今年は原油価格の低迷が続き、オイルマネーが随分引き揚げられたという情報もありますが
実際の売買手法やオイルマネーが好む銘柄の株価推移など
幾つかの視点から、その行方を探ってみたいと思います。
ところでオイルマネーは、主に中東の産油国が行っている政府系ファンドによる資産運用で
株式に限らず、不動産投資や各種商品投資、債券投資など運用領域が広いのが特徴です。
また彼等の売買手法は長期・分散投資中心ですが
世界的に株価が暴落した時などは、短期の逆張り投資も行っている様です。
さらに運用を委託する金融機関も分散しており
日本株の売買は、主に英系企業(バークレイズやIG証券など)を経由していると言われています。
次に中東のオイルマネーが好む日本株は、ファンダが良好で需給の良い銘柄が多く(特に大型株)
株式の分散投資だけでもかなり広範囲に亘るため、銘柄を特定するのは非常に困難の様です。
但し中には大株主の上位に名を連ねるケースもあり
昨年末時点で、サウジアラビア通貨庁の保有比率が1%以上の銘柄は明らかになっています。
*サウジアラビア通貨庁(運用資金80兆円)が大株主に名を連ねていた銘柄
下段は日足チャート(保有比率)[昨年末終値①➡今日の終値②] 騰落率②÷①
①5481 山陽特殊製鋼(2.4%) [404➡567] △40.35%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=5481
②1824 前田建設工業(2.4%) [1018➡740] ▲27.31%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=1824
③2371 カカクコム (2.3%) [1741➡2303] △32.28%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=2371
④6330 東洋エンジニアリング(2.3%)[444➡320] ▲27.93%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=6330
⑤9065 山九 (2.2%) [492➡576] △17.07%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=9065
⑥7242 KYB (2.1%) [522➡381] ▲27.01%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=7242
⑦7453 良品計画 (1.9%) [14880➡24520] △64.78%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=7453
⑧7261 マツダ (1.2%) [2927➡2431] ▲16.95%
http://kabutan.jp/stock/chart?code=7261
(その他の銘柄)
6841 横河電機
http://kabutan.jp/stock/chart?code=6841
8729 ソニーFH
http://kabutan.jp/stock/chart?code=8729
8267 イオン
http://kabutan.jp/stock/chart?code=8267
以上が昨年末時点で主要株主上位に名を連ねていた銘柄ですが(今年1月の日経新聞より)
資金を引き揚げたかどうかは定かではありません。(株価推移はチャートでご確認下さい)
ただ、今年8月に始まった世界的な株価暴落時に、オイルマネー逃避の報道があったことから
10月以降も株価の戻りが弱い銘柄や、年間の下落率が大きい銘柄は
彼等の資金が引き揚げられた可能性があると思います。
因みに、産油国政府が国家予算の収支均衡を図るために必要な原油価格は
最も低いクウェートでも1バレル49ドルと言われていますので
原油価格が40ドル以下の現状では、全ての産油国が財政赤字の増加を余儀なくされています。
しかし財政赤字を埋めるための投資も必要なので
株式投資に妙味さえあれば、再びオイルマネーが流入する可能性は充分あると思いますし
案外、既に戻りつつあるのかも知れません。
(ご参考)
<産油国政府が国家予算の収支均衡を図るために必要な原油価格>
(資料:IMF他、単位:USD/バレル)
リビア184ドル、アルジェリア113ドル、イラク109ドル、サウジアラビア106ドル
ノルウェー95ドル、ロシア90ドル、ベネズエラ80ドル、UAE73ドル、イラン72ドル
カタール56ドル、クウェート49ドル