N駅道を訊かれて、間違って教えてしまった事ってないですか?ありますよね?ね、ね、あるでしょ?ありますとも、そんな事って何回も・・・(何回もないかも知れないけど)勘違いなんざ、あるでしょうよね・・そらあるでしょ。ワザとじゃないですモンね。不可抗力ですよ。そんな、誰にでもあるような・・ごくごく普通の日常がちょっとした事で、とても恐ろしい状況になってしまう・・・そんな話をしたいと思います。いやなに、誰でも経験した事あると思いますよ。それは・・・・・・道をね訊かれたんですよ昨日。・・・こんな感じで・・・女 「あのぅ・・・N駅へはどう行ったらいいんでしょうか?」俺「ああ、N駅なら・・・この道をまっすぐ行って、突き当りを左ですよ」女「どうも有り難うございました」・・・とまあ、ここまでは普通なんですよ。ところが・・・しばらくしてから気がついた。あっ!!間違えたかも知れん。女はN駅を訊いてきた。俺が教えたのは、私鉄のS駅ではないか。嗚呼、そうだそうだ。この道を真っ直ぐ行って左にあるのは私鉄のS駅だ。JRのN駅は・・・いかんいかん。方向が全く逆である。しかし、もう遅い。女の姿はすでになかった。まあいい。判らなければ、誰かに訊くだろう。そしてもう一度、この道を引き返してくるに違いない。運が悪い事に・・俺はそのS駅の方向に用があった。隠れよう。別に、悪い事をしたワケではないのになぜ隠れにゃならんのだ。俺はその時の情景を思い浮かべた。引き返してくる女と会う・・・そして俺は言うんだ。俺「いやぁ~、先ほどはスイマセンでした。N駅とS駅を間違えました」女「いえいえ、気にしてませんから・・今から本当のN駅に行って来ます」『本当の? 何だそら。当てつけか?』女は柔和な笑みを浮かべて言うが、その目は決して笑ってはいない。ジロリ・・と恐ろしい目で俺を睨みつける。私の貴重な時間を返してよ!・・とでも言いたげだ。それだけは避けなければならない。だから隠れるのだ。顔を合わせるのは絶対にマズイし、女も俺と会いたくはないだろう。女のためにも隠れなければならんのだ。この大通りは一本道だ。俺がここにいる以上、間違いなく戻って来た女とスレ違ってしまう。だから俺はちょっとした脇道に身を隠した。その脇道に身を潜め・・・息さえ殺しながら、女の戻りを待った。ここで女が通り過ぎるのを待つのだ。しばらく待っていたが、女はなかなか戻って来なかった。息を殺しているため、胸が苦しくなっている。ハアハア・・・ハアハア・・・マ、マズイ。呼吸が荒い。ん?ややや?脇道に身を潜め、まんじリともせず・・一つ場所に身を屈め荒い呼吸で女を待つ。この態勢・・・まるで、ストーカーではないか!?いかんいかん。このままでは他人に勘違いされる。そ、そうだ。この脇道を裏通りの方に抜けてしまおう。かなり遠回りになるが、仕方ない。裏通りは、N駅とは繋がってないからこの脇道を抜ければ女と会う心配もない。何でもっと早く気付かなかったのだ。俺の目の前を女が通り過ぎるのだけを待っていたからだ。「隠れる」という意識があったからこそ気付かなかった。俺はコソコソと、脇道を奥へ奥へと歩き出した。そして思った。これはもはや「隠れる」・・という行為ではない。完全に・・・「逃げる」・・・だ。ただ、道を訊かれただけなのに・・逃げる?俺が何をした!?何をしたって言うんだよぉぉぉぉ~~~雨の中・・・NとSを間違えてしまった、ただそれだけで俺は、自宅とは程遠い、脇道の奥へ奥へと歩いて行くのだった。後ろを振り返る。だ、大丈夫だ。女はいない。女がつけてくる様子はない。なぜ逃げる。なぜ、女から逃げているのだ。判らない。もう何にも判らなくなっていた。俺は走り出した。つまずいた。転ぶ。雨の中を泥だらけになりながら・・走り・・・転び・・・もの凄い勢いで走った。ハアハア!逃げろ!逃げないと捕まる。恐ろしくて後ろを振り向くことも出来ない。も、もうダメだ。もう走れない。完全に捕まる。捕まってしまう。薄れ行く意識の中で俺は思わず叫んだ。「た、助けてくれ~~~~!」・・・・・いかがです皆さん。こんな経験・・・もちろんありますよね?以上 誰にでもある日常の風景・・・でした。