「誰でも儲かる投資法」はあるのでしょうか。
株をやっておられる方なら、即座に「そんなのありえない!」といわれるでしょう。株式投資は、分からない明日の株価に資金を預け、預けた資金を取り合うゲームですから、儲かる人がいれば、損をする人は必ず出ます。
「誰でも儲かる投資法」は、このような論理的な矛盾を含んでいますから、ありえないのです。
「でも待ってくださいよ!」
「そんなこといったって、アベノミクス相場では、3年間に2倍になっているじゃないですか?」
「この間に買っている人はみな儲かっています」
「誰でも儲かる投資法は、絶対にありますよ!」
昨日(9月26日)の日経新聞によると「勘が働かない。歴戦のトレーダーも討ち死にが目立つ。あるネット証券社長からこんなため息が漏れる」とあります。以前とはだいぶ違った個人投資家の損得感情が伝わってきます。同じ記事には、「超短期が支配、方向感なく」と題して、松井証券の9月のデイトレード比率は、6割弱と8月に比べて大幅に上がっていると報じています。
「アベノミクス相場にもかかわらず、デイトレードで大損をして、儲けが吹っ飛んだ」とも解せます。
株式投資は、「いい株を、いい時に買って、いい時に売れば」儲かります。「誰でも儲かる投資法」は、銘柄選択と投資環境さえ間違えなければ、存在しないまでも近づくことはできるのです。
「いい株」とは、銘柄の選択であり、「いい時」とは、相場環境で相場の位置と方向を読むことです。
明日のことは誰にも分からないかもしれませんが、株価は絶えず変動し、波を作ることだけは間違いない現象です。波は毎日、毎週、毎月と繰り返され、短期波動、中期波動、長期波動となりますが、長期波動はだいたい4~5年で、安値から高値をつけ、また最低に移行するという周期変動を繰り返すことが知られています。
期間については、景気のサイクル、あるいは市場関係者の利害関係から、上昇波動はだいたい2~3年、下降波動は1~2年というのが、従来の考え方でした。最近では、政治の力で、景気の持続を図る努力もされますので、上昇期は長く、下落期は短くなる傾向も見て取れます。
アメリカでは、100年に一度といわれたリーマンショックの大底から這い上がるために、上昇期間が7年も続いていますが、そろそろ下降期に入ってもおかしくありません。日本では、20年も続いた停滞期から抜け出してまだ3年。これから先どれだけ続くか分かりませんが、世界に開放された市場で、世界的な株価下落の影響を受けないことは考えられません。
期間についてはそのときの経済、社会情勢で変わるとしても、波動現象は、市場経済が続くかぎり存在し続けます。投資の成果は、株価の波動を読んで「いい株を安値で買い、高値で売る」ことにありますから、これを何回繰り返すことができるかで、その人の生涯投資成果が決まります。
そこで疑問です。
「なら、毎日の波動を読んで株の売買を繰り返すほうが、長期波動よりチャンスが多いのでは?」
もっともな質問です。
この理論は、デイトレの根拠となって、短期取引に夢中になっている人たちの支えになっています。でも結果を見てください。短期投資で値幅取りをやっている人たちの多くが、1年間で投資を諦めているのです。アベノミクスの3年間で株価が倍になっているにもかかわらず、失敗をして株を辞めてしまった人がこんなにもたくさんいるのです。
ところが、証券会社を始めとする市場関係者にとっては、短期売買による売買高なくては、生きてはゆけないのです。ギャンブルである以上、儲けは胴元に吸い上げられてしまいます。おまけに最近は税金まで上がって、取引のコストは無視できません。
証券会社も取引所も、市場の活性化と称して個人の市場への参加を歓迎しています。それでいて、取引量の多いヘッジファンドに、取引形態や資金量で圧倒的に有利になっています。
超高速のコンピューターや、アルゴリズムと称する取引手法と、従来の勘やチャートに頼る個人と、同じ土俵で勝負しなくてはなりません。しかもファンド勢は海外で相場を作り、日本に持ち込んでいます。「モーニングサテライト」のコメンテーターをはじめ、新入社員のアナウンサーまで、前日のシカゴCMEの結果で、その日の日本市場の動向を口にします。
これだけ不平等な市場取引にもかかわらず、税法上でも法人のほうが、個人より有利になっています。これでは日本の富裕層が、株に資金を回さないのも理解できます。
個人がファンドに勝つには、彼らが超高速なら、超低速な取引形態で対抗するより方法はありません。ファンドマネジャーの任期はせいぜい1年。それに対して個人は一生です。少しでも早く株に手を染めれば、それだけ機会が増します。
株式投資は、売買益だけが儲けではありません。投資によって企業活動を支援し、経済を発展させ国を豊かにし、その果実として値上がり益や配当を受け取り、資産を増やしてゆくのが、株式投資本来の目的なのです。
日本経済の発展とともに伸びる企業の株を持ち、資産価値を引き上げ、企業からの配当金で安定した収入と、老後の豊かな生活を手に入れましょう。
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長いことご覧いただきありがとうございました。それにしても9日連続で、1ページの原稿を書くのがこんなに大変だとは思いませんでした。いつもなら連載をするときには、事前に原稿を用意するのですが、今回はぶっつけ本番の書下ろしで、書いては直しの連日でした。
特に25日の「BREAKING NEWS 波乗り投資家へ」は、当日の朝になって、このまま沈んだら、日本は「失われた20年に逆戻り」との思いから、急きょ「意見広告」のつもりで書き上げました。
連日、投稿されておられる方のご苦労もよく理解できました。これからは、日記をベースに「波乗り投資法・最新版」を出版するつもりでおります。そのため、しばらく日記をお休みいたします。またお目にかかるまで、お元気で。