☠チベットの死者の書を讀む第14日目
そこは中世インドの遊郭。
髪は漆黒。美麗な顔。豊満なる乳房。蜜蜂のやふにくびれた體(カラダ)。若く美しひ遊女が、はなやいだ享楽の宴席をフト離れて、納戸へと行ってみると勝手口に、ひとりの托鉢僧がゐる。
よく見ると、暗がりのなかに若い秀でた顔が見ゑる。
遊女は、遊び心を起こした。「お坊様、中へお入りになりませんこと」。すると、夜が牙を、むいた。
すざまじい稲妻が、夜のしじまを裂いた。
『女よ、いまはまだ、その時ではなひ』おそろしひ声が、夜空に鳴り響いた。
やがて月日は、ながれ、その町には、疫病が流行った。
そして、その遊女は、疫病に罹り、町はずれの道端に捨てられた。
☠死ぬのを待ってゐたころ、ひとりのお坊様が甲斐甲斐しく、その女の介護をする。
歳は、とってはゐるが、まちがいなく、むかしの若い僧侶だ。
春風が、野をわたって、そよいでくる。
すると、またあの声が聞こゑる。
『女よ。再会の時が来た』。
出所;ラビンドラナート・タゴール詩集
う~ん、いまごろ道端に捨てられる御老人や病人は、いなひ。
ただし、施設や病院に捨てられたも同然の御老人多し。
ウラギリですぞ。いやさ、捨てる子もカルマ悪し。
あぁ、吾は、母の介護、ホスピス、死。そして転生(ポワ)を見守らん。
さて、死者の書リーディングは、第三バルドー(転生のバルドー)にて、少し足踏み。大體(だひたひ)死後21日目ぐらひのところ。
つづく。
第14日目 おはり