あるリケジョ大学生から、中村文則の『教団X』を薦められました。人間のこころの闇を余すところなく描いて秀逸でした。567ページもある長編ですが、一気に読ませる力がありました。
読了後、「主な参考文献」というリストがついていることに気が付きました。加えて「あとがき」もありました。普通、小説には「参考文献」も「あとがき」もなにもありません。作品のみで勝負という訳です。(笑)
でも作者がこのような「参考文献リスト」をつけ、「あとがき」もつけた意味が、翔年は少し分かるような気持になりました。
広くて深い知的レベルの読者が、この小説をシッカリ読んで、読後感を作者に送ったら喜ばれるのではないでしょうか???
内容的にストーリーはバラさない方がいい、へたな読後感も書かない方がいいと思いました。そしたら読者にこの小説をどう伝えたらいいかと考えたとき、作者の「あとがき」と「主な参考文献」をつけておくのがベターだろうと思いつきました。
作者の次作を期待して待ちたいと思います。
この小説を薦めてくれたRさん、ありがとう!
あとがき
この小説は、僕の15冊目の本になる。
文芸誌「すばる」で約二年半にわたり連載していた。単行本化にあたり加筆し、完成したものになる。
世界とにんげんを全体からとらえようとしながら、個々の人間の心理の奥の奥まで書こうとする小説。
こういう小説を書くことが、ずっと目標の一つだった。これは現時点での、僕の全てです。
作家になって12年が過ぎた。みなさんにもそれぞれの12年がある。これからも読者とともに、歳を重ねていけたらと思う。
共に生きましょう。
2014年10月20日 中村文則
主な参考文献(※非常に多いので、小説の内容が理解しやすいと思うものを適当にピックアップしました)
「ヴェーダの思想」 中村元、春秋社、1989年
「ブッダのことば --- スッタニパータ」 中村元訳、岩波書店、1984年
「禅マインド ビギナーズ・マインド」 鈴木俊隆、サンガ、2012年
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「脳はなぜ『こころ』を作ったのか」 前野隆司、筑摩書房、2010年
「<意識>とは何だろうか」 下條信輔、講談社、1999年
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「宇宙が始まる前には何があったのか?」 ローレンス・クラウス、青木薫訳、文芸春秋、2013年
「新装版 不確定性原理 都築卓司、講談社、2002年
「量子力学の哲学」 森田邦久、講談社、2011年
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「戦争をしらない人のための靖国問題」 上坂冬子、文芸春秋、2006年
「東京裁判」 日暮吉延、岩波書店、2008年
「従軍慰安婦」 吉見義明、岩波書店、1995年
「俘虜記」 大岡昇平、新潮社、1967年
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「援助じゃアフリカは発展しない」 ダンビサ・モヨ 小浜祐久監訳、東洋経済新報社、2010年
「世界の半分が飢えるのはなぜ?」 ジャン・ジグレール、たかおまゆみ訳、合同出版、2003年
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