産経新聞 9月30日(水)7時55分配信
バブル期に巨額の資金を使って株価操作を繰り返した大手仕手グループ元代表の70代男性が、インターネットのサイトに根拠のない情報を書き込んで保有株の価格を不正につり上げ、約60億円の売却益を得ていたことが29日、関係者への取材で分かった。証券取引等監視委員会は元代表について、金融商品取引法違反(風説の流布)の疑いで、東京地検特捜部に告発する方針を固めたもようだ。
仕手とは、証券市場で企業の業績などとは無関係に、相場を操作して利益を狙う行為。根拠のない情報を流す「風説の流布」や、グループ間で売りと買いを繰り返す「仮装売買」などの手法がある。元代表は昭和50年代から平成のバブル期にかけ、大きな仕手戦を演じ、「兜町の風雲児」と呼ばれた。関係者によると、元代表らのグループは平成23年以降、「般若の会」と名乗る団体が運営する株情報サイトのコラムに、元代表の実名で、当時大証1部に上場していた化学メーカーの株について、過去に元代表が行った仕手戦で株価が急騰した事例を示しながら「同じように大相場になる」などと、株価が上昇するかのような根拠のない書き込みをした疑いが持たれている。
同社株は仕手銘柄として投資家の注目を集め、最初の書き込みがあった翌日には株価がストップ高になるなど約1カ月間で2倍以上に上昇した。元代表らは事前に購入していた保有株を売り抜け、1億円超の売却益を得たとみられる。
元代表らは、ほかの複数銘柄についても、同様に株価が上昇するような書き込みを繰り返し、株価が上昇したところで保有株を売り抜けており、元代表らが得た売却益の総額は約60億円に上ったという。監視委は今年3月、元代表の関係先を強制調査し、押収資料を分析するなど実態解明を進めてきた。その結果、かつて大物仕手筋として知られた元代表が、自身の株式市場への影響力を背景に、株価をつり上げる目的で根拠のない情報をネットに流したと断定。特捜部への告発に向け、詰めの調査を進めている