加利上げ観測が高まり、FRBが資産の縮小開始を決定したにも関わらず
何故ドルが売られるのかという単純な疑問が湧いて来ます。
<ドルが売られ続ける理由>
①トランプ政権が誕生した際、その公約からインフレ期待が高まり
投機筋がドルを買い捲ったが、その後政策実行が進まず反動の売りが続いた
つまり金融政策とは別次元でドルが売られている
②地政学的リスクがドル売りに拍車をかけている
<対ドル円安になりにくい理由>
①円も売られているが、同様またはそれ以上にドルが売られ
相対的にユーロが買われるパターンが続いている
②欧州の長期国債金利は、今秋にECBが量的緩和の縮小を開始すると予想し
6月後半から急上昇したが現在はピーク時に比べおよそ3割下落している
一方米国の長期国債金利も6月以降欧州の金利動向に類似した動きを見せ
こちらも10月に入り下落傾向にある
つまり米国の長期金利が上昇に転じたのはインフレ期待からではなく
欧州の長期金利に連動しているだけと考えられる
③日銀による年間80兆円という国債買い入れの枠組みが崩れ昨年末から漸減
今年6月以降は60兆円台に縮小している(事実上引き締め方向)
④北朝鮮を巡る地政学的リスクの鎮静化にメドが立たないため
再び円が買い戻されるのではないかという懸念が残る
個人的には年末までにドル円相場115円またはそれ以上を予想していましたが
円が売られても円高に振れているという現実に加え
米国の年内利上げ観測やFRBの資産縮小開始を
市場は既に織り込んでいる筈ですから
ドル円115円は近い様で案外遠いのではないかと感じる様になりました。
因みに日経平均株価は円高傾向をものともせず連日高値を更新していますが
米国の株高が止まれば一気に崩れる事態も想定して置くべきだと考えます。
つい先日予想した日経平均年内25000円をもう覆すのかとお叱りを受けそうですが
円高傾向にある現状を改めて見直すと、少々予想が甘かったかも知れません。
但し年内にトランプ政権の経済対策が急ピッチに進む
国内では衆院選で与党が圧勝し、景気対策に期待が持てる
10月の四半期決算で日米の企業業績が順調に伸びる
米朝の緊張状態が年内に改善される
この様な好条件が幾つか重なれば、まだ可能性は充分残されていると思います。