倒産情報 7月報

トロンボーンさん
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■件数
ポイント 集計対象変更の2005年4月以降で最多
倒産件数は1131件(前月1065件、前年同月915件)で、前月比は6.2%の増加、前年同月比も23.6%の増加で、2008年3月(1127件)を上回り、法的整理のみに集計対象を変更した2005年4月以降で最多。倒産件数は下記グラフからも分かるように、増加基調を強めている。
要因・背景 建設、不動産業界で起きた連鎖倒産の影響広がる
1.価格高騰による販売不振、業界全体の信用収縮から、マンション分譲業者の倒産が続発
2.公共工事削減、原料高に加え、不動産業者の大型倒産散発で建設業の倒産が過去最多
3.原料高関連の倒産が60件発生、前月(54件)を上回り2ヵ月連続で過去最多を更新
■負債総額
ポイント 4ヵ月連続の前年同月比増加、今年2番目の高水準
負債総額は6402億3200万円(前月4719億2000万円、前年同月3062億9700万円)で、4ヵ月連続で前年同月を上回り、4月(7254億4100万円)に次いで今年2番目の高水準となった。このうち、負債10億円以上の倒産は73件(前月74件、前年同月56件)で高水準が続いた。
要因・背景 建設、不動産業界で大型倒産続発、上場企業倒産も急増
1.マンション販売の低迷や銀行の融資引き締めを契機に、建設・不動産業界で大型倒産続発
2.上場企業倒産が5件に急増、6年3ヵ月ぶりの高水準
3.貸金業法改正による環境悪化で、(株)オークスが沖縄県過去最大の負債486億円を抱え倒産
■業種別
ポイント 建設業が過去最多、不動産業が今年2番目の高水準
業種別に見ると、全業種で前年同月比増加となった。なかでも、建設業(324件、前年同月比+20.4%)と不動産業(43件、同+79.2%)の増加ぶりが際立ち、建設業は2007年10月の309件を上回り過去最多、不動産業は前月の46件に次いで今年2番目の高水準となった。このほか、小売業(198件、同+22.2%)、サービス業(192件、同+6.1%)の増加も目立った。
要因・背景 不動産業界の急激な環境悪化、原料高の影響さらに広がる
1.建設業…構造不況、原料高に加え、不動産業者への焦げ付き散発が資金繰りを直撃
2.不動産業…販売不振による在庫過多、業界全体の信用収縮で大型倒産続発
3.小売業、サービス業…景気後退、相次ぐ値上げラッシュで消費者の買い控え広がる
■主因別
ポイント 「不況型倒産」の構成比78.6%、8割に迫る高水準続く
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は889件(前月850件、前年同月704件)で、前月比は4.6%(39件)、前年同月比も26.3%(185件)の増加。構成比は78.6%(前月79.8%、前年同月76.9%)となり、過去最高の前月を下回ったものの、8割に迫る高水準が続いた。
要因・背景 景気後退、原料高、資金調達環境の悪化が影響
1.景気後退局面入りの見方が強まるなか、本業の収益悪化響く
2.原料高の一段の進行が各産業に深刻な影響、原料高関連倒産は60件で過去最多
3.不動産業を中心に融資先の選別を強める銀行の動きに伴い、企業の資金調達環境が悪化


倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■上場企業倒産
7月は、上場企業倒産が5件に急増した(上場廃止の1件含む、前月1件、前年同月0件)。単月で5件以上の上場企業が倒産したのは、(株)ニコニコ堂(熊本県)や第一家庭電器(株)(東京都)が倒産した2002年4月(6件)以来、6年3ヵ月ぶり。
東証1部上場の(株)ゼファー(東京都)、東証・大証1部上場の真柄建設(株)(石川県)のほか、三平建設(株)(東京都)、キョーエイ産業(株)(広島県)のジャスダック上場2社が、マンション市場低迷のあおりを受けて相次いで倒産した。
この結果、2008年の上場企業倒産は上場廃止の1件を含め、すでに11件に達しており、4年ぶりに2ケタの発生となった。個別事例を見ると、1.巨額粉飾や法令違反行為の発覚、2.不動産業界の急激な環境悪化、などをきっかけに短期間で倒産に至るケースが目立った。
■大型倒産
7月の負債額トップは、新興の中堅マンションデベロッパー、(株)ゼファー(東京都、民事再生法)の949億4800万円。同社の負債額は今年3番目であるが、上位2社はともにバブル処理型の案件であり、実体のある倒産としては事実上の負債額トップとなった。このほか、沖縄県過去最大の倒産となった、クレジットカード会社の(株)オークス(負債486億円、民事再生法)、北陸地区トップクラスの上場ゼネコン、真柄建設(株)(同348億円、石川県、民事再生法)がこれに続き、負債100億円以上の倒産が11件(前月4件、前年同月3件)に増加した。
2008年の大型倒産(上位20社)の顔ぶれを見ると、不動産業者、とくにマンション分譲業者の倒産が目立った。7月も(株)ゼファーのほか、マツヤハウジング(株)(負債267億8400万円、東京都、民事再生法)、ダイドー住販(株)(同248億円、大阪府、民事再生法)など、昨年8月のサブプライム問題発生後の過度の信用収縮と販売不振から、資金繰りに行き詰まるケースが連鎖的に発生した。

■7月の景気DIは31.2、前月比1.5ポイント減で5ヵ月連続の悪化

2008年7月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.5ポイント減の31.2となり、5ヵ月連続で悪化した。DIの悪化幅は拡大が続いており、2003年6月(30.8)以来5年1ヵ月ぶりの低水準となった。

■物価上昇と生活防衛意識の高まりで、企業の収益環境が悪化

NY原油先物相場(WTI、期近)が7月11日に一時1バレル=147ドルを突破し、年初から約5割上昇した。企業はこれまで仕入れ価格上昇分の吸収に努めてきたものの、経営努力の限界を超え、ガソリンや光熱費、食料品などで値上げが相次いだ。
一方、諸物価の上昇や雇用・年金問題など先行き不透明感の拡大による生活防衛意識の高まりによって、消費者側からの価格下押し圧力は根強く、企業側では値上げ交渉が困難な状況が続いた。さらに、生活必需品以外の需要が極端に落ち込むなど、収益環境は悪化傾向となっており、企業活動の停滞感は一段と強まった。


■「製造」「不動産」が低水準となり、都市圏を中心に全10地域で悪化
米住宅公社2社の経営不安が表面化し、サブプライム問題が依然として広がりをみせるなか、外需の減速によってこれまで景気回復をけん引してきた「製造」が5年1ヵ月ぶりの低水準となった。また、投資資金の引き上げや住宅市況の悪化が顕著な「不動産」は5年4ヵ月ぶりの水準に落ち込み、地域別では都市圏を中心に全地域で悪化した。


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