ほんま そうかいさんのブログ
平成相場三昧伝 そうかい日曜随筆
そうかい日曜随筆;霊界タクシードライバー(お客様は幽霊)。
「呼び覚まされる霊性の震災学」(東北学院大學金菱ゼミナール篇)。
「死者たちが通う街ータクシードライバーの幽霊現象」工藤優花。
この論文は、大学三回生の優花さんが、宮城県石巻・気仙沼で、1年間調査・取材して、書かれた論文。タクシードライバーの方々の、東日本大震災で亡くなった死者との対話。
普通、心霊現象には、あまり証拠がでなひ。
ところが、「タクシーは、乗客を乗せた時点で、表示を〝空車”から〝実車”に、〝割増”に切り替えて、メーターが切られるし、走行距離の遠近にかかわらず燃料は減るし、GPSが備えられたり、無線で連絡を取り合うため、タクシードライバーの場合、はっきりとした証拠が残る。」工藤優花。
南浜までと行く先を告げられて、あぁ、お客さん、あそこは更地ですよと応えると、「私は死んだのですか」震ゑる声がする。バックミラーで後ろをのぞくと女性の姿は、消ゑてゐる。
深夜、そんな目に会えば、いくらなんでも、そりゃ怖ひ。ただその運転手さんも、震災で娘さんを亡くしてゐる。
やっぱり幽霊とは、自分の死を認知できなひ、もしくは受け入れられなひ死者なのだらふか。
マスクをした青年が行く先も告げず、前を指さす。「彼女は、元気だろうか」と切り出すので、あれ、知り合いだっけと「どこかでお会いしたこと、ありましたっけ」と聞き返すと、「彼女・・・・・・」。姿が消えてゐる。そのかわり、シートのうゑには、リボンの附いた小さな箱が置かれている。彼女へのプレゼント。・・・・なんと言ふか、心霊現象に於ける『物証』?
この運転手さんは、震災で母を亡くしてゐる。このプレゼントは、いまだ車に積んでゐるらしひ。
また、その青年を乗せて、プレゼントを返し、彼女の元へ連れてってやるのが夢ださふだ。
深夜順行中、小学生ぐらひの女の子が、手を挙げる。なにぶん深夜なので、不審に思って、
「お嬢さん、お父さんやお母さんは?」と尋ねると、「ひとりぼっちなの」との返答。
女の子の言ふ家の近くまで送ってやると、運転手さんに手を取ってもらって、タクシーを降りると、
「おじちゃん、ありがとう」と言って、突然、消ゑるやふに。すぅ~つと姿を消した。
すなわち会話のみならず、幽霊とのスキンシップあり。
いまとなっては、その運転手さんは、『その女の子は、おとうさんと、おかあさんに会いに来たんだらふなぁ』と思ってるらしひ。「わたしだけの秘密だよ」。
おじちゃん運転手さんは、悲しげに、それでいて嬉しそうに、優花さんに打ち明けるのだった。
やっぱ、東北の人は、「優しひ」わ。
これが合衆国で、ミシシッピ川氾濫なんどが發生すれば、すかさず人種差別が救助に際して起こるわ、暴行や略奪なんども起こる。
またタクシードライバーへの調査で、優花さんは「幽霊なんて、蔑(さげす)むようなこと言うな!」と幾度も、怒鳴られたりしたらしひ。本邦では、「死ねばホトケ」といふもんね。
ただまぁ、世間的表現としては、幽霊だと思いますけど。お客様は、幽霊。
それでも、この体験をしたタクシードライバーのみなさまは、このお客様に「畏敬の念」を抱いてゐるらしひ。また彼らが、手を挙げたなら、よろこんで乗せるさふだ。
工藤さんは、執筆当時二十歳かな、二十一歳かな。素晴らしひ論文だ。
「死を学ぶべし。さすれば、汝は生きることを得ん。」チベットの死者の書。
霜月 ひのゑうま日 ほんまそうかい記