ユリウスさんのブログ

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ものごとの価値判断  -数字の判断はいかがなものか?-

 
 本好きの翔年はよく本屋さんに顔を出す。すると熱心な店員から「今売れ筋の本は〇〇と△△です」といきなり勧められることがある。 

 興味がある本を探しに来た客にたいして、店員は、販売データから、上位の二つを単に売りつけているだけ。「あっちへ行け!」と追い払いたくなる。(笑)


 本の価値は販売数でもないし、本の価格でもない。本の購買者はその本に求めている情報が記載されているかどうかに関心があるだけなのだから。


 家電量販店でも似たようなもの。冷蔵庫売り場に行こうが、空調機器売り場に行こうが、Fax売り場に行こうが、店員はまず販売でーたから、売れ筋商品を薦める。
 本来、商品の購入目的(使用目的、家族構成、設置場所、予算)などを訪ねてから商品を進めるのが理にかなっているのに…。

 客は用途に合った機器の利便性、性能、価格等の情報を求めている。 客の最終判断は色、形までも含めた総合判断なのだから。


 保険勧誘や不動産の売買勧誘などでも、数字を前面に押し出しただけの理にあわない変なのが多いいのではないか?



 ものごとの価値判断を数字だけで安易に判断してはならない。数字の奥に潜む真の目的やその効用をキチンと評価する智慧が求められている。
 
 


 選挙期間中、アメリカのトランプ候補は、物事の価値を分かりやすく、お金や数字で大衆に向かって話をすることが多かった。

 例えばわが国の根幹にかかわる国防に関しては、
 「海外に駐留する米軍の費用の負担を、(守ってもらっている)韓国や日本がもっと増やさなければ軍隊を米国に引き上げる」と公言した。

 これは安全保障という国家間の約束事を当事国における軍隊駐留費用のみで議論しようとしている。全駐留費用の何%を我が国や韓国が負担するかと、負担率の問題に単純化した馬鹿げた論である。

 これに対して日本の評論家が「韓国は30%程度だけど我が国は70%も負担している」と負担率の比較で反論している。数字が事実だとしても、これはトランプ氏の罠には自らはまり込んでいる。

 実際、我が国は憲法上の制約があるため、自衛隊は他国への直接的攻撃力は持たない。日米安全保障条約による米軍の沖縄駐留と米国の「核の傘」がなければ、わが国は非常に危険な状態下に置かれることになる。負担を増やせという主張は一面では正しい。日本が米国と傭兵契約しているのなら、100%要求されても仕方がない。核の傘代金も払わう必要があるだろう。

 しかし、日米安全保障条約はそんな単純なものではない。米軍の沖縄駐留で、アメリカが大きなメリットをえていることを忘れてもらっては困る。恐らく米軍のプレゼンスが東アジアで0になれば、現在の軍事バランスは大きく崩れ、軍事的にますます強大化するどこかの大国がいずれ支配するようになるのは間違いない。そうすればアメリカでさえ、東アジアにおいて、海上や上空の自由航行の権利もいずれ失う羽目になるであろう。

 もし、トランプ次期大統領が言うように、我が国や韓国が軍事的に完全な独立国として核兵器を保持したとしよう。そうなればこの二国の核兵器の脅威がアメリカ軍に影響を及ぼすということにも思いを致すべきだ。ハッキリ言えば、アメリカは中国、ソ連、北朝鮮の他に、日本と韓国の核攻撃にも反撃できるように軍事設備や軍隊を余計に持たなければならなくなるということである。その時にトランプの米国は沖縄駐留費用の方が安上がりだったと気付くであろう。 
 
 アメリカにとってもっと重大なことは、アメリカの核の傘の下で、アメリカの意向に唯々諾々と、もしくはしぶしぶ従っていた日本や韓国が堂々と真の独立国として、自国の権利や要求を主張し始めるかも知れないことである。加えて日米同盟は単に二国間の安全保障政策にとどまらず、東アジアにおけるアメリカのプレゼンスを保証しているのを忘れてもらっては困る。

 将来、わが国も韓国も近隣の軍事大国の圧力に屈し、アメリカと価値観を共有している自由陣営から脱落している事態もかなりの確率でありうると見ておかなければならない。

 軍事政策とは単に二国間の関係にとどまらず、周辺国を含めた地域の問題であり、関係国が同盟を結ぶ事によってそれぞれ得ているメリット(価値)を、十分考慮しなければいけない。駐留費の負担率はその中の一つの判断要素にすぎない。



 好漢トランプ氏に、この言葉を送りたい。

最高の才能は事物の価値をよく知るところにある。
       -ラ・ロシュフーコー-






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