「誰でも儲かる投資法」という本を書こうとしたら笑われました。株はゼロサムの要素がありますから、皆が儲かる投資法などあるわけないからです。
それでは、「多くの人が儲かる投資法」だったらどうでしょうか。可能性はかなりありそうです。
この話を、出版社の友人に話したら、「誰でも儲かる投資法」のほうが、売れるといいます。出版界では、良心より売れ行きのほうを優先するようです。
それでは、「誰でも儲かる投資法」は、本当にありえないのでしょうか。投資環境を読み間違えなければ、という条件を付ければ可能です。これは、私の40年の投資経験の中から生まれ、持ち続けているので、朝いったことが、夜に変わることはありません。
2012年暮れに安倍内閣が発足しました。発足当時の株価は、9,000円前後でしたから、その付近で株を買い現在まで持っていれば、倍になっています。銘柄の選定とかポートフォリオとか、難しいことをいわなくても、日経のETFを買って持ち続けていれば、倍になっているはずです。この間に、株を買っていれば、「誰でも儲かった」のです。
それでは、このような投資環境は誰が作るのでしょうか。私は政治が投資環境を作ると考えています。ただ、環境は政治が作るとしても、株価を決めるのは企業業績です。企業の価値が向上しなければ株価は上昇しません。
安倍内閣は、経済再生を掲げて発足したこともあり、ほかのどの内閣よりも株価を意識しています。内閣が続く限り、株価が上がり続けることを望んでいるのかもしれませんが、永遠に上がり続けることはありません。企業価値が向上しないと、株価は上がらないのです。
アベノミクス相場では、三本の矢で経済を立て直し、企業業績を向上させました。ただ、実際に株価を押し上げたのは円安で、円安によるEPSの向上で、株価は倍になったのです。企業業績の向上は、輸出増加、賃金上昇などにより、GDPの向上につながるのでしょうが、GDPよりEPSの向上のほうが株価を押し上げたのです。
民主党政権は、GDPを上げるために、農業や低所得者向けに所得の配分を増やしましたが、株価を押し上げることができませんでした。日本では個人所得がGDPの6割を超え、輸出依存度は、中国やドイツ、韓国より低いとはいえ、輸出依存型を脱しているとはいえません。円安による企業収益の向上は、アベノミクスの大きな支えとなっています。
このように、投資環境と企業業績とは、車の両輪の関係にありますが、円安はいつまでも続くわけがありません。今の円安は政策で作り出されているというよりも、海外投資による資金移動で円安になっている部分が強く、いずれはファンダメンタルによって動く相場になります。
そうなると、いくら環境を整備しても、企業業績の頭打ちとともに、株価の上昇は止まり、株は下落基調に入ってしまいます。この大きな流れは、市場経済の下では避けることができないので、いずれ株価も天井期から下降期に入るサイクルとなります。
アベノミクスでは、2年半。アメリカでは、リーマンショック以降、7年間にわたり上昇基調にあります。上昇率と期間を見る限り、日米とも相場が天井期にあるといえそうです。ただ天井期にあるといっても、天井を付けたというのではなく、このまま相場が続くことも十分考えられます。
株式投資をする場合には、この相場の位置と方向を知ることが最も大切です。相場の読みさえ間違えなければ、「誰でも儲かる」ことができるのです。